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2025/06/10

独断的映画感想文:あんのこと

日記:2025年6月某日
映画「あんのこと」を見る.1_20250613182701
2024年.監督・脚本:入江悠.
出演:河合優実(香川杏),佐藤二朗(多々羅保),稲垣吾郎(桐野達樹),河井青葉(香川春海),広岡由里子(香川恵美子),早見あかり(三隅紗良).2_20250613182701
事実に基づく物語.覚醒剤使用の容疑で取り調べられる21歳の杏,無表情で尋問には抵抗する.代わって取り調べに入った多々羅刑事は,一風変わったアプローチで杏の心をつかむ.杏は祖母と母との3人家族,母の命令で小学生のころから万引きをし,12歳からは売春を強要された.この日も「覚醒剤を買う金があったら家に入れろ」と殴る蹴るの暴行を受ける.4_20250613182701
杏は多々羅の指示に従って覚醒剤を絶つための会:サルベージに参加し,介護施設に就職する.初給料は20日働いて僅か5万円だったが,杏は家族にケーキを買って帰る.しかしその初給料は酔っ払って男と帰ってきた母親にすべて奪われた.杏は実家を出てDVシェルターに移り,理解ある介護の職場を得て働き始める.やがて夜間中学で勉強を始め(杏は漢字は読めず算数もできない),時たま多々羅とサルベージを取材している雑誌記者・桐野と3人でラーメン屋に行くのが日課となった.世界は徐々に杏の頭上に開いていく様だった.しかしこの時,コロナのパンデミックが世界を襲う….3_20250613182701
夜間中学は閉校し,ラーメン屋も閉店した.職場は非正規を解雇することになり,杏は仕事も失う.更に多々羅が女性会員に性的暴行をしたことが桐野の取材で判明し,多々羅は逮捕されサルベージは閉鎖となった.一方,DVシェルターの隣家の女性が,男から逃げるため1歳の子・隼人を無理やり杏に預け姿を消す.杏はやむなくその子の世話に没頭しているところを母親に見つかり,子供を人質に取られて売春を強要された….5_20250613182701
重たい題材を描くが映画は骨太だ.杏は多々羅や桐野に会うまでは一方的に奪われる存在だった.彼らに会って実家から出た時,ようやく与えられる存在となることができた.隼人を預かって世話をしている時,初めて杏は与える立場となることができた.しかしその関係性も,母親に破壊されてしまう.主人公杏のその過程を演じる河合優美がなんといっても素晴らしい.義務教育も満足に受けられなかった21歳の女性の,必死に生きていく姿が胸に迫る.周辺を固める俳優たちも申し分なし.見終わった後暫く心から離れない映画だった.
★★★★(★5個が満点).
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