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2025年2月に作成された記事

2025/02/27

独断的映画感想文:愛を耕す人

日記:2025年2月某日
新宿ピカデリーで映画「愛を耕す人」を見る.1_20250228215301
2023年.監督:ニコライ・アーセル.音楽:ダン・ローマー.
出演:マッツ・ミケルセン(ルドヴィ・ケーレン),アマンダ・コリン(アン・バーバラ),シモン・ベンネビヤウ(フレデリック・デ・シンケル),メリーナ・ハーグベリ(アンマイ・ムス),クリスティン・クヤトゥ・ソープ(エレル),グスタフ・リンド(アントン),ヤコブ・ローマン(トラポー).2_20250228215301
18世紀の半ば,ルドヴィ・ケーレンはドイツ陸軍に25年勤め大尉で退任した.故郷のデンマークに戻り,ユトランド半島の未開の荒地を自己資金で開拓すると申し出る.成功報酬は爵位とそれにふさわしい領地・使用人だった.ユトランド半島荒地の開拓は国王の悲願であり,財務省はケーレンに国王決裁の許可を出す.4_20250228215301
ケーレンは荒地の各地で土壌の調査を行い,ここと決めた箇所に家を建て「王の家」と名付ける.牧師アントンの斡旋で逃亡小作人のヨハネス,アン・バーバラの夫妻を雇い,また森に住むタタール人の一族を雇って土壌の改良に努める.
一方,この地方の貴族で地方裁判所判事を兼ねるシンケルはケーレンを呼び出し,この地方の未開拓の荒地はすべて自分の領地なので,自分の小作人となる旨の契約書に署名するようケーレンに求める.ケーレンは荒地は国家すなわち国王の所有であり,自分は国王に仕える身だとして,シンケルの要求を一蹴する.これ以降シンケルのケーレンへの攻撃は激化し,逃亡小作人のヨハネスを逮捕して殺害,タタール人の雇用は違法としてタタール人を追放する.ケーレンはアン・バーバラとタタール人の孤児:アンマイ・ムスと共に開拓を続けるが,資金も尽き冬が目前に迫ってきた….5_20250228215301
ケーレンには切り札があった.ドイツから取り寄せたジャガイモである.ユトランド半島の荒地でもジャガイモは育つと,ケーレンは確信していた.越冬のさなか種芋を食べ病気のアンマイ・ムスを救おうと言うアン・バーバラを止め,ヤギを屠って種芋を確保したのはケーレンの見識である.ケーレンは開拓1年目の終わりに,国王にジャガイモ80袋を献上することができた.国王はケーレンを測量士に任命し,この地に入植者の派遣を認める.3_20250228215301
しかしシンケルは諦めず,犯罪者を雇って入植者を襲わせその子供や多数の家畜を殺害した.更に反撃したケーレンを殺人者として報告,ケーレンはシンケルに逮捕され処刑の危機に直面する….
ケーレンは貴族の使用人であった母親の私生児である.つまり貴族の庶子であるが,貴族自身は認知せずケーレンは軍隊に送られた.ケーレンは爵位を得る手段として開拓を申し出たのだが,思いがけない結果としてアン・バーバラとアンマイ・ムスとで獲得したジャガイモ畑の暮らしは,ケーレンに新しい人生の意義を与えたようだ.6_20250228215301
映画の後半,ケーレンは開拓の努力を認められ,爵位を得て新たな入植者受入れの許可も得る.しかしそのすべてをなげうってケーレンはある行動に出る.それは観客全ての共感を得るものだろう.自分はそのシーンに涙を禁じ得なかった.
007映画で活躍したマッツ・ミケルセンの寡黙な演技を始め,俳優陣の好演が素晴らしい.ケーレンの艱難辛苦と真っ向から闘う人生と,アン・バーバラやアンマイ・ムスとの生活を経て,爵位も金も越えて大事なものに命を懸ける人生が心を打つ.ダン・ローマーの音楽も劇的で大好き.まことに骨太な映画で,見応え十分だ.原題のBASTARDENは「私生児」「ロクデナシ」という意味,ケーレン大尉のことでもありシンケルのことでもあるという二重性を持つ.
★★★★☆(★5個が満点).
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2025/02/26

