独断的映画感想文:斬る(1962)
日記:2026年2月某日
映画「斬る」を見る.
1962年.日本.監督:三隅研次.脚色:新藤兼人.原作:柴田錬三郎.
出演:市川雷蔵(高倉信吾),藤村志保(山口藤子),渚まゆみ(高倉芳尾),万里昌代(田所佐代),成田純一郎(田所主水),丹羽又三郎(千葉栄次郎),友田輝(庄司嘉兵衛),柳永二郎(松平大炊頭),天知茂(多田草司).
映画の冒頭は,侍女藤子による飯田藩主愛妾殺しの場.飯田藩主愛妾は政治に介入をし,城代家老の密命で藤子が愛妾を刺殺したのだった.藤子は処刑されるが,一人の赤子が小諸藩主牧野遠江守に届けられる.牧野遠江守はその子を股肱の家臣・高倉信右衛門に預けわが子として育てるよう命じる.その子高倉信吾は成人し,父と藩主の許しを得て3年間の武者修行に出る.
3年後信吾は無事帰参し,藩主の命で水戸の剣客庄司嘉兵衛と立ち会い,三弦の構えという秘剣で勝利した.しかし嘉兵衛に御前試合で敗れた隣家の池辺父子は,これを妬んで高倉家を襲い,高倉信右衛門と妹・芳尾を斬殺する.信吾は二人を追って討ち果たすが,そのまま脱藩して浪人となった.牧野遠江守はこれを憐れみ,新悟を追わないよう家臣に命じる….
ここまでが映画の前半,数奇な星のもとに生まれた信吾の数奇な半生を描く物語.柴田錬三郎の原作に拠るが,設定はかなり複雑で何もこうでなくってもという気がする.しかしこの映画の魅力は何といっても市川雷蔵.出生直後に実の母を実の父に処刑され,最愛の義妹と養父を突然斬殺されるという運命にもかかわらず,藩主と養父のおかげで爽やかな青年剣士に育った信吾,しかし彼を襲った運命は余りに苛酷なものだった.
信吾を演じる雷蔵の,爽やかな剣士でありながら寄る辺ない身でもあるそのありようが,印象的であり共感もできる.また,いかに信吾が天下無双の剣士であっても,歴史の大乱の中に飲みこまれざるを得ない映画の終盤も印象的.市川雷蔵という得難い俳優の素晴らしさを,改めて認識する映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点).
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