2019/06/11

独断的映画感想文:誰もがそれを知っている

日記:2019年6月某日
ヒューマントラストシネマ有楽町で映画「誰もがそれを知っている」を見る.1_20
2018年.監督:アスガー・ファルハディ.
出演:ハビエル・バルデム(パコ),ペネロペ・クルス(ラウラ),リカルド・ダリン(アレハンドロ),エドゥアルド・フェルナンデス(フェルナンド),バルバラ・レニー(ベア),インマ・クエスタ(アナ),エルビラ・ミンゲス(マリアナ),ラモン・バレア(アントニオ),カルラ・カンプラ(イレーネ),サラ・サラモ(ロシオ).4_17
妹アナの結婚式に,アルゼンチンに住んでいる姉ラウラが娘・イレーネ,その弟・ディアゴと共にスペインの実家に帰ってくる.かっての恋人パコと再会するが,パコはラウラから買い取った土地を立派なワイン農場に育て上げ,美しい妻と共に暮らしている.
結婚式の晩,16歳のイレーネは奔放にはしゃぎ廻っていたが,急に眠くなったと言って寝室で休むことに.その後雨の中停電が起こるが,パコが自家発電装置を担ぎ込んで披露宴は無事終わる.ところがそのさなかにイレーネは寝室から忽然と姿を消す.更にラウラの携帯に犯人からの脅迫が届き,ベッドには近年の少女誘拐殺人事件の切り抜きが置かれていた.6_8
ラウラは警察に通報する決断がつかず,アルゼンチンから急遽夫・アレハンドロがやって来る.犯人からは続いて巨額の身代金の要求が届く.パコは時間稼ぎのため,自身の農場を売る商談を共同経営者に持ちかけるが,ラウラは現実にパコ以外に金を出せる者はいない状況に,ある決意をする….5_13  
思いがけない誘拐事件に直面した家族の状況.
父アントニオは博打で失敗し,土地をかっての使用人に売る羽目になったらしい.パコも元来はアントニオの使用人の息子だった.兄フェルナンドは店を開いているが,ローンを抱えて苦しい家計.アレハンドロは実業家と称しているが,この2年間失業している.何故同じ部屋にいた幼児ディアゴではなく,イレーネが誘拐されたのか.映画はこの様な事情を次々に明らかにし,物語は重苦しい緊張感の中進行する.3_17  
俳優はいずれも良いが,ハビエル・バルデム,ペネロペ・クルス,リカルド・ダリンの3名が圧倒的な存在感.ハビエル・バルデムは思わぬ運命に直面した男の苦悩を淡々と演じる.映画の題名は,登場人物の最大の秘密を,当事者以外のみんなが知っているという皮肉な状況を指している.ラストシーンで,かすかに微笑んで横たわるパコのシーンが印象的だ.
映像も美しい重厚なドラマ,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2019/06/07

独断的映画感想文:ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

日記:2019年6月某日
映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」を見る.1_19
2017年.監督:ジョー・ライト.
出演:ゲイリー・オールドマン(ウィンストン・チャーチル),クリスティン・スコット・トーマス(クレメンティーン・チャーチル),リリー・ジェームズ(エリザベス・レイトン),スティーヴン・ディレイン(ハリファックス子爵),ロナルド・ピックアップ(ネヴィル・チェンバレン),ベン・メンデルソーン(国王ジョージ6世).3_16
多少ネタバレがあります,注意.
1940年5月10日,ナチスドイツに対する北欧での闘いで劣勢となり支持を失った英首相・チェンバレンは,後任の首相にチャーチルを指名する.チャーチルは労働党も参加する5名からなる戦時内閣を組織,しかし保守党から参加のチェンバレン,ハリファクスはいずれも,対独徹底抗戦を主張するチャーチルに反対していた.
この日ドイツはオランダ・ベルギーに侵攻,ついでフランス国境を突破する.チャーチルは国会とラジオ演説で,対仏支援を行い勝利を目指すことを強調するが,日を追って戦況は悪化,フランス派遣の英国部隊40万はダンケルクに追い詰められる.チャーチルはダンケルクを支援するため,カレーの守備隊4000人に徹底抗戦を命令すると同時に,ダンケルクの将兵の撤退を模索するが,ドイツ制空権下の救出作戦の目途は立たない.2_18
ここに至ってドイツの英国侵攻の怖れが強まり,国王のカナダ亡命が計画される事態となる.ハリファクスは対独和平交渉の採用をチャーチルに迫り,遂にチャーチルはハリファクスに交渉仲介国イタリアとの接触を認めるが….4_16  
1940年5月9日から5月27日に至る,チャーチルの活動を追った伝記ドラマ.英国とチャーチルがぎりぎりまで追い詰められたこの時(原題はDARKEST HOUR),チャーチルが如何に勇気を奮い起こし自信を回復することができたか,を記述する.
チャーチルを演じたゲイリー・オールドマンが素晴らしい.辻一弘がアカデミー賞を獲得した特殊メイクで全く相貌の変わったオールドマンが,チャーチルの変転する心理を演じて見応えあり.またチャーチルを叱咤激励する夫人・クレメンティンを演じたクリスティン・スコット・トーマスも存在感があって素敵.5_12
チャーチルの矛盾に満ちた人物像は面白いが,彼が地下鉄で人々と意見を交わすという筋書は,いささか嘘くさかった.但し,戦時内閣で孤立したチャーチルが,閣外閣僚と議会を相手に熱弁をふるい圧倒的支持を獲得するラストシーンは迫力あり.見て損はない.
★★★★(★5個が満点)
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2019/06/04

