2017/11/14

独断的映画感想文:太陽のめざめ

日記:2017年11月某日
映画「太陽のめざめ」を見る.1_4
2015年.監督:エマニュエル・ベルコ.
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ(判事),ロッド・パラド(フェランド・マロニー),ブノワ・マジメル(ヤン),サラ・フォレスティエ(マロニーの母).2_4
映画の冒頭は判事の部屋,6歳のマロニーの悪童ぶりに、呼び出された母親が判事に逆ギレして部屋を飛び出す.
それから10年後,マロニーは学校にも行かず,出来ることは車泥棒のみ,再び判事の前に出頭する.父や祖父は名うてのワル,マロニーを育てた母親は育児より男と酒と薬にふける女性.3_4
マロニーは誰も信頼せず全ての大人に敵意をむき出しにし,只母親からは自立できていない荒んだ若者となっていた.判事はマロニーに教育係ヤンをつけて矯正施設に送るが….
マロニーを何とか自立させようとする判事や教育係の努力は,並大抵ではない.
マロニーは本性は善人であり心優しい男の子だ.しかしひとを信じず自分を抑えることが出来ず,自分が傷つく前にひとを傷つけようとする.周りの大人の努力に応じて改善の兆しが見られては,感情の爆発で全てを無に帰してしまい,遂には刑務所に送られるマロニー.
映画の大半はそのような1歩前進2歩後退の積み重ねだ.自分ではどうしようもなく自らを追い詰めていくマロニーに,涙を禁じ得ない.4_4
映画の最後にしかし彼は変容を見せる.彼を変えたのは,彼を指導し愛を与える人々だけでなく,彼に頼り,彼に愛を求め,彼を必要とする人々だった.
俳優達がいずれも好演,特にベテラン:カトリーヌ・ドヌーブと新星:ロッド・パラドが素晴らしい.見応えのある映画.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:われらが背きし者

日記:2017年11月某日
映画「われらが背きし者」を見る.1_3
2016年.監督:スザンナ・ホワイト.
出演:ユアン・マクレガー(ペリー),ステラン・スカルスガルド(ディマ),ダミアン・ルイス(ヘクター),ナオミ・ハリス(ゲイル),ジェレミー・ノーサム(オーブリー).2_3
ペリーは詩を講義する大学教授,妻のゲイルは弁護士で稼ぎが良い.マラケシュで休暇中の二人はレストランに行くが,途中で仕事の電話が入ったと言ってゲイルは帰ってしまう.
残されたペリーはレストランに居た男ディマと打ち解け,彼に誘われてロシア人のパーティーに行き,更に翌日彼の家族とテニスをする.3_3
ペリーを信用したディマは,ロシア・マフィアのマネーロンダリングのための銀行が近々設立されること,設立後は用済みとなったディマは家族もろとも抹殺されると考えられることを話し,MI6に情報提供し家族を保護して貰うための仲介をペリーに依頼したいと言う.
ペリーはやむなく引き受け,情報ファイルをMI6のヘクターに渡す仲介を引き受ける.ヘクターは情報の受け渡しには,ディマが信用するペリーの立ち会いが不可欠と言い,ペリーとゲイルは不本意ながらMI6とロシア・マフィアの攻防に巻き込まれていくが….4_3
ジョン・ル・カレ原作のサスペンス映画.
ヘクターが使うイギリス官僚特有の二枚舌のお陰で,ペリーとゲイルはディマの家族を守る命がけの闘いに参加する羽目になる.
ロシア・マフィア番頭格のディマが,悪人とは言え豪放磊落で魅力的な人物,ペリーが惚れ込むのももっともと観客も受け止めるだろう.終盤,フランスアルプスの山間で空中爆発するヘリコプターのシーンは,悲劇的だが誠に美しい.5_3
映画にはあちこちに伏線やどんでん返しがちりばめられ,最後まで一気に見ることが出来る.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ダゲレオタイプの女

