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2026年6月に作成された記事

2026/06/30

独断的映画感想文:ルノワール

日記:2026年6月30日
映画「ルノワール」を見る.1_20260703141601
2025年.日本=フランス=シンガポール=フィリピン.監督・脚本:早川千絵.
出演:鈴木唯(沖田フキ),石田ひかり(沖田詩子),中島歩(御前崎透),河合優実(北久里子),坂東龍汰(濱野薫),リリー・フランキー(沖田圭司).2_20260703141601
映画の冒頭,世界中の子供が泣いている映像が次々に現れるビデオを見ているフキ.見終わるとそのビデオを紙袋に入れて,マンションのゴミ捨て場に置きに行く.その時黒いシャツを着た男に声を掛けられるが,躱して部屋に逃げ帰る.ところがその夜,フキは部屋で黒いシャツの男に襲われ,殺されてしまう.それを知らせるニュース映像,葬式の両親の沈痛な面持ち.と思ったら教室で作文を読んでいる小5のフキ,「夢で良かったです.終わり」と読み終えて若干得意げな顔をする….4_20260703141601
フキは勝気でしっかりした女の子,作文も得意だが内容は若干夢見がちである.今は自身の超能力の開発に夢中だ.父親は会社員だが末期がんで入退院を繰り返している.母親も会社員で部下も持っているが,最近部下にパワハラを申し立てられ,研修を受けさせられている.家でひとり留守番をすることの多いフキ,病院に行って父親と遊んだり,英会話で一緒の子の家に行ったり,マンションで出会った北久理子の家に行って彼女を催眠術にかけたり(彼女は最近夫を亡くした.その夫は世界中の子供が泣いている映像が次々に現れるビデオを見ていた,と久理子は言う),家に来た伝言ダイヤルのチラシの指示に従って自称大学生と電話で会話を交わしたりする.5_20260703141601
でも世界はフキの目にどう映っているのだろう.父親は怪しげな気功療法のサークルに大枚を払って参加している.母親は研修先の講師に恋心を抱いて,その知り合いがやっているという怪しげな健康食品を大量買いする.英会話の子の家の父親は浮気をしているようだ.「大学生」はフキを誘い出して自宅に連れ込んだりする.それらの大人の事情や葛藤を,フキは透明な目で観察し,また夢に見たりする.そういうフキの目を通したフキと周辺の人々のひと夏の物語.3_20260703141601
主演の鈴木唯のきっぱりした演技が印象的だ.両親を演じる石田ひかり,リリー・フランキーもリアルな芝居.時々さしはさまれるフキの夢(妄想?)と思しき画像にも翻弄されながら(時々どのシーンが夢なのか現実なのか判らなくなる時もあり),日めくりのようにフキの日々を追っていく展開に引き込まれてゆく.フキが思春期ではなくその手前の少女だというところが,この映画のポイントであり,映画が深刻にならない境界線なのだろう.最後まで面白く見た.
★★★★(★5個が満点).

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2026/06/13

独断的映画感想文:夏の砂の上

日記:2026年6月某日
映画「夏の砂の上」を見る.1_20260619152801
日本.2025年.監督・脚本:玉田真也.
出演:オダギリジョー(小浦治),高石あかり(優子),松たか子(小浦恵子),森山直太朗(陣野),高橋文哉(立山),篠原ゆき子(陣野の妻),満島ひかり(阿佐子),光石研(持田).3_20260619152801
猛暑続きで断水にまで至っている夏の長崎,小浦治のもとに妹・阿佐子が17歳の娘・優子を連れてやってくる.博多で男が出した金でスナックを開くため,しばらく優子を預かってくれというのだ.治があっけにとられるうちに強引に優子を置いて去ってゆく阿佐子,突然治と優子との二人の生活が始まる.2_20260619152801
治はかって幼い息子を事故で亡くし,以来無気力な日々を送っている.不況で勤めていた造船所は倒産した.妻・恵子は治を見限り,治の若い同僚・陣野と暮らしている.治は溶接工にこだわっているが,治の年齢では容易に仕事を見つけることはできない.優子は高校へは行かずスーパーでアルバイトを始めるが,そこの先輩アルバイト・立山が声をかけてくる….
時代の波に翻弄され周囲の人たちに置いてきぼりを喰っている治と,親に放任され人にも仕事にも関心を持たない優子との,ひと夏の物語.じりじり照り付ける太陽,転職後の過労で命を落とすかっての同僚,若い陣野は他県の造船所に職が決まり恵子は彼についてゆくという.その中で治と優子は徐々に心を通い合わせてゆく….4_20260619152801
松たか子,満島ひかり,光石研が出ているがいずれも脇役(それぞれ存在感はあるけれど).この映画はオダギリジョーと高石あかりの映画だ.特に高石あかりが面白い.無表情だった優子が一転,顔をくしゃくしゃにして治と笑い興じる土砂降りのシーンが印象的.5_20260619152801
物語は特にハッピーエンドという訳ではない.治は離婚届に判を押し恵子は去り,優子は突然帰ってきて今度はカナダに行くと言う阿佐子に連れられ無表情のまま去ってゆく.しかし優子と治は何かが変わった様だ.別れ際に優子にもらった帽子を頭に載せ,灼熱の坂道をぶらぶら歩いてゆく治のラストシーンが心に残る.映画らしい映画.
★★★☆(★5個が満点).