独断的映画感想文:主戦場

日記:2019年6月某日
渋谷のシアター・イメージフォーラムで映画「主戦場」を見る.1_18

2018年.監督・製作・脚本・撮影・編集・ナレーション:ミキ・デザキ.製作:モモコ・ハタ.音楽:マサタカ・オダカ.
ユーチューバー出身の監督が,日韓のみならずアメリカをも巻き込んで進む慰安婦問題の論争を描く,長編ドキュメンタリー.登場人物は日本の右派・左派(こういう言い方は好きではないが,この映画の扱いに沿って便宜的にこう呼ぶ)の各論客・運動家・元日本軍兵士,韓国の元慰安婦の娘・支援者・学者,アメリカの元慰安婦支援者・その反対派等々.
こういう人々へのインタビューと街頭インタビューやニュース映像,新聞や公文書のコピーが軽快なテンポで次々に画面に映し出される.映画は監督が当初抱いた疑問に沿って,元在特会の山本優美子氏のインタビューからスタート,その主張の展開や反対派側からの反論という具合に,次はそこが知りたいというポイントが小気味良く映像として現れる.
監督は最終的にはこの問題が,安倍政権とその背後にある日本会議に関わることを示唆して映画を終え,自身の懸念するところを明らかにする.そういう意味ではこの映画は「公平な立場」という立ち位置にないことはあきらかだ.3_15

この映画については,5月30日に右派論客7名(櫻井よしこ氏,ケント・ギルバート氏,トニー・マラーノ氏,加瀬英明氏,山本優美子氏,藤岡信勝氏,藤木俊一氏)が抗議声明を出すといった「場外乱闘」の状況が発生しているが,右派論客の主張のみが揶揄されたり切り取りされたりといった印象は基本的にない.4_15
慰安婦問題は重大な問題であると同時に,極めて政治的であり,感情を伴うものであり,倫理と差別とに関わる問題である.そのことはこの映画のインタビューを通じ自ずから明らかになる.この映画の魅力は,そういう力を持ったドキュメントであることに尽きるであろう.単調だが力強い音楽も素晴らしい.ドキュメント映画として充分な見応えあり. 
★★★★(★5個が満点).
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2019/05/25

独断的映画感想文:のみとり侍

日記:2019年5月某日
映画「のみとり侍」を見る.1_17
2018年.監督:鶴橋康夫.
出演:阿部寛(小林寛之進),寺島しのぶ(おみね/千鶴),豊川悦司(清兵衛),斎藤工(佐伯友之介),前田敦子(おちえ),風間杜夫(甚兵衛),大竹しのぶ(お鈴),松重豊(牧野備前守忠精),桂文枝(田沼意次).2_16
徳川家治の治世,田沼意次が老中を務めた時代.長岡藩の勘定方吟味役・寛之進は,和歌の会で藩主・牧野備前守忠精の作が良寛の和歌とそっくりと指摘したため逆鱗に触れ,禄を失いのみとり侍に左遷されてしまう.
止むなく猫の蚤とりの親方・甚兵衛のもとに転げ込むが,曰くありげな寛之進を仇討ちのため身をやつす浪人と勝手に勘違いした甚兵衛夫妻は,のみとりの初歩から手ほどきし長屋の世話もしてくれる.3_14
のみとりの実態は女性に買われる“添寝業”だった.初日に声をかけてきた女性おみねは,亡妻・千鶴に瓜二つの囲われもの,しかしおみねに「下手くそ」と罵倒された寛之進はすっかり自信を失ってしまう.4_14
一方街で寛之進に助けられた清兵衛は,恐妻家の浮気者.清兵衛が浮気の手助けを頼んできたのに対し,寛之進は愛の手管を教えてもらおうとするが….
何とも奇妙な設定の時代劇コメディ.実力派の俳優達が真面目に取り組んでいる前半は見応えあり.清兵衛と愛人や寛之進とおみねの濡れ場も,おおらかで美しい.まあ寛之進がこの稼業に真面目に取り組んで,成果を出してしまう辺りがおかしいし,寛之進を買う山村紅葉のシーン等面白い場面もあった.5_11
ただ,終盤に向けて大団円に雪崩れ込んでいく筋書は,何とも御都合主義の平凡な展開で,いささかがっかり.後半はやや腰砕けの感がありました.
★★★(★5個が満点)
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2019/05/21

