独断的映画感想文:西部戦線異状なし
日記:2025年8月某日
1930年版の映画「西部戦線異状なし」を見る.
1930年.監督:ルイス・マイルストン.
出演者:ポール(リュー・エアーズ),カチンスキー(ルイス・ウォルハイム),ヒンメルストス(ジョン・レイ),カントレック(アーノルド・ルーシー),フランツ(ベン・アレクサンダー),アルバート(ウィリアム・ベイクウェル).音楽:デヴィッド・ブロークマン.
第1次大戦のさなか,ドイツ軍の行進に沸き返る市民たち.窓の外にその光景が広がる中,高校教師のカントレックは祖国のために戦う名誉と栄光を叫んでポール達学生を煽り立て,ついに学生たちは軍に志願することに決し,教室を出て外の行進に合流していく.兵営では,つい最近まで町の郵便配達だったヒンメルストスが,予備役を招集された下士官として,新兵たちに猛烈な訓練を強いる.やがて前線に配属されたポールらは,古参兵のカチンスキ―等に戦場で生き延びる方法を教えられながら,泥沼の塹壕戦に投入されてゆく….
原作は大戦後の1928年に30歳のレマルクによって書かれた小説.ろくな食料もなく砲撃に怯えながら塹壕に立て籠もる日々.神経を病んでゆく兵や,やがて双方の突撃により次々倒れてゆく兵,凄惨な白兵戦の様子も描かれる.
負傷し野戦病院から幸運にも復帰できたポールは,休暇を得て故郷の街に戻り,家族との再会を果たす.母校を訪れると,相変わらず更に年下の学生たちを煽り立てているカントレック.後輩に何か喋ってほしいと云われたポールが,命を大切にするようにと話すと,後輩たちからは臆病者と罵声を浴びる始末.父親と酒場に行けば,父親の同僚たちからはもっと頑張ってパリを制圧しろと発破をかけられる.前線の状況からドイツの劣勢を感じていたポールはいたたまれず,休暇を切り上げ前線に戻る….
大戦のわずか10年後にもかかわらず,それまで人類が経験したことのなかったこの凄惨な総力戦をリアルに描き切り,現代にいたる戦争映画の基本形を示したこの作品は,驚嘆に値する.窓を通して屋内と屋外の状況を俯瞰的に描くカメラワークが随所に見られ,これも魅力的.特に主義主張を描くことはない映画だが,次々に倒れて行く兵士たちの描写が,事実を持って戦争の無残さ愚かしさを語っている.
ラストシーンで行進していく兵たち,ポールをはじめとして死んでいった兵たちが,一人一人カメラを振り返ってまた歩み去ってゆく.その映像に重ねて,見渡す限りに林立する無数の白い十字の墓標.忘れられない映像だ.
★★★★☆(★5個が満点).
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