« 2025年5月 | トップページ | 2025年7月 »

2025年6月に作成された記事

2025/06/28

独断的映画感想文:千夜、一夜

日記:2025年6月某日
映画「千夜、一夜」を見る.1_20250630181601
2022年.日本.監督:久保田直.
出演:田中裕子(若松登美子),尾野真千子(田村奈美),安藤政信(田村洋司),ダンカン(藤倉春男),白石加代子(藤倉千代),平泉成(若松俊雄),小倉久寛(入江春弼).2_20250630181601
佐渡の漁港の水産工場で働く登美子,夫は失踪したまま未だに行方が分からない.拉致されたのではないかとの観測もある中,登美子はビラを配ったりできる限りの活動をしてきたが,何も判らぬまま30年がたった.同じ漁港で漁師をしている春男は,ずっと登美子と所帯を持ちたいと云ってきているが,登美子は応じることはない.
同じ街の病院に勤める奈美も2年前に教師だった夫が失踪した.奈美の相談に応じ,登美子は事情を詳しく聞き捜索に協力する.奈美は夫の失踪の理由を見出し,自身のけじめをつけたいと考えている.一方登美子は,夫の母親の葬儀に訪れた本土の町で,思いがけず奈美の夫・洋治を見かけ佐渡に連れ帰るが….4_20250630181601
登美子はいまだに夫の肉声が録音されているカセットテープを,繰り返し再生して聞いている.登美子の亡き父は,戦争から帰ってからは人が変わり,登美子を認めずその結婚も許さなかった.登美子には父への激しい反感が今もある.春男をめぐっては,その母(白石加代子)や漁協の幹部らが,いい加減に春男を受け入れよと説得するが登美子は受け容れず,春男は自分の小舟に乗って失踪してしまう.一方奈美は,病院の後輩職員から思いを寄せられ,彼との生活に傾きつつある.3_20250630181601
失踪した男を待つ女の葛藤を演じる女優二人が秀逸.特に田中裕子の演技は素晴らしい.帰宅したが奈美に追い出され,雨の夜に登美子の家を尋ねた洋治を受け入れた晩,一瞬洋治を夫と混同する場面の登美子は迫力がある.実母の葬儀で天涯孤独となった登美子が(喪主側の席には登美子以外誰もいない),棺に実母が保管していた父親の義足を入れようとして(「これも持って行ってもらおうと思った」)火葬場に断られるシーンのおかしさも素敵だ.春男を演じるダンカンは,こんな男と所帯を持つのは絶対嫌だと思わせる迫真の演技が良かった.5_20250630181601
プロットには必ずしも共感しない部分はあるが,俳優陣の演技に満足.
★★★☆(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2025/06/15

独断的映画感想文:ナミビアの砂漠

日記:2025年6月某日
映画「ナミビアの砂漠」を見る.1_20250616170601
2024年.監督・脚本:山中瑶子.
出演:河合優実(カナ),金子大地(ハヤシ),寛一郎(ホンダ),新谷ゆづみ(イチカ),中島歩(東高明),唐田えりか(遠山ひかり),渋谷采郁(葉山依),澁谷麻美(吉田茜),倉田萌衣(瀬尾若菜),伊島空(三重野),堀部圭亮(林恒一郎),渡辺真起子(林茉莉).2_20250616170601
カナは脱毛エステのスタッフとして働く21歳.友人のイチカと会い,彼女が同級生が亡くなったという深刻な話をしているのに,カナはその話に集中できない.隣の席で話している男たちの方に注意が向いている.帰りたくないというイチカと,先ほどのとなりの席の男性たちと一緒に飲むことになるが,カナはさっさと途中で帰ってしまう.帰った先はホンダと同棲しているアパート,ホンダは甲斐甲斐しくカナの世話を焼き,寝かしてくれる.カナはハヤシとも二股をかけている.ハヤシからは今の男と別れて一緒に暮らしてくれと云われる.ホンダが北海道出張で誘われて風俗に行ったと告白したことをきっかけに,カナはホンダの留守中に引っ越しを敢行,ハヤシとともに新しいアパートに移ってしまう.カナは鼻ピアスを,ハヤシはタトゥーを入れ愛を誓うのだった.4_20250616170601
ハヤシは物書きで自宅で仕事をするタイプ,自宅で暇を持て余すカナと衝突が始まる.喧嘩でアパートを飛び出し,階段から転落して怪我をするカナ,ハヤシはカナの世話をしてくれるが,回復すると喧嘩はまたエスカレートしていく.カナはハヤシの荷物にあった胎児のエコー写真を突き付け,その子はどうなったと激しく詰め寄る….
カナがハヤシと云う男と向き合っていく過程の物語.ホンダといたときはカナは何もしなくてもホンダが仕えてくれた.ハヤシと付き合って初めて,カナは自分がハヤシからどう見られるかを意識する.ハヤシの両親からバーベキューに招かれたときに,「非常識だと思われたくない」と服装を気にするカナ(しかし鼻ピアスはそのままだ).3_20250616170601
カナは母親が中国人というルーツがあり,そのことも改めて意識にのぼってくる.またカウンセラーからはある点での規範意識が強すぎるという指摘を受ける.隣の部屋の英会話教師ひかりからも助言を得る.それまでとりとめもなく過ぎていった日々が,少しずつ変わっていく様だ.終盤またもやハヤシと組んずほぐれつ取っ組み合いの大喧嘩をしているカナ,しかしその喧嘩はそれまでと違って明るい,アスレチックのような雰囲気がある.5_20250616170601
河合優美が何とも魅力的,自分勝手で手の付けられない女だが爆発的な魅力を持つ女・カナを見事に演じている.ラストシーンはナミビアの砂漠のライブカメラの映像.水場の周りに集まってくる動物たちが,微妙な距離をお互いにとって入れ替わり水を飲んでいる様子が映し出される.★★★★(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2025/06/12