日記:2017年11月某日
映画「ダゲレオタイプの女」を見る.1_2
2016年.監督:黒沢清.
出演:タハール・ラヒム(ジャン),コンスタンス・ルソー(マリー),オリヴィエ・グルメ(ステファン),マチュー・アマルリック(ヴァンサン),マリック・ジディ(トマ),ヴァレリ・シビラ(ドゥーニーズ),ジャック・コラール(ルイ).2_2
ホラー映画.黒沢監督以外のキャスト/スタッフは基本的にフランス人.
パリ郊外の邸宅でダゲレオタイプの写真工房を営むステファンは,気難しい芸術家.ジャンは助手として雇われ,娘マリーをモデルとする撮影を手伝う.3_2
等身大の銀版を直接露光して行う長時間撮影,マリーは60分を超える撮影のモデルを務めるが,一方で自身は別の人生を目指し植物園への就職活動を行っている.
ステファンの今は亡き妻も撮影モデルを務めていたが,ステファンとは確執があった様だ.邸宅は再開発地区にあったため,ジャンはステファンに移転を認めさせ,マリーとの新しい生活を得ようと夢見るのだが….4_2
黒澤映画らしい味と雰囲気に満ちた映画.映画での亡霊の考え方は日本的で,例えば亡霊と知らず女性とつき合っていると,男がやせ衰えていくのを自身は自覚しない,というのは西洋ではあまり見ないようだ.
ステファンと妻の関係は今ひとつ分かり難かったが,それ以外は特に思いがけないことは起こらず,ステファンの芸術家としての狂気と邸宅の状況から,起こるべき結末が起こったという気がする.5_2
ラストへの展開には納得.「消えた声が、その名を呼ぶ」で見たばかりのタハール・ラヒムが,透明感あるコンスタンス・ルソーと共に好演.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:イレブン・ミニッツ

日記:2017年11月某日(日)
映画「イレブン・ミニッツ」を見る.1
2015年.監督:イエジー・スコリモフスキ.
出演:リチャード・ドーマー(映画監督),パウリナ・ハプコ(アンナ),ヴォイチェフ・メツファルドフスキ(アンナの夫),アンジェイ・ヒラ(ホットドッグ屋の主人),ダヴィッド・オグロドニック(バイク便の男),アガタ・ブゼク(登山家(女)),ピョートル・グロヴァツキ(登山家(男)),ヤン・ノヴィツキ(画家),アンナ・マリア・ブチェク(医者),ウカシュ・シコラ(少年),イフィ・ウデ(犬を連れた女),マテウシュ・コシチュキェヴィチ(元ボーイフレンド),グラジナ・ブウェツカ=コルスカ(産気づいた女),ヤヌシュ・ハビョル(死んだ男).2
2014年11月7日17時からの11分間に発生した出来事を描く群像劇.
群像劇と言えば,複数の人々の行動を描いていき,それがある時点で一点に収斂してハッピーエンドになったり破滅になったりという結末を描くもの.本作もそのように進行する.3
映画監督とホテルで17時に面談する女優は,出かける前夫といちゃついている.夫は誰かと喧嘩したらしく左目にアザがある.
ムショから出てホテルの前でホットドッグ屋を始めている男,その息子はバイク便で働くがヤクの売人も兼ね,売った先の人妻と不倫もしている.
登山家の男は,アルバイトのホテルの外壁補修中の休憩時間を,窓から入れるホテルの一室で過ごすが,そこに登山家の女が来て共にポルノを見る.4
水彩画家の老人と質屋の強盗未遂犯の少年が,同じバスに乗り合わせてホテル前のバス停に来る.
救急隊は酔って暴れる男を排除して逆子を分娩しかけている女性を救助し,病院に向けホテル前を急行中だ.ここからラストシーンへ映画は一気に収斂していく….5
監督の視点には人間ドラマを俯瞰している神の視点がある様で,TV画面に突然浮かび箴言めいたことを言う男性や,空の片隅に現れている黒い点などが,それを暗示している.ひょっとしたら,この事件全体が神の気まぐれなのかも知れない,とも思わせる映画だ.映像と音響が凝っていて緊迫感を盛り上げていく.
★★★☆(★5個が満点)
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2017/11/13