独断的映画感想文:パターソン

日記:2019年5月某日
映画「パターソン」を見る.1_16
2016年.監督:ジム・ジャームッシュ.
出演:アダム・ドライヴァー(パターソン),ゴルシフテ・ファラハニ(ローラ),バリー・シャバカ・ヘンリー (ドク),クリフ・スミス(メソッド・マン),チェイセン・ハーモン(マリー),ウィリアム・ジャクソン・ハーパー(エヴェレット),永瀬正敏(日本の詩人),ネリ(マーヴィン).2_15
ニュージャージー州パターソン市に住む市と同名のパターソンは,市バスの運転手.小さな家に恋人ローラと愛犬マーヴィンと暮らしている.
目覚ましが無くても6時過ぎには起きるパターソン,ローラはその朝見た夢を呟いてまた寝てしまう.パターソンは一人でシリアルの朝食を食べ,ローラの作っておいた弁当を持って出勤し,一日中バスを運転する.今朝はローラが双子を授かった夢を見たと言ったので,街は双子だらけの様に見える.仕事が終わって帰宅後は,マーヴィンを連れて散歩に出るが,途中でマーヴィンを待たせ,バーでビールを飲むのが日課.3_13
一方ローラは白と黒を基調としたアートで家中を飾る.ローラの夢は白と黒に塗ったギターを持って歌手デビューすることだ.一方パターソンは秘密のノートに毎日できた詩を書き付けている.ローラは詩のコピーを取り,詩人としてデビューする様説得するのだが….5_10
映画は特にドラマチックなことが起きる訳でもなく,控えめなユーモアと日常的な事件の積み重ねで進行する.主人公ら3人に加え,バーの常連の双子サムとデイブや,バーを仕切っているが奥さんには全く頭の上がらないドク,バーでしょっちゅう別れ話で喧嘩しているマリーとエヴェレット等,登場人物が面白い.
詩人パターソンが書き付ける詩もなかなかに素敵.
特筆すべきはブルドッグのマーヴィンを演じたネリで,達者な演技で2016年のカンヌ映画祭パルムドッグ賞を受賞した.惜しくも彼女は同年癌で死去し,映画は彼女に捧げられている.4_13
映画はパターソンの日常を描写していくが,パターソンの詩の朗読によって,描かれる街が様々な断面を示していく点が,この映画の面白さ.映画らしい映画である.
★★★☆(★5個が満点).
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2019/05/18

