独断的映画感想文:木挽町のあだ討ち
日記:2026年9月某日
映画「木挽町のあだ討ち」を見る.
2026年.監督・脚本:源孝志.原作:永井紗耶子.出演:柄本佑(加瀬総一郎),渡辺謙(篠田金治),長尾謙杜(伊納菊之助),北村一輝(作兵衛),瀬戸康史(一八),滝藤賢一(相良与三郎),山口馬木也(伊納清左衛門),愛希れいか(お三津),イモトアヤコ(お与根),野村周平(遠山安房守),高橋和也(芳澤ほたる),正名僕蔵(久蔵),石橋蓮司(滝川主馬),沢口靖子(伊納たえ).
ベストセラーの小説を原作とする映画だが,小説とは若干設定が違い,また歌舞伎で上演された舞台とも違う独自の物語.
1810年1月の晦日,木挽町森田座で仮名手本忠臣蔵の上演が終了した直後,森田座隣の空き地で仇討ちがあった.劇場から出てきた数百の観客の前で,遠山藩士・伊納菊之助が父の仇・作兵衛を打ち取り首級を上げたのだ.菊之助は首を番所に届け出,仇討ち成就を認められると故郷に帰って行った.
1年半ほどして加瀬総一郎という浪人が森田座を訪れる.加瀬は菊之助の許嫁の兄であると云い,菊之助の仇討ちの状況を根掘り葉掘り尋ねまわるのであった.当時菊之助に協力した座付き作者の篠田金治(実は菊之助の母のもと婚約者),木戸芸者の一八,座付き殺陣指導者の相良与三郎,衣装係の芳澤ほたる,小道具担当の久蔵らが,菊之助が森田座に転げ込んで以来本懐を遂げるまでの暮らしを,こもごも語るが….
加瀬は遠山藩士だった時,菊之助の父・伊納清左衛門の部下だった.清左衛門・作兵衛と加瀬の関わった,菊之助の知らないお家の大事があり,加瀬はそのつながりで作兵衛の所持していた,あるものを探しに来たのだ.一方,菊之助は加瀬の知らない事情で森田座の一同と作兵衛に対処していた.両者の抱えた秘密が明らかになる時,物語は大団円を迎える….
この物語がそもそも面白いのだが,演じる俳優たちが腕利きぞろいで素敵.渡辺謙,滝藤賢一,山口馬木也,沢口靖子らがさすがの出来だ.菊之助の長尾謙杜が,美しく健気な少年を演じて素晴らしかった.色彩的にも,森田座から出てくる色とりどりの傘の俯瞰,雪上で赤い振袖を脱ぎ捨て白装束の菊之助が現れるシーン,夏の竹林で加瀬と相良が対峙するシーン等,映画ならではの美しさが印象的だった.森田座の楽屋風景も歌舞伎ファンには面白く,見て損のない映画.
★★★★(★5個が満点).


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