独断的映画感想文:国宝

日記:2025年6月某日
映画「国宝」を見る.0_20250613214801
2025年.監督:李相日.撮影:ソフィアン・エル・ファニ.音楽:原摩利彦.
出演:吉沢亮(立花喜久雄),横浜流星(大垣俊介),高畑充希(福田春江),寺島しのぶ(大垣幸子),森七菜(彰子),三浦貴大(竹野),見上愛(藤駒),黒川想矢(喜久雄(少年時代)),越山敬達(俊介(少年時代)),永瀬正敏(立花権五郎),嶋田久作(梅木),宮澤エマ(立花マツ),中村鴈治郎(吾妻千五郎),田中泯(小野川万菊),渡辺謙 (花井半二郎).4_20250613214801
長崎に珍しく雪が降った1964年元旦,立花組は料亭で盛大な新年会を開き,組長の息子で15歳の喜久雄は余興の舞踊「関の扉」を,招待客の歌舞伎役者・花井半二郎の前で見事に踊った.ところがその直後,ヤクザの抗争によって父は殺される.喜久雄は花井半二郎に引き取られ,同い年の半二郎の息子俊介と共に,歌舞伎の修行に明け暮れることになった.2_20250613214801
仲も良く互いに切磋琢磨しながら成長していく二人,21歳の時,二人で踊った舞台を見た興業会社の社長の口利きで,二人は京都の歌舞伎の大舞台で,二人道成寺を踊ることになる.踊りは大成功,二人は一躍人気者となる.ある日半二郎は交通事故で,予定していた曽根崎心中の舞台に立てなくなった.代役に誰を立てるのか?半二郎が選んだのは喜久雄だった….3_20250613214801
原作は吉田修一のベストセラー.数奇なめぐりあわせから生涯のライバルであり盟友となった,御曹司俊介と芸の天才喜久雄との,波瀾万丈の運命を描く3時間の大作.この作品の魅力は,なんといってもその構造にある.スクリーンの上で,俳優の演じる歌舞伎役者が,その個人の葛藤を孕みつつ役の性根を演じきって行く.観客は曽根崎心中のお初に感動しつつ,お初を演じる喜久雄の芸に(そしてそれを演じている吉沢亮の演技に)心を動かされている,そのメタ構造がスリリングで魅力的.5_20250613214801
歌舞伎役者役を演じる吉沢亮,横浜流星,渡辺謙,田中泯がいずれも素晴らしい.その他の俳優たちもそれぞれに魅力的.宮澤エマの美しさ,寺島しのぶの存在感,またクレジットされていないが終盤に現れる瀧内公美も素敵.6_20250613215001
そしてこの映画のもう一つの魅力は映像と音楽だ.「アデル、ブルーは熱い色」で見たソフィアン・エル・ファニの,ワンシーンワンカットをゆるがせにしないカメラは実に見事.また,原摩利彦の感情をゆすり上げるような音楽も,素晴らしい.映画としても物語としても重厚・骨太な作品,見応え充分.1_20250613214801
★★★★☆(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2025/06/10