独断的映画感想文:女神の見えざる手

日記:2019年5月某日
映画「女神の見えざる手」を見る.1_15
2016年.監督:ジョン・マッデン.
出演:ジェシカ・チャステイン(エリザベス・スローン),マーク・ストロング(ロドルフォ・シュミット),ググ・ンバータ=ロー(エズメ・マヌチャリアン),アリソン・ピル(ジェーン・モロイ),マイケル・スタールバーグ(パット・コナーズ),ジェイク・レイシー(フォード),サム・ウォーターストン(ジョージ・デュポン),ジョン・リスゴー(スパーリング上院議員),デヴィッド・ウィルソン・バーンズ(ダニエル・ポスナー).5_9
大手ロビー会社「コール=クラヴィッツ&W」に働くスローンは,数々の実績を挙げてきた凄腕のロビイスト.ある日銃擁護団体から,新しい銃規制法案成立阻止の依頼を受ける.
ところがスローンはこれを拒否,自分の部下を率いて新興ロビー会社のシュミットのもとに移籍する.しかし彼女の右腕ジェーンだけは移籍に加わらなかった.
スローンは戦略的な活動を実施,劣勢だった銃規制派は急速に盛り返す.更にスローンはこれまで議論の圏外に居た女性票を狙い,女性ボランティア団体を組織して膨大な献金を確保すると共に,スタッフのエズメが銃による殺人の遺児であることを公にしてキャンペーンを張る.3_12
ところがエズメが暴漢の襲撃を受け,銃を正規に所持していた市民に暴漢が射殺されると,銃擁護団体は一気に反撃に出る.更に彼等はスローン個人を焦点に,スローンの過去のロビー活動の違法性を公聴会で審問する準備を整えた….4_12
法案成立か阻止かを巡るロビイスト達の,合法非合法織り交ぜた熾烈な闘いを描くポリティカルサスペンス.終盤,スローンの個人攻撃に焦点を絞った銃擁護派は,スローンの過去の活動の違法行為の証拠をジェーンの協力で押さえ,いよいよ公聴会の最終日となる.2_14
スローンの公聴会に衆目が集まり,銃規制法案の行方には既に誰も関心を持たない.この状況からスローンは如何に脱出し,更に巻き返しを図ることが可能か?このあとのスローンの捨て身の反撃がこの映画の醍醐味.
ポリティカルサスペンスとは言え,殆ど正統派ミステリーに近いどんでん返しである.映像も青に偏った色調で緊張感ある画面を維持し,まことに魅力的.出演者の早口の情報のやり取りについていくのは大変だが,見応えある映画.
★★★★(★5個が満点)
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2019/05/17

独断的映画感想文:ガルヴェストン

日記:2019年5月某日
新宿のシネマカリテで映画「ガルヴェストン」を見る.1_14
2018年.監督:メラニー・ロラン.
出演:ベン・フォスター(ロイ),エル・ファニング(ロッキー),ロバート・アラマヨ(トレイ),マリア・バルベルデ(カルメン),CK・マクファーランド(ナンシー),ボー・ブリッジス(スタン).5_8
故郷を捨て裏社会で生きてきたロイがその日,ボスの勧めで行った病院で見せられたのは,まるで雪が舞うように白くモヤがかかった自分の肺のレントゲン写真だった.命の終りが近いことを悟った彼は「どうせクソみたいな人生だ.死ぬならそれも仕方ない」そう自分に言い聞かせる.だが死への恐怖は彼を追い込み,苛立たせてゆく.
その夜いつものようにボスに命じられるまま向かった“仕事先”で,ロイは突然何者かに襲われる.組織に切り捨てられたことを知った彼は,とっさに相手を撃ち殺し,その場に囚われていた若い女を連れて逃亡する.彼女の名前はロッキー.家をとびだし,行くあてもなく身体を売って生活していたという.組織は確実に2人を追ってくるだろう.全てを失い孤独な平穏を願いながらも女を見捨てることのできないロイと,他に頼る者もなく孤独な未来を恐れるロッキー.傷だらけの2人の,果てなき逃避行が幕を開ける(公式サイトのストーリー).4_11
映画の冒頭は1988年ハリケーン下のニューオーリンズ.逃亡先に選んだのはそこから西へ600キロ程離れたガルヴェストン,ヒューストンの沖に浮かぶ島の街だ.
ところがロッキーはその手前のオレンジ郡で自宅に立ち寄る様ロイに依頼,継父を撃って幼い妹を連れ飛び出してくる.いずれも追われる身となった2人は,ガルヴェストンのモーテルでようやく落ち着いた日々を迎えるが….
希望と絶望,諦念に彩られた2人の僅かなやすらぎの日々.観客はしかしこの物語の結末がどうなるか,息を呑んで見守っている.
悲劇的な展開は予想通り,しかし2つのどんでん返しが映画の最後に控えていた.20年後再びハリケーンに見舞われるニューオーリンズ,哀切だが癒されるエピローグが印象に残る.6_5
主演二人が素晴らしい.ベン・フォスターはいかにもやくざな暮らしをしてきた男らしく,しかし死を前に悪ぶらないロイを好演.エル・ファニングは希望と絶望に翻弄される若いロッキーを,透明感ある美貌で演じる.モーテルの女主人のCK・マクファーランドも素敵.
監督は「イングロリアス・バスターズ」,「オーケストラ!」のヒロインを演じたメラニー・ロラン.才女ですな.
★★★★(★5個が満点)

