独断的映画感想文:アイム・スティル・ヒア
日記:2026年6月某日
映画「アイム・スティル・ヒア」を見る.
2024年.監督:ウォルター・サレス.
出演:フェルナンダ・トーレス(エウニセ・パイヴァ),フェルナンダ・モンテネグロ(エウニセ・パイヴァ(老年期)),セルトン・メロ(ルーベンス・パイヴァ),ギリェルミ・シルヴェイラ(マルセロ・パイヴァ),アントニオ・サボイア(マルセロ・パイヴァ(成人期)),ヴァレンティナ・エルサージ(ヴェローカ・パイヴァ),マリア・マノエラ(ヴェローカ・パイヴァ(中年期)),ルイーザ・コゾヴスキ(エリアナ・パイヴァ),マルジョリー・エスチアーノ(エリアナ・パイヴァ(中年期)),バルバラ・ルス(ナル・パイヴァ),ガブリエラ・カルネイロ・ダ・クーニャ(ナル・パイヴァ(中年期)),コーラ・モーラ(バビウ・パイヴァ),オリヴィア・トーレス(バビウ・パイヴァ(成人期)).
ルーベンス・パイヴァはブラジルの元国会議員,1964年のクーデター時に国会議員を罷免されて以降は,土木建築家として5人の子どもと妻エウニセとともに穏やかに暮らしている.左派によるスイス大使誘拐事件に対し軍事政権は急進化し,友人2名はロンドンに亡命,ルーベンスは長女ヴェラを留学名義で彼らに同行させる.
この年の1月,ルーベンスの自宅を軍の要員が訪れ,供述を求めて彼を連れ去る.そのままルーベンスの行方は分からなくなる.エウニセは夫の人身保護を申請するが,ある夜エウニセと15歳の次女エリアナが軍の要員に連行される.そのままエウニセは12日間,エリアナは24時間拘束され尋問を受けた.釈放後エウニセはルーベンスの消息を求め奔走するが,軍当局は公式の確認を拒否し続けた….
1971年リオデジャネイロで発生した事実に基づく映画,原作は長男マルセロ・パイヴァの回想録.事件後,自宅を売り払ってサンパウロに移り,5人の子どもを育てながら大学に戻って弁護士となり,ルーベンスの行方を追究し続けるエウニセの不屈の戦いを描く.
エウニセが,一人一人の子どもたちと向き合い,それぞれを愛情深く育てながら,時には叱咤し時にはともに涙を流すその描写が,まことに感銘的だ.ロンドンでルーベンスの死亡説が報道され,それを手紙でヴェラが知らせてくる.子供たちの前でその手紙を読みながら,その部分だけ飛ばして読むエウニセとそれに気づいたエリアナのシーンが印象に残る.25年後,軍政終了後10年以上たって国家はルーベンスの死亡を正式に認めた(ただし遺骸は行方不明のまま).また関与した5名の要員も特定されたが,彼らは訴追されなかった.
この映画はブラジルで熱狂的な支持を得,また2024年のアカデミー賞国際長編映画賞を獲得した.エウニセを演じたフェルナンダ・トーレスの存在感と緊張に満ちた演技が素晴らしい.映画は2014年,既に認知症の進んだエウニセを家族が囲み,誕生日を祝うシーンで終了する.TVでルーベンスの事件の回顧が放送され,一瞬目を見張って画面を注目する老いたエウニセは,フェルナンダ・トーレスの実母でこのとき94歳の大女優:フェルナンダ・モンテネグロが演じている.蛇足ながら,この監督の映画は20年以上前に見た「モーターサイクル・ダイアリーズ」以来だ.監督の健在と活躍に拍手!
★★★★☆(★5個が満点)


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