独断的映画感想文:あんのこと

日記:2025年6月某日
映画「あんのこと」を見る.1_20250613182701
2024年.監督・脚本:入江悠.
出演:河合優実(香川杏),佐藤二朗(多々羅保),稲垣吾郎(桐野達樹),河井青葉(香川春海),広岡由里子(香川恵美子),早見あかり(三隅紗良).2_20250613182701
事実に基づく物語.覚醒剤使用の容疑で取り調べられる21歳の杏,無表情で尋問には抵抗する.代わって取り調べに入った多々羅刑事は,一風変わったアプローチで杏の心をつかむ.杏は祖母と母との3人家族,母の命令で小学生のころから万引きをし,12歳からは売春を強要された.この日も「覚醒剤を買う金があったら家に入れろ」と殴る蹴るの暴行を受ける.4_20250613182701
杏は多々羅の指示に従って覚醒剤を絶つための会:サルベージに参加し,介護施設に就職する.初給料は20日働いて僅か5万円だったが,杏は家族にケーキを買って帰る.しかしその初給料は酔っ払って男と帰ってきた母親にすべて奪われた.杏は実家を出てDVシェルターに移り,理解ある介護の職場を得て働き始める.やがて夜間中学で勉強を始め(杏は漢字は読めず算数もできない),時たま多々羅とサルベージを取材している雑誌記者・桐野と3人でラーメン屋に行くのが日課となった.世界は徐々に杏の頭上に開いていく様だった.しかしこの時,コロナのパンデミックが世界を襲う….3_20250613182701
夜間中学は閉校し,ラーメン屋も閉店した.職場は非正規を解雇することになり,杏は仕事も失う.更に多々羅が女性会員に性的暴行をしたことが桐野の取材で判明し,多々羅は逮捕されサルベージは閉鎖となった.一方,DVシェルターの隣家の女性が,男から逃げるため1歳の子・隼人を無理やり杏に預け姿を消す.杏はやむなくその子の世話に没頭しているところを母親に見つかり,子供を人質に取られて売春を強要された….5_20250613182701
重たい題材を描くが映画は骨太だ.杏は多々羅や桐野に会うまでは一方的に奪われる存在だった.彼らに会って実家から出た時,ようやく与えられる存在となることができた.隼人を預かって世話をしている時,初めて杏は与える立場となることができた.しかしその関係性も,母親に破壊されてしまう.主人公杏のその過程を演じる河合優美がなんといっても素晴らしい.義務教育も満足に受けられなかった21歳の女性の,必死に生きていく姿が胸に迫る.周辺を固める俳優たちも申し分なし.見終わった後暫く心から離れない映画だった.
★★★★(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2025/06/09

独断的映画感想文:キンキーブーツ

日記:2025年6月某日
映画「キンキーブーツ」を見る.1_20250610145301
2005年.イギリス.監督:ジュリアン・ジャロルド.
出演:ジョエル・エドガートン(チャーリー・プライス),キウェテル・イジョフォー(ローラ),サラ=ジェーン・ポッツ(ローレン),ジェミマ・ルーパー(ニコラ),リンダ・バセット(メル),ニック・フロスト(ドン),ユアン・フーパー(ジョージ).4_20250610145301
イギリスの田舎町ノーサンプトンの伝統ある靴メーカー「プライス社」の跡取り息子チャーリーは,靴製造の技術を仕込まれたが本人の希望はロンドン暮らし.しかし晴れてロンドンに着いたその日に父が亡くなり,チャーリーはやむなく父の後を継ぐことになる.しかも父が隠していた納品先の倒産が明るみに出て,チャーリーは在庫処分のためロンドンへ.その夜チンピラに絡まれていた美女を助けようとしてノックアウトされ,気がつくと美女の楽屋に.美女はドラァグ・クイーンのローラことサイモンだった.ローラは,女性用の靴が自分の体重を支えられず,すぐに壊れると愚痴をこぼす.3_20250610145301
ノーサンプトンに戻ったチャーリーは辛い思いで15人の従業員をクビにするが,15番目にクビにした若い事務員ローレンに「ニッチ市場を開拓しろ」と発破をかけられる.そこでチャーリーはローレンを再雇用し,ローラの言っていた丈夫なハイヒールブーツを,『危険でセクシーな女物の紳士靴 (Kinky Boots)』として開発することにする.期待を胸に工場にやって来たローラをコンサルタントとして,チャーリーはブーツの生産に着手するが,従業員は必ずしもその路線に賛同していなかった….2_20250610145301
チャーリーはこの新作をミラノの靴見本市に出品する決意を固めるが,従業員の気持ちはなかなか一つにならない.一方チャーリーの婚約者ニコラは,工場を売り払ってその金をもとにロンドン暮らしをしようと主張していたが,チャーリーがミラノ見本市のために自宅まで抵当に入れたことを知って激怒する.しかしニコラは裏で不動産業者とできていた.それを知ったチャーリーは激昂し,ミラノでモデルを務める予定のローラと喧嘩してしまう.この混とん状態のままチャーリーとローレンたちはミラノに行けるのか…?5_20250610145301
実話をもとにした映画(らしい).優柔不断のチャーリーがローラとローレンと云う相棒を得てオトコになって行く物語でもあり,プライス社の従業員たちが偏見から目覚める映画でもある.「それでも夜は明ける」の名優キウェテル・イジョフォーの筋骨たくましいドラァグ・クイーンぶりは傑作,彼がステージで歌う懐かしい歌の数々も素敵だ.イギリス流のユーモアも随処にあり,最後に落ち着く大団円は心温まるものだ.なお,この映画をもとに,シンディ・ローパー作詞・作曲で作成されたブロードウェイミュージカルが2013年に上演され,その舞台をシネマ化した映画「キンキーブーツ」が2018年に作成された.ややこしいけどお間違えの無いように.
★★★★(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2025/06/04

