独断的映画感想文:過去を負う者
日記:2025年6月某日
映画「過去を負う者」を見る.
2023年.監督・脚本:舩橋淳.
出演:辻井拓(田中拓),久保寺淳(藤村),平井早紀(市川),田口善央(三隅善央),紀那きりこ(森文),みやたに(永田),峰あんり(島あんり),満園雄太(若尾雄太),伊藤恵(長谷川),小林なるみ(被害者の母).
受刑者向けの就職情報誌「CHANGE」編集チームは,出所者の就職あっせんと更生支援をしていた.チームのひとり藤村(35)は,ひき逃げによる殺人罪で10年服役した田中(34)を担当し,中華料理屋に就職させたもののキレやすい性格でトラブル続き.女子児童へのわいせつ行為により2年服役した元教師・三隅(37)は,職に就いたとたんすぐ消息を絶ち,チームを落胆させる.薬物常習で2年服役後出所した森(30)は清掃会社で働くものの,長年続くコミュニケーション障害でなかなか社会にフィットできない.社会復帰に向けてもがき苦しむ元受刑者を目の当たりにした藤村らは,アメリカの演劇による心理療法・ドラマセラピーを提案.元受刑者たちと稽古を重ね,舞台『ツミビト』を公演するまでに至る.舞台初日の観客の反応は,彼らにとって全くの予想外だった…(公式サイト「ストーリー」より).
本作は台本を用意せず,現場で俳優と演技を煮詰めてゆくドキュメンタリー×ドラマの演出手法によって撮影された由.その映像のリアルさ,この人たちはどうなってしまうのかという息を呑むドラマの展開が,生々しい迫力をもたらす.特に終盤,ドラマセラピーによる舞台「ツミビト」の公演後の観客との話し合いで思わぬ激しい批判・非難にさらされ,元受刑者が切れたり或いは観客に懇願したり,スタッフも元受刑者も打ちひしがれるシーンは,見ていてどうしようもない感情に襲われる.重たいテーマで,元受刑者,支援者,犯罪被害者,第三者のどこにも正解がないことが,思い知らされる場面だった.ラストシーンの救いに癒される.こんな映画は初めてだ.
★★★★☆(★5個が満点).
人気ブログランキングへ
コメント