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2025年7月に作成された記事

2025/07/14

独断的映画感想文:アンダーカレント

日記:2025年7月某日
映画「アンダーカレント」を見る.
2023,日本.監督:今泉力哉.脚本:澤井香織,今泉力哉.音楽:細野晴臣.1_20250717140201
出演:真木よう子(関口かなえ),井浦新(堀隆之),リリー・フランキー(山崎道夫),永山瑛太(関口悟),江口のりこ(菅野よう子),中村久美(木島敏江),康すおん(田島三郎),内田理央(藤川美奈).3_20250717140201
家業の月之湯を亡父から引き継いだかなえ,ところが夫・悟は1カ月前に組合の慰安旅行先で失踪してしまった.組合を通じて従業員を募集し,パートの木島と営業を再開したかなえ,ある朝堀と云う男が応募してやってくる.その日から堀は住み込みで働き始め,常連客も徐々に戻ってきた.暫くして堀はアパートに移り通いで働くことになった.常連の田島老人とも将棋を打つ中になったが,堀は無口で自分のこともほとんど話さない.2_20250717140201
かなえはある日スーパーで赤ん坊を連れた旧友・菅野と出会う.悟とも知り合いの菅野に,かなえは悟の失踪を打ち明け,菅野は知人の探偵・山崎を紹介してくれた.山崎はちょっと変わった胡散臭い風体,しかし悟のことをかなえから聞き取り,調査に取り掛かることになる.ところが最初の調査報告で,悟の両親は2年前まで健在だったことが分かった.悟からは自身が交通遺児で施設で育ったと聞いていて,母を早くに亡くした自分と心が通うところもあると思っていたかなえは呆然とする.ある日,月之湯の常連客・藤川美奈の8歳の娘が帰宅せず,ランドセルが路上で発見されるという事件が起こる.かなえはそれを聞いて気を失ってしまう….4_20250717140201
かなえは子どものころさなえという自分によく似た少女と親友だった.しかしさなえはある日事件に巻き込まれ近くの池で死んでしまう.かなえは以来,自分が首を絞められ水の中に沈んでいく夢を見るようになったのだった.かなえの心に残ったのはどういう傷なのか.悟は何故かなえに嘘をついていたのか.悟は何故失踪したのか.堀はどういう人物なのか.映画は終盤に向けその謎を明らかにしてゆく.5_20250717140201
コミックが原作の映画,登場人物は何となく物語の展開に都合のいい人物が多い.それを腕利きのベテラン俳優たちが何とかリアルな存在に感じさせるように奮闘している印象があって,面白い.真木よう子が,強気の様で繊細,てきぱきしているようで童女のような感じの主人公をうまく演じて見応えあり.田島を演じた康すおんも面白かった.嘘をつく悟,自身に封じられた記憶のあったかなえ,自分を語らない堀,この3人がどうなるのか.映画のあと味は悪くない.0_20250717140201
★★★☆(★5個が満点).
蛇足:この映画のポスターは,ジャズピアノの名人ビル・エヴァンスと同じくギターの名演奏家ジム・ホールの1962年のコラボレーションアルバム「アンダーカレント」のジャケット写真(右の写真)に,ヒントを得たものと思われる.ともに良いセンス.
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2025/07/08