独断的映画感想文:丘の上の本屋さん

日記:2025年6月某日
映画「丘の上の本屋さん」を見る.
2021年.イタリア・ユニセフ共同制作.監督・脚本:クラウディオ・ロッシ・マッシミ.1_20250607183001
出演:レモ・ジローネ(リベロ),コッラード・フォルトゥーナ(ニコラ),ディディー・ローレンツ・チュンブ(エシエン),ピノ・カラブレーゼ(教授),フェデリコ・ペロッタ(ボジャン),アンナマリア・フィッティパルディ(キアラ).2_20250607183001
イタリアのとある田舎町(ロケ地はイタリアの最も美しい村の一つとされているチヴィテッラ・デル・トロント),丘の上のテラスに面し,一軒の古本屋がある.店主のリベロは老人,訪れる町の人々との,穏やかな日々が描かれる.壁にはスペインのベストセラー小説「風の影」で作者,カルロス・ルイス・サフォンが述べた言葉「持ち主が代わり,新たな視線に触れるたびに,本は力を得る」が掲げてある….3_20250607183001
ある日,本屋の前に佇むブルキナファソからの移民の少年・エシエンに気付いたリベロは,お金が無いから本を買えないというエシエンに,只で本を貸すことにする.少年はすぐに本を読んでしまい,リベロは次々にエシエンに本を貸し続ける.それらの本は,コミック,イソップ物語,星の王子様,白鯨,シュヴァイツァー伝,アンクル・トムの小屋,ロビンソン・クルーソー,白い牙,ドン・キホーテ,世界人権宣言.最後の本は,リベロがエシエンにプレゼントした.4_20250607183001
この物語を軸に,映画は隣のカフェのウェイター・ニコラと家政婦・キアラのロマンスや,本屋の個性的な客たちを描いていく.心温まる佳作だが,ちゃんと最後のドラマはある.世界人権宣言を抱えて,エシエンがリベロからの手紙を読むラストシーンが,印象的だ.5_20250607183001
★★★☆(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2025/06/02

独断的映画感想文:過去を負う者

日記:2025年6月某日
映画「過去を負う者」を見る.
2023年.監督・脚本:舩橋淳.1_20250603171901
出演:辻井拓(田中拓),久保寺淳(藤村),平井早紀(市川),田口善央(三隅善央),紀那きりこ(森文),みやたに(永田),峰あんり(島あんり),満園雄太(若尾雄太),伊藤恵(長谷川),小林なるみ(被害者の母).5_20250603171901
受刑者向けの就職情報誌「CHANGE」編集チームは,出所者の就職あっせんと更生支援をしていた.チームのひとり藤村(35)は,ひき逃げによる殺人罪で10年服役した田中(34)を担当し,中華料理屋に就職させたもののキレやすい性格でトラブル続き.女子児童へのわいせつ行為により2年服役した元教師・三隅(37)は,職に就いたとたんすぐ消息を絶ち,チームを落胆させる.薬物常習で2年服役後出所した森(30)は清掃会社で働くものの,長年続くコミュニケーション障害でなかなか社会にフィットできない.社会復帰に向けてもがき苦しむ元受刑者を目の当たりにした藤村らは,アメリカの演劇による心理療法・ドラマセラピーを提案.元受刑者たちと稽古を重ね,舞台『ツミビト』を公演するまでに至る.舞台初日の観客の反応は,彼らにとって全くの予想外だった…(公式サイト「ストーリー」より).3_20250603171901
本作は台本を用意せず,現場で俳優と演技を煮詰めてゆくドキュメンタリー×ドラマの演出手法によって撮影された由.その映像のリアルさ,この人たちはどうなってしまうのかという息を呑むドラマの展開が,生々しい迫力をもたらす.特に終盤,ドラマセラピーによる舞台「ツミビト」の公演後の観客との話し合いで思わぬ激しい批判・非難にさらされ,元受刑者が切れたり或いは観客に懇願したり,スタッフも元受刑者も打ちひしがれるシーンは,見ていてどうしようもない感情に襲われる.重たいテーマで,元受刑者,支援者,犯罪被害者,第三者のどこにも正解がないことが,思い知らされる場面だった.ラストシーンの救いに癒される.こんな映画は初めてだ.2_202506031719014_20250603171901
★★★★☆(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

« 2025年5月 | トップページ | 2025年7月 »