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2026/06/03

独断的映画感想文:アイム・スティル・ヒア

日記:2026年6月某日
映画「アイム・スティル・ヒア」を見る.1_20260611184801
2024年.監督:ウォルター・サレス.
出演:フェルナンダ・トーレス(エウニセ・パイヴァ),フェルナンダ・モンテネグロ(エウニセ・パイヴァ(老年期)),セルトン・メロ(ルーベンス・パイヴァ),ギリェルミ・シルヴェイラ(マルセロ・パイヴァ),アントニオ・サボイア(マルセロ・パイヴァ(成人期)),ヴァレンティナ・エルサージ(ヴェローカ・パイヴァ),マリア・マノエラ(ヴェローカ・パイヴァ(中年期)),ルイーザ・コゾヴスキ(エリアナ・パイヴァ),マルジョリー・エスチアーノ(エリアナ・パイヴァ(中年期)),バルバラ・ルス(ナル・パイヴァ),ガブリエラ・カルネイロ・ダ・クーニャ(ナル・パイヴァ(中年期)),コーラ・モーラ(バビウ・パイヴァ),オリヴィア・トーレス(バビウ・パイヴァ(成人期)).3_20260611184801
ルーベンス・パイヴァはブラジルの元国会議員,1964年のクーデター時に国会議員を罷免されて以降は,土木建築家として5人の子どもと妻エウニセとともに穏やかに暮らしている.左派によるスイス大使誘拐事件に対し軍事政権は急進化し,友人2名はロンドンに亡命,ルーベンスは長女ヴェラを留学名義で彼らに同行させる.
この年の1月,ルーベンスの自宅を軍の要員が訪れ,供述を求めて彼を連れ去る.そのままルーベンスの行方は分からなくなる.エウニセは夫の人身保護を申請するが,ある夜エウニセと15歳の次女エリアナが軍の要員に連行される.そのままエウニセは12日間,エリアナは24時間拘束され尋問を受けた.釈放後エウニセはルーベンスの消息を求め奔走するが,軍当局は公式の確認を拒否し続けた….4_20260611184801
1971年リオデジャネイロで発生した事実に基づく映画,原作は長男マルセロ・パイヴァの回想録.事件後,自宅を売り払ってサンパウロに移り,5人の子どもを育てながら大学に戻って弁護士となり,ルーベンスの行方を追究し続けるエウニセの不屈の戦いを描く.2_20260611184801
エウニセが,一人一人の子どもたちと向き合い,それぞれを愛情深く育てながら,時には叱咤し時にはともに涙を流すその描写が,まことに感銘的だ.ロンドンでルーベンスの死亡説が報道され,それを手紙でヴェラが知らせてくる.子供たちの前でその手紙を読みながら,その部分だけ飛ばして読むエウニセとそれに気づいたエリアナのシーンが印象に残る.25年後,軍政終了後10年以上たって国家はルーベンスの死亡を正式に認めた(ただし遺骸は行方不明のまま).また関与した5名の要員も特定されたが,彼らは訴追されなかった.5_20260611184801
この映画はブラジルで熱狂的な支持を得,また2024年のアカデミー賞国際長編映画賞を獲得した.エウニセを演じたフェルナンダ・トーレスの存在感と緊張に満ちた演技が素晴らしい.映画は2014年,既に認知症の進んだエウニセを家族が囲み,誕生日を祝うシーンで終了する.TVでルーベンスの事件の回顧が放送され,一瞬目を見張って画面を注目する老いたエウニセは,フェルナンダ・トーレスの実母でこのとき94歳の大女優:フェルナンダ・モンテネグロが演じている.蛇足ながら,この監督の映画は20年以上前に見た「モーターサイクル・ダイアリーズ」以来だ.監督の健在と活躍に拍手!
★★★★☆(★5個が満点)

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2026/06/02

独断的映画感想文:アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師

日記:2026年6月某日
映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」を見る.1_20260605145701
2024年.監督:上田慎一郎.
出演:内野聖陽(熊沢二郎),岡田将生(氷室マコト),川栄李奈(望月さくら),森川葵(白石美来),後藤剛範(村井竜也),上川周作(丸健太郎),鈴木聖奈(五十嵐薫),真矢ミキ(五十嵐ルリ子),皆川猿時(八木晋平),神野三鈴(酒井恵美子),吹越満(安西元義),小澤征悦(橘大和).2_20260605145701
映画の冒頭,脱税容疑の橘のパーティーに乗り込み対決する税務署員のさくらと熊沢,しかしその面前でわざと転んだ橘は,暴行で二人を訴えると宣言,上司の安西の指示で熊沢は橘に謝罪をすることになり,屈辱的な仕打ちを受ける.5_20260605145701
一方刑務所を出所した詐欺師マコトは早速詐欺の仕事に精を出し,中古車の架空販売で熊沢をひっかけ,80万円を騙し取る.熊沢の親友の刑事・八木の尽力でマコトを押さえた熊沢,しかしマコトは意外な申し出をする.自分とチームを組んで橘から大金を詐取できたら,自分を見逃してくれというのだ.熊沢は悩んだ末,マコトと協力して橘と対決することにするが….4_20260605145701
熊沢にはかって,同期だった税務署員が橘を告発したものの,罠にはめられ汚名を着せられ馘になり,自殺したという苦い過去があった.実直な税務署員である熊沢はマコトとその仲間とチームを組み,橘をひっかけるための準備に没頭する.準備段階は無事通過し,いよいよ不動産詐欺の本番当日を迎えるが,安西が熊沢の不審な動きを橘に通報したことで計画はバレバレになり,橘の部下・神野が通報してマコトらは急行した警察に全員逮捕される….3_20260605145701
さてこの状況からどうエンディングに持っていくかだが,映画はその大逆転を見事にやってのける.その点でエンタテインメントとしてはきっちり合格点.内野聖陽,小澤征悦の好演が期待通りだが,皆川猿時,神野三鈴らのわき役陣も良い味で素敵だった.結局,こういう映画ではプロローグであろうがエピローグであろうが,油断してはいけないと云うことを,改めて学習した次第,面白かった.
★★★★(★5個が満点).

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