独断的映画感想文:金の糸
日記:2025年1月某日
映画「金の糸」を見る.
2019年.ジョージア・フランス.監督・脚本:ラナ・ゴゴベリゼ.
出演:ナナ・ジョルジャゼ(エレネ),グランダ・ガブニア(ミランダ),ズラ・キプシゼ(アルチル).
ジョージアのトリビシの古い集合住宅に住むエレネは作家,今日は79歳の誕生日なのに誰もそれを覚えていない.同居する娘夫婦から,姑のミランダにアルツハイマーの症状が出てきたため,この家に引き取り一緒に暮らすと云ってくる.そんなところへ昔の恋人アルチルから,誕生日おめでとうの電話がかかってくる.今は車いす生活のアルチルからの電話に,心ときめくエレネ.
一方同居を始めたミランダは,ソ連時代は政府の高官だった.ともに食事をとりながら,上から目線で当時の政府の政策について話したり,客にエレナもそれなりに名の通った作家だったと話したりする.エレネは心穏やかではない….
ある日アルチルからかかった電話を盗み聞きしたミランダは,アルチルが昔自分に言い寄ったことがあったと話す.またエレネが若いころ発行した著作が発禁を喰らい長い間キャリアを棒に振ったことに対し,その発禁を指示したのは自分だったと話す.しかし一方でミランダが恒常的に障碍者のために寄付をしていることもエレネは知るのだった.しかしその頃ミランダは,重要会議に自分を出席させるために来るはずの公用車を探して,街をさまよっていた….
長い人生のあいだにはいろいろなことが起こる.この映画の物語は,特定の事件を取り上げその当事者が対決したり,決着をつけたり,和解したりするというものではない.それをするにはお互いにすでに年を取り過ぎている.残り少ない人生をよりマシにより美しく生きていくにはどうしたらよいのだろう.
「金の糸」とは日本の金継ぎ技術のことである.エレネは孫に金継ぎされた陶器の写真を見せながら,壊れたものを別の価値を持つものとして蘇らせる,日本の技術だと説明する.エレネが今住む集合住宅の住民たちとの交流や,元気なアルチルとダンスを踊る過去の映像を挟みながら,淡々と進む物語は見応えあり.カメラが映し出すショットは神経が行き届いた美しさ,音楽も素晴らしく一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点).
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