独断的映画感想文:岸辺露伴 ルーヴルへ行く

日記:2025年2月某日
映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」を見る.1_20250303154001
2023年.監督:渡辺一貴.出演:高橋一生(岸辺露伴),飯豊まりえ(泉京香),長尾謙杜(岸辺露伴(青年期)),安藤政信(辰巳隆之介),美波(エマ・野口),白石加代子(露伴の祖母),木村文乃(奈々瀬).2_20250303154001
人の心や記憶を本として読みまた書き込みもできる能力を持つ漫画家・岸部露伴.絵画のオークションに参加した露伴は,漆黒の絵に魅せられ落札する.ところが持ち帰ったその絵を狙って賊が侵入,絵は取り戻せたがその謎を追って露伴はルーブルに取材に行くことになる.漆黒の絵には露伴の実家にまつわる思い出があり,若い時実家で漫画修行に明け暮れていた時,露伴は下宿人の奈々瀬にあこがれる.奈々瀬は露伴に「この世で最も邪悪な黒い絵を知っているか?」と聞いたことがある….3_20250303154001
荒木飛呂彦原作のコミックの映画化.物語は絵画の模写を利用した盗品売買と,江戸時代の日本画家・山村仁左右衛門の描いた「黒い絵」の呪いを織り交ぜて展開.結局はオカルトもので,あまり良い趣味とは思えなかった.助手・泉京香役の飯豊まりえのペラペラしゃべりまくる薄べったいキャラが共感できず.高橋一生,木村文乃もさして魅力なし.4_20250303154001
★★(★5個が満点).
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2025/02/17

独断的映画感想文:唄う六人の女

日記:2025年2月某日
映画「唄う六人の女」を見る.1_20250221184601
2023年.監督:石橋義正.
出演:竹野内豊(萱島),山田孝之(宇和島),水川あさみ(刺す女),アオイヤマダ(濡れる女),服部樹咲(撒き散らす女),萩原みのり(牙を剥く女),桃果(見つめる女),武田玲奈(包み込む女),大西信満,津田寛治,白川和子,竹中直人.4_20250221184601
萱嶋は恋人と暮らすカメラマン,幼い時に離婚で別れた父の訃報が届く.山中の実家では不動産屋が待っていて,彼らの勧めるまま萱嶋は父の家屋敷の売却契約に応じる.その帰路,不動産ブローカーの宇和島の運転する車で送られる途中,落石事故に遭遇する二人,気が付くと萱嶋は縛られ古い民家に寝かされていた.時折現れ無言のまま食事を出したりする6人の女たち,彼らが何者なのか皆目見当がつかない.隙を見て脱出した萱嶋は,同じく縛られ逆さづりにされていた宇和島を発見して,共に逃げ出す.しかし森の中をどれだけ歩いても元のところに戻ったり,どうしても麓にたどり着くことができない.そのうちに萱嶋は,宇和島が不動産売買に際し,何か隠していたことに気が付く….2_20250221184601
萱嶋と宇和島の扱いの差を見ても,明白に萱嶋=善玉・宇和島=悪玉であり,宇和島自身もその悪党ぶりをすぐに発揮する.6人の女たちの正体もだんだんわかってくるが,物語の着地点はどこか?混沌としたまま映画は終盤へ.
この映画はファンタジーと考えられるが,その割に血生臭い描写が多く,観客にとっては落ち着きが悪い.物語にも相当難があって,そもそも萱嶋の両親がなぜ離婚したかも一切不明,エピローグもあまりに唐突な内容で受けいれ難い.題名に「唄う」とあるが,彼女らは口も利かないし唄うことも一切ない.3_20250221184601
但し6人の女たちそれぞれが森の精霊だということは判るし,彼女たちの魅力はそれなりに楽しめる.自然の映像も美しい.しかし映画としては未完性,穴だらけの作品.5_20250221184601
★☆(★5個が満点)
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