独断的映画感想文:ブレードランナー 2049

日記:2017年11月某日
映画「ブレードランナー 2049」を見る.20491
2017年.監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ.音楽:ヨハン・ヨハンソン,ベンジャミン・ウォールフィッシュ,ハンス・ジマー.
出演:ライアン・ゴズリング(K),ハリソン・フォード(リック・デッカード),アナ・デ・アルマス(ジョイ),マッケンジー・デイヴィス(マリエット),シルヴィア・フークス(ラヴ),レニー・ジェームズ(ミスター・コットン),カルラ・ユーリ(アナ・ステリン),ロビン・ライト(ジョシ),ショーン・ヤング(レイチェル),デイヴ・バウティスタ(サッパー),ジャレッド・レトー(ニアンダー・ウォレス).
20492
荒廃した近未来の地球,労働力として人造人間レプリカントが製造された.しかし旧タイプのレプリカントは叛乱を起こし,製造元のタイレル社は倒産,旧型はブレードランナーと呼ばれる追跡者により処分される.
その後天才科学者ウォレスは合成食料の技術を確立,その労働力として新型レプリカントの製造を開始する.
ロサンゼルス警察の捜査官Kは新型レプリカント,旧型レプリカントのサッパーを処分した時,その農場の木の根元に不審な箱を発見する.箱からは出産時に死亡したと考えられる女性レプリカントの骨が出て来た.
レプリカントには生殖能力はないため,Kの上司ジョシはその事実の公表を禁じ,Kに証拠の破壊と生まれた子供の処分を命じる.20493
一方その事実を知ったウォレスは,新型レプリカントの生殖能力を完成するため,秘書の新型レプリカント・ラヴにKの追尾と子供の確保を命じる.Kは捜査の進展の中で,その子供は自分ではないかと考え始めるが….
レプリカントへの差別と荒涼とした地球を背景に,緊張感高く描かれるレプリカント出生の謎.商業主義の暴走の果てに,荒廃し貧困のはびこった近未来の都市の描写が圧倒的だ.
この映画にはレプリカントを始め人間ではないものが登場する.なかでも捜査官Kの恋人ジョイのエピソードが印象的だ.20494
ジョイはクラウド上のAI,Kの自宅の投影機でホログラムとして再生される.Kはサッパー事件の報償として得たボーナスで携帯端末を購入,ジョイは常にKと行動を共にできる様になる.Kが独自行動を取ることになった時ジョイはKと共に居ることを選び,自身の存在からKの居場所を知られるのを避けるため,クラウド上の自身のデータを抹消して全てを携帯端末にダウンロードする.携帯端末が破壊されればジョイは消失してしまうが,それで良いとジョイは言う.「人間の女性と同じになるだけだから」.このシーンも哀切だ.
かってのブレードランナー・デッカードの再登場も心に残る.彼と旧型レプリカントとの関係が,以後の世界の状況を左右することになるのだ.20495
終盤に向けての物語の展開はなかなかにスリリング.最終シーンの哀しさ,清冽さは心に残る.
監督は「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーヴ,彼と「メッセージ」でコンビを組んだヨハン・ヨハンソンをはじめとする音楽・音響の効果も素晴らしい.163分の長尺を一気に見た.見て損はなし.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:神様メール

日記:2017年10月某日
映画「神様メール」を見る.1
2015年.監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル.
出演:ブノワ・ポールヴールド(父(神様)),カトリーヌ・ドヌーヴ(マルティーヌ),フランソワ・ダミアン(フランソワ),ヨランド・モロー(母(女神)),ピリ・グロイン(娘(エア)),ローラ・ファーリンデン(オーレリー),セルジュ・ラヴィリエール(マルク),ディディエ・ドゥ・ネック(ジャン=クロード),ロマン・ゲラン(ウィリー),マルコ・ロレンツィーニ(ヴィクトール),ダヴィッド・ミュルジア(兄 イエス・キリスト).2
ブリュッセルのアパートの一室に住んでいるのは神,傲慢不遜な人物である.
コンピュータを駆使して全人類の運命を支配している.娘のエアはこの横暴な父親と無抵抗な母親に愛想が尽き,家出することにする.
父親が酔っ払って寝ている隙に書斎に侵入,PCを操作して全人類にその余命を通知するメールを送り脱出する.世界は大混乱に陥るが,エアは使徒を選び,その行状や希望を脱出後最初に会ったホームレス・ヴィクトールに新・新約聖書として筆記させる.
3
使徒は,幼少時の事故で左手が義手のオーレリー,鳥の群れの後を何処までも追いかける冒険家JC(ジャン=クロード),性的妄想者マルク,殺し屋のフランク,ゴリラと恋するマルティーヌ,病弱な少年ウィリーの6人.
エアの後を追ってきた父親が,脱出路から自室に戻れないでいるスキに,エアは自分の使える小さな奇跡を利用して,使徒を訪ね続けるが….4
ややブラックなコメディ・ファンタジー.PCを離れたら只のむかつくげす親父に過ぎない神が徹底的にからかわれる一方,それぞれ真摯に生きる使徒達を訪ねるエアの無垢なかわいさが何とも言えない魅力.
使徒の合計が6+12=18名になって急に元気の出た野球(1チーム9名)好きの母親が,掃除の時に引っこ抜いたPCのコンセントを戻し,再立ち上げの設定を好き勝手にいじくることで,地球がどうなるか.
ラストまでほのぼのと楽しい映画である.
★★★★(★5個が満点)
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2017/11/05