独断的映画感想文:ミツバチと私

日記:2025年7月某日
映画「ミツバチと私」を見る.1_20250709152101
2023.スペイン.監督・脚本:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン.
出演:ソフィア・オテロ(Lucia),パトリシア・ロペス・アルナイス(Ane),アネ・ガバライン(Lourdes),イツィアル・ラスカノ(Lita),マルチェロ・ルビオ(Gorka).2_20250709152101
フランス・バスク地方に住む8才のアイトールは朝から不機嫌.出かけなければいけないのに服が気に入らない,行きたくないと怒る.アイトールと呼ばれることがそもそも気に入らなくて,姉も兄も彼をココ(フランス語で可愛い子という一般名詞)と呼ぶが,その呼び方さえ嫌がるときもある.今日は皆で列車に乗りスペイン・バスク地方のお祖母ちゃんの家に夏休暇に行く.父ゴルカは留守番,母アネは亡父の工房で塑像を作成し,美術学校教員試験の提出物とするつもりだ.男の子の友達のいないアイトールは,同年齢の親戚のニコと仲良くなって心を許すが,祖母からはもっと男の子らしくするよう注意される.その中でミツバチを飼う叔母のルルデスはアイトールの気持ちを認め,女の子として接してくれる….3_20250709152101
男の子として生まれながら,自分の性自認に不安を覚える主人公の,葛藤と決意を描く.お祖母ちゃんや親戚の人たちは,髪の毛を切り少年らしくするようにと云う.父も髪を伸ばし中性的な服装を許すのは甘やかしだと考えている.母は当面は好きにさせておけば良いと考えているが,自身の塑像作成に打ち込んでアイトールのことに気が回らない.4_20250709152101
ルルデスは,一緒にミツバチの世話をしながらアイトールの不安に耳を傾け,そのままのアイトールを肯定する.ルルデスと共に行った礼拝堂で聖ルシア像を見たアイトールは,自分の名前はルシアがいいと言うのだった….5_20250709152101
幼くて自分の性自認に悩み,自分なりの結論を出す主人公に,感銘を受けた.映画の終盤,いなくなったアイトールを親戚が総出で探す場面で兄と母が「ルシア!」と呼んで探すシーン,ルシアが夕暮れの養蜂場で蜂の箱を一つずつ杖でノックしながら「蜂さん,蜂さん,ルシアですよ」と云って回るシーンが印象的.この困難な役を見事に演じたソフィア・オテロが,第73回ベルリン国際映画祭で最優秀主演俳優賞を史上最年少で受賞したのもうなずける.深い感動を得る映画.
★★★★☆(★5個が満点).
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2025/07/04

独断的映画感想文:鉄道員 ぽっぽや

日記:2025年7月某日
映画「鉄道員 ぽっぽや」を見る.1_20250706213401
1999年.監督:降旗康男,撮影:木村大作.
出演:高倉健(佐藤乙松),小林稔侍(杉浦仙次),大竹しのぶ(佐藤静枝),広末涼子(佐藤雪子),奈良岡朋子(加藤ムネ),田中好子(杉浦明子),安藤政信(吉岡敏行),志村けん(吉岡肇),吉岡秀隆(杉浦秀男).2_20250706213201
北海道を舞台とする物語.佐藤乙松は,盟友杉浦仙次と共に,機関助手(釜焚き)からたたき上げ,機関手を経て今は幌舞駅の駅長を務める.幌舞はかっては炭鉱町で石炭列車が往来したが,閉山後の今は町もさびれ,本数も少ない幌舞線の終点を乙松が始発から終着まで一人で守る.4_20250706213201
乙松の妻静江は病弱でなかなか子どもに恵まれなかったが,17年目にようやく雪子を授かった.しかし雪子は生後2カ月で病死,静枝もその後病気で亡くなった.乙松は駅を離れられず,いずれの時も最期を看取れなかった.仙次は幌舞線の始点・美寄駅長,定年後は関連企業への就職が決まっている.仙次は乙松の定年後を心配するが,乙松は自分は鉄道員以外のことはできないと取り合わない.幌舞線の廃線が決まり,乙松の退職も迫るある日,駅に不思議な少女が現れる….3_20250706213201
高倉健主演映画の傑作の一つ,佐藤乙松の幌舞駅での最後の数日を,過去の追憶を織り交ぜて描く.舞台はほとんど幌舞駅と駅前のだるま食堂が中心だが,北海道の山河を背景に走る列車キハ40の映像が随所に挿入され,特に冬季の雪原を走る姿は感銘的だ.実直な乙松の駅長勤務の描写の中,喜び・哀しみのそれまでの人生が振り返られる.1_20250706213201
寡黙で涙を見せることさえ控えめな乙松を演じる高倉健が素敵だ.小林稔侍,大竹しのぶも好演.特に終盤の広末涼子と高倉健のシーンには,涙を禁じ得ない.広末涼子にはやはり特別な輝きがある.奥田民生作詞・坂本龍一作曲の主題歌も素晴らしい.数十年ぶりに見たがやはり色褪せない映画だ.
★★★★(★5個が満点).
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2025/07/03

