独断的映画感想文:瞳をとじて
日記:2025年3月某日
映画「瞳をとじて」を見る.
2023年.スペイン.監督:ビクトル・エリセ.
出演:マノロ・ソロ(ミゲル),ホセ・コロナド(フリオ),アナ・トレント(アナ),マリア・レオン(ベレン),マリオ・パルド(マックス),エレナ・ミケル(マルタ),ホセ・マリア・ポウ(レヴィ).
映画の冒頭,男が「悲しみの王」という名前の古い邸宅に入ってゆく.屋敷の主,ユダヤ人のレヴィは男・フランクに,昔上海で生まれた自分の娘を探して連れてくるように依頼する.フランクは承知して出発する.
これは「別れのまなざし」という映画の初めのシーン,フランクを演じた俳優・フリオはこの映画の撮影中に突然失踪し,以降姿を現さなかった,もう22年前の話だ.監督第2作目の「別れのまなざし」が打ち切りとなり,以後二度と映画を撮らなかった監督・ミゲルはフリオの親友.TV局の「未解決事件」という番組でこの件を取り上げることになり,ミゲルは担当プロデューサー・マルタと会う.
番組のためにフリオの一人娘・アナや,当時の編集担当者で旧友のマックスと会い,フリオと共に過ごした若い頃や自分の来し方を追想するミゲル.番組がオンエアされると,フリオと似た男が高齢者施設にいるとの情報が寄せられた….
中盤までフリオはどうなったのかに焦点があてられるミステリ仕立ての映画.ミゲルとフリオは水兵時代からの親友で,一緒に刑務所に入ったこともある.女と酒を切らすことのなかった人気俳優フリオは,なぜ撮影中に失踪したのか.後半の焦点は高齢者施設にいた男・ガルデルはフリオなのかどうか.ミゲルはアナをガルデルに面会させ,更にマックスの協力を得て「別れのまなざし」の上映会を開く….
映画の中で映画が撮影され上映されるメタ構造の映画.長く映画を撮っていないミゲルの追想は,本作監督エリセの追想と重なる.演じる俳優がそれぞれ存在感があって魅力的.またその俳優の貌がアップで強調されるカメラワークも素敵だ.
ゆっくり進む物語,程よい各エピソードの紹介,伏線が回収されていくが最後の結論は観客に投げかける構造,映画というものの魅力が詰まった好編である.特にプロローグとエピローグに使われる「別れのまなざし」の映像はまことに魅力的.2時間半を超える長尺だが一気に見た.映画らしい映画,お勧めです.
★★★★(★5個が満点).
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