独断的映画感想文:エクス・マキナ

日記:2017年10月某日
映画「エクス・マキナ」を見る.1_2
2015年.監督:アレックス・ガーランド.
出演:ドーナル・グリーソン(ケイレブ),アリシア・ヴィカンダー(エヴァ),オスカー・アイザック(ネイサン),ソノヤ・ミズノ(キョウコ).2_2
IT会社に勤めるケイレブは社内抽選に当たって,社長ネイサンの住む山の中の別荘へ1週間の招待を受けることになる.ネイサンは検索エンジン:ブルーブックの開発者として知られる普段は姿を見ることすら出来ない人物だった.
別荘でケイレブは,ネイサンが開発した人工知能を持つアンドロイド:エヴァが,自意識を持つかどうかのテストに参加することになる.美貌のエヴァとの会話を続けるうちに,ケイレブはエヴァに恋心を抱く様になる一方,エヴァは停電で監視カメラが切れる瞬間を利用して「ネイサンは嘘つきだ」とケイレブに伝える….
世界から隔離された環境で繰り広げられる,ケイレブとネイサンとエヴァの会話によるドラマ.3_2
純粋で親切だが偏執的なケイレブと,悪意に満ちた創造神ネイサン,恐るべき知能と観察力を持ちながらどこかあどけなく世間知らずでもあるエヴァ,それぞれが交わす会話がスリリングだ.
構図としては,エヴァをテストするためにネイサンがケイレブを指揮しているかたちだが,結末ではその構図は完全にひっくり返る.その展開を楽しむ映画.
題名はラテン語で意味は「機械仕掛の神」とのこと.登場人物の名も聖書から取られている.寓意性のあるSF映画.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ダーク・プレイス

日記:2017年10月某日
映画「ダーク・プレイス」を見る.1
2015年.監督:ジル・パケ=ブランネール.
出演:シャーリーズ・セロン(リビー・デイ),ニコラス・ホルト(ライル),クロエ・グレース・モレッツ(若き日のディオンドラ),タイ・シェリダン(若き日のベン),スターリング・ジェリンズ(若き日のリビー),コリー・ストール(ベン・デイ),クリスティナ・ヘンドリックス(パティ・デイ).2
リビー・デイは28年前に発生した一家惨殺事件の生存者,母と姉2名が殺された.リビーの証言により兄ベンが殺人犯として有罪となり,現在も収監されている.
リビーはそれ以来,全米から寄せられた義援金で暮らしてきたが,それも尽きようとしている.金に困ったリビーは,「殺人クラブ」と名乗る団体のライルの依頼で,事件の概要を話すことになる.3
クラブのメンバーはベンの無実を証明しようとしている様だ.自分の記憶と証言は間違いなかったのか,リビーは事件以来初めてその記憶と向き合い,また関係者との面談を通じて事件の真相を探り始める….
この家に死を呼び込んだのは結局誰か,を巡る物語.1980年代のカンザス州の絶望的な農業不況と,悪魔崇拝の流行が,この事件の背景である.4
15歳だったベンを巡る結構複雑な人間関係が解き明かされていく過程は,なかなかにスリリング.一家破滅の要因を作ったDVでアル中の父親,この年齢の少女達の作り話等が事件に絡んでくる辺りも面白い.
ここまで無気力に生きてきたリビーが,一念発起して結局事件の真相に辿り着くのは,如何に当時の警察がでたらめな捜査だったとは言えにわかには受け容れ難いが,まあシャーリーズ・セロンの美貌に免じて良としましょう.
★★★(★5個が満点)
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2017/10/27

