独断的映画感想文:止められるか、俺たちを
日記:2025年5月某日
映画「止められるか、俺たちを」を見る.
2018年.監督:白石和彌.音楽:曽我部恵一.
出演:門脇麦(吉積めぐみ),井浦新(若松孝二),山本浩司(足立正生),岡部尚(沖島勲),大西信満(大和屋竺),タモト清嵐(秋山道男(オバケ)),毎熊克哉(小水一男(ガイラ)),満島真之介,渋川清彦,高岡蒼佑(大島渚),高良健吾,寺島しのぶ(前田のママ),奥田瑛二(葛井欣士郎).
事実に基づく映画.1969年3月から1971年9月までの若松プロダクションの軌跡を,新入りの女性助監督めぐみを中心に描く.若松監督は元ヤクザのチンピラ,気が荒く短い.暴力的で金にうるさい.現場では喧嘩腰で,しくじったスタッフは出ていけと罵倒される.
若松は70年安保前後の疾風怒濤の時代を背景に,低予算ながら迫力ある映像のピンク映画を量産し好評を得た.1971年カンヌ国際映画祭の帰路パレスチナへ渡り,パレスチナゲリラとともに軍事訓練を受けると同時に,『赤軍-PFLP 世界戦争宣言』を足立正生と共に制作し,帰国後はその上映運動に奔走する….
めぐみは若松組の撮影現場の厳しさに耐えながら2年後にはチーフ助監督を務めるようになる.スタッフには頼りにされながらも,映画監督として自身は何を目指すのかが見えないまま,政治にのめり込んでいく若松との距離も感じていた….
本作の監督は若松組出身の白石和彌,若松監督役は,やはり若松組の井浦新,めぐみ役の門脇麦も好演.めぐみが初めて生い立ちや映画への思いを語るシーン,睡眠薬を飲んで母親に電話をかけるシーンなどが感銘的だ.またクレジットのない役に錚々たる俳優たちが名を連ねる.
この当時の沸き立つような高揚感,ひりひりする疾走感とともに描かれていく撮影現場や東京の街並み,人びとの交流が印象的,1970年前後の時代の匂いがするようだ.若松孝二という人の熱さ・迫力を改めて感じた.曽我部恵一の音楽も素敵.
★★★★(★5個が満点).
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