独断的映画感想文:駅 STATION

日記:2025年7月某日
映画「駅 STATION」を見る.Station1
1981年.監督:降旗康男,脚本:倉本聰,音楽:宇崎竜童,撮影:木村大作.
出演:高倉健(三上英次),いしだあゆみ(三上直子),大滝秀治(相場),池部良(中川警視),寺田農(力石),烏丸せつこ(吉松すず子),根津甚八(吉松五郎),宇崎竜童(木下雪夫),北林谷栄(三上昌代),藤木悠(三上一郎),永島敏行(三上道夫),古手川祐子(三上冬子),田中邦衛(菅原),小松政夫(菅原義二),草野大悟(柳),平田昭彦(大田黒警視),織本順吉(留萌署長),小林稔侍(辰巳刑事),倍賞千恵子(桐子),室田日出男(森岡茂),佐藤慶(対策本部長).
北海道を舞台とする物語.1968年,刑事三上英次は離婚し,銭函駅で妻直子と息子を見送る.オリンピックの射撃の選手でもあった三上は,直子の一度の過ちも許せなかった.直後の検問で,英次の上司であり射撃の師匠でもある相馬が,連続射殺犯指名22号・森岡に射殺される.三上は犯人追及を志願するが,五輪優先との道警の命令で許されなかった.Station2
1976年連続通り魔殺人犯を追い,三上らは増毛駅前の風待食道を張る.従業員のすず子の兄・吉松五郎が犯人と目されたためだ.増毛の対岸は三上の故郷・雄冬だ.三上は五輪のコーチを兼任していたが,道警の命令でコーチを外され,捜査に従事することになる.すず子の愛人・雪夫の手引きで五郎は逮捕された.1979年暮れ,三上は雄冬への里帰りの帰路,欠航のため増毛の居酒屋・桐子に立ち寄った….
高倉健主演映画の傑作の一つ,スタッフ,キャストとも充実し見ごたえのある映画となった.往年の名優たちと若手の俳優たちが,高倉健を中心に好演している.宇崎竜童が,日本アカデミー賞助演男優賞を獲得した一方,この映画の音楽を担当し同最優秀音楽賞を獲得したのも素晴らしい.
三上と桐子が酒場で過ごす3夜に,いずれもTVから八代亜紀の「舟唄」が流れ,そのシチュエーションがどれも異なるという場面が心に残る.特に最後の夜,目を合わすこともできない二人の心情は哀切で,まことに印象的.数十年ぶりに見たが色褪せない映画だ.
★★★★(★5個が満点).
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2025/07/01

独断的映画感想文:コンペティション

日記:2025年7月某日
映画「コンペティション」を見る.1_20250702121601
2021年.スペイン・アルゼンチン.監督:ガストン・ドゥプラット,マリアノ・コーン.
出演:ペネロペ・クルス(ローラ・クエバス),アントニオ・バンデラス(フェリックス・リベロ),オスカル・マルティネス(イバン・トレス),ホセ・ルイス・ゴメス(ウンベルト),イレーネ・エスコラル(ダイアナ),マノロ・ソロ(マティアス),ナゴレ・アランブル(ジュリア),ピラール・カストロ(ビオレッタ),コルド・オラバリ(ダリオ).3_20250702121601
80歳になった大富豪ウンベルトは,自分の名声を高めようと映画に出資することにした.大枚をかけ映画化権をわがものにしたノーベル賞作家の小説を,パルムドール受賞監督のローラに託す.主演は映画界の大立者フェリックスと,舞台俳優の大御所イバン.この3人が揃って本読みが始まるが,本読みの段階から厳しいダメ出しや奇想天外なエクササイズを強要するローラと,奔放なプレーボーイであるフェリックス,理論家で教育者でもあるイバンの息は全く噛み合わない.制作現場には困惑と混乱が広がるが….4_20250702121601
映画はほぼこの3人の会話劇と云っても良いが,ローラの飛んでる場面設定や両俳優のそれぞれの演技が面白くて全く退屈しない.両俳優が主導権を得るために或いは相手を貶めるために,とんでもない行動に出たり嘘をついたりする展開も可笑しい.映画にはいろいろな伏線があり,それらの思いがけない回収のしかたも意表を突かれる.2_20250702121601
スペイン映画らしいおしゃれな建物やインテリア,原色鮮やかな家具や絵画をあしらった映像も美しく,ベートーベンやショパン,サティ,更にキーズ・ジャレット等を用いた映画音楽も素敵だ.本作はシニカル・コメディと称しているがその通り,結局はコメディなので気楽に最後まで見ていられるが,それぞれの場面は充分にスリリングで魅力的.見て損はなし.5_20250702121601
★★★☆(★5個が満点).
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