独断的映画感想文:神のゆらぎ

日記:2017年10月某日
映画「神のゆらぎ」を見る.1_2
2014年.監督:ポズ.
出演:グザヴィエ・ドラン(エティエンヌ),マリリン・キャストンゲ(ジュリー),ガブリエル・サブーラン(シモン),ジャン=ニコラ・ヴェロー(マキシム),アンヌ・ドルヴァル(エヴァリン),ロバン・オベール(マーティン).2_3
フランス語を話すカナダのとある街.
エティエンヌはエホバの証人の信者で白血病を病む身,婚約者の看護師ジュリーも同じく信者で,両名は信仰に基づき輸血による治療を拒否している.ある夜飛行機事故が起こり,病院に担ぎ込まれた唯一の生存者をジュリーは必死に看護する.
カジノでギャンブルにはまっているマーティンは,カジノのバーでバーテンのレイモンドにキューバのバカンスの楽しさを話す.マーティンはこの晩のうちに再度妻とキューバに出立する予定だが,アル中の妻エヴァリンは荷物を作りながら酒を飲み始める.4_2
レイモンドは地下駐車場で不倫相手のクローク係ルイーズと密会,キューバへの旅行を持ちかける.
ベネズェラから3年ぶりに帰国したシモンは,麻薬の運び屋で得た金を姪のカリーヌに渡そうと空港の乗客係である兄マキシムの家を訪れる….
群像劇であるが,群像を構成するそれぞれの人物がどの一点で交錯するのかは中盤まで判らない.
中心はエホバの証人の信者であるエティエンヌとジュリーのカップル.信仰を最後まで貫くのか,信仰を捨てて治療するのかが,神の存在をかけて鋭く問われる.5_2
布教のためルイーズの夫のもとを訪れたジュリーが,「神が全能であれば飛行機は落ちない」と言われ涙ぐむシーンが印象的.
緊張感高く映像も好ましいが,人間の思いがけぬ行動が他者の運命を変えていく過程を,神との関係で描いていく内容は,日本人としては共感しにくい.6
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:消えた声が、その名を呼ぶ

日記:2017年10月某日
映画「消えた声が、その名を呼ぶ」を見る.1
2014年.監督:ファティ・アキン.
出演:タハール・ラヒム(ナザレット・マヌギアン),シモン・アブカリアン(クリコル),マクラム・J・フーリ(オマル・ナスレディン),モーリッツ・ブライブトロイ(ピーター・エデルマン),トリーヌ・ディルホム(孤児院院長),アルシネ・カンジアン(ナカシアン夫人).2
1915年,第1次大戦中のオスマントルコ領マンデル.
アルメニア人の鍛冶職人ナザレットは,妻と双子の娘と共に貧しいながら幸せな暮らしを営んでいた.ところがある夜,突然憲兵隊に連行されたナザレットは,灼熱の砂漠での強制労働に処せられた.
翌年,従事していたアルメニア人全員が岩山に連行され,首を切られて処刑される.ナザレットを処刑した男アフメッドがためらったため,ナザレットは奇跡的に命を取り止めるが,声を失った.4
夜になって救いに来たアフメッドと共に逃避行を続けるナザレット,二人は脱走兵の一群に救われ,ナザレットは家族が送られたというラス・アルアインのキャンプに向かう.地獄の様なキャンプで出会った義姉は,家族は全て殺されたといって息絶える.3
ナザレットは石けん製造業者に拾われ,そこで働くうちに大戦の終結を迎える.或る日,チャプリンの映画会で出会った故郷の男は,彼に娘達の生存を伝えた….
トルコの過去の恥部を描いた作品だが,トルコを非難する映画ではない.監督の視線はこの虐殺事件を題材にしつつ,ナザレットの運命,彼と神の関係,娘とのドラマに注がれている.
アルメニア人はキリスト教徒だが,ナザレットは自身の過酷な運命に耐えかねて神を捨てる.ラス・アルアインのキャンプで瀕死の義姉は彼に自分を殺してくれと頼み,彼はそれを実行したのだが,この時点で彼は神を捨てたと考えられる.5
その後娘が生存していると判明しても,彼は神を許さない.娘に会うためには,如何なる悪事もためらわないナザレットを,観客は見るであろう.
ラストシーンで何も表明することなく去って行くナザレットは,逆にこの物語の結論を観客に求めているかの様だ.
人間の繰り返す,救いようのない悲惨を描くある種の寓話と言える映画.低く響き続ける音楽が印象的.
★★★★(★5個が満点)
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