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2025/05/26

独断的映画感想文:オッペンハイマー

日記:2025年5月某日
映画「オッペンハイマー」を見る.1_20250528175501
2023年.アメリカ.監督・脚本:クリストファー・ノーラン.
出演:キリアン・マーフィ(J・ロバート・オッペンハイマー),エミリー・ブラント(キティ・オッペンハイマー),マット・デイモン(レズリー・グローヴス),ロバート・ダウニー・Jr(ルイス・ストローズ),フローレンス・ピュー(ジーン・タトロック),ジョシュ・ハートネット(アーネスト・ローレンス),ケイシー・アフレック(ボリス・パッシュ),ラミ・マレック(デヴィッド・L・ヒル),ケネス・ブラナー(ニールス・ボーア),トム・コンティ(アルベルト・アインシュタイン),ゲイリー・オールドマン(ハリー・トルーマン).2_20250528175501
映画の冒頭,1920年代.原子核の不思議に魅了される若きオッペンハイマー.ヨーロッパの大学でニールス・ボーア,ハイゼンベルクら当時の最高の物理学者の指導を受け,理論物理学者としての名声を勝ち得て行く.1930年代,アメリカに戻ったオッペンハイマーは量子力学の講座を開き,学生は徐々に増えていった.
一方オッペンハイマーは弟に誘われて共産党や組合活動のグループと付き合うようになり,恋人ジーンや後に結婚するキティも共産党員だった.1942年,グローヴス大佐の訪問を受けたオッペンハイマーは,原爆開発の国家計画(マンハッタン計画)への参加を要請される.オッペンハイマーは自身の出身地に近いロス・アラモスの砂漠に新たな町を作り,全米から最高の科学者を集めて原爆開発に没頭することになる….3_20250528175501
映画は重層的な構造を持って進行する.一つは経時的な事態の経過を描き,一方で1954年,アメリカ原子力委員の資格更新をめぐる聴聞会でのオッペンハイマーへの厳しい追及と証人及び本人の回答を描く.最後に白黒の画面で1959年の米国商務長官に指名されたストローズの公聴会の模様を描く.ストローズは1947年にオッペンハイマーを原子力委員会顧問・プリンストン研究所長に招聘した責任者だった.4_20250528175501
オッペンハイマーは優れた科学者であり感受性に満ちた指導者でもあったが,自身の思想信条についてはあけっぴろげ,女性との付き合いは奔放,敵を作る結果となることに無頓着だった.映画はそのようなオッペンハイマーが苦心の末マンハッタン計画を成功させる姿を描く.オッペンハイマーは一躍国民的英雄となったが,一方戦後の冷戦構造の中で政府や軍部における権謀術数の渦に巻き込まれてゆく.その渦中でのオッペンハイマーと妻キティの悪戦苦闘,誰が味方で誰が敵かも判らない政争,そしてマンハッタン計画が実現してしまった核戦争世界への科学者としての苦悩が描かれてゆく.5_20250528175501
個人的にはドイツが降伏したのに日本に原爆を落とす必要があるのか,という科学者たちの論争が印象的.結局軍部の原爆投下が日本の降伏を早めるだろうという主張通りになったのだが,確かに日本の指導者は原爆が投下されなければ8月15日に無条件降伏はしなかったかもしれない.3時間に及ぶ重厚な映画だが,実に見応えあり.
★★★★(★5個が満点).
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