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2019/05/04

独断的映画感想文:ふきげんな過去

日記:2019年5月某日
映画「ふきげんな過去」を見る.2_12
2016年.監督:前田司郎.
出演:小泉今日子(未来子),二階堂ふみ(果子),高良健吾(康則),山田望叶(カナ),兵藤公美(サトエ),梅沢昌代(サチ),板尾創路(タイチ).
果子は不機嫌な日常を過ごす高校生.今日も「海苔の本田屋の嫁」が子供をワニに喰われたと主張する運河を眺め暮らす.母サトエは年の離れた新生児の妹を育てているが,未だ名前すらつけていない.父は右手の指2本が欠損していて,無為な生活を過ごしている.1_13
一家は「エジプト風マメ料理」の飲み屋を営んでいる.ところがそこへ18年前に死んだ筈の伯母・未来子が突然姿を現す.爆弾作りに精を出し,爆破事件を起こして姿をくらました伯母は既に死んだ筈で戸籍もない.父の指も爆弾で失ったものらしい.
未来子はその日から果子の部屋に同居して暮らし始め,果子の苛々は頂点に達するが,未来子はある晩,爆弾に必要な硝石を取りに行こうと果子を誘う….3_10
退屈な現在に苛立つ果子に訪れた,突然の新しい未来が巻き起こす一夏の出来事.この一家のマメの皮を剥きながらの会話がとにかく違和感だらけで,そこに苛々で弾けそうな果子が加わる画面が基本的に面白い.
死んだ筈でしかもなお爆弾作りを続ける(殆ど楽しんでいると言って良い)未来子の登場で,映画は更に突き抜ける(こういうシチュエーションの小泉今日子ははまり役である).未来子,果子,カナ(果子の従姉妹)が,硝石取りに夜の運河を漕ぎ下っていくシーンはなかなか美しい.
映画の最後,「海苔の本田屋の嫁」が子供をワニに喰われた件の思いがけない展開が秀逸,そのシーンの果子の表情が印象的だ.未来の上から目線と過去の不機嫌が映画のテーマらしいが,面白い映画.
★★★☆(★5個が満点)4_10

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2019/05/02

独断的映画感想文:しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

日記:2019年5月某日
映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」を見る.1_11 2016年.監督:アシュリング・ウォルシュ.
出演:サリー・ホーキンス(モード・ルイス),イーサン・ホーク(エベレット・ルイス),カリ・マチェット(サンドラ),ガブリエル・ローズ(アイダ).3_8 実在のカナダ東部ノバスコシア州の画家:モード・ルイスの生涯を描く.
モードは若年性リューマチを患い若くして両親を亡くす.叔母のもとに身を寄せていたが,束縛が厳しく厄介者扱いするアイダ叔母さんからの独立を願っていた. たまたま或る日住み込み家政婦募集の掲示を見たモードは,雇い主エベレットのもとで働くことを決意する.
エベレットは孤児院育ちで学問もなく,町外れの小さな家に住む乱暴者.まるでタイプの違う二人はことある毎に衝突するが,やがて落ち着いてくると,モードは僅かな給金で絵の具を買い家に絵を書き始める.また,魚の卸をするエベレットの為に伝票を記録し始めるが,その伝票カードの裏にも絵を書く.2_10 やがてその絵は近隣の評判を呼び,その絵を金を出して買いたいというお客が現れ始めた….
身体が弱くリュウマチのため手足の動きが不自由なモードは,しかし自由を愛する聡明な女性.女性に支配的であろうとするが,実は善良で絵を好みモードを心から愛する様になるエベレット.両者を演じるサリー・ホーキンスとイーサン・ホークが素晴らしい.6_3 遂に二人が結婚式を挙げたとき,恥ずかしそうに微笑むモードと,居心地悪そうにしているが二人きりになるとモードを抱きしめるエベレットのこのシーンは忘れがたい.特にサリー・ホーキンスの極めて丁寧なモードの演じ方は感銘的.8 身体が不自由なモードと口下手なエベレット,しかし彼等の魂の深さは誰よりも優っていただろうと思われる.そのことを表現し得た映画,ギターを主としたマイケル・ティミンズの音楽も素晴らしい.一見の価値あり.

★★★★(★5個が満点).

7

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2019/04/17

独断的映画感想文:ブラック・クランズマン

日記:2019年4月某日

映画「ブラック・クランズマン」を見る.1_12

2018年.監督:スパイク・リー.

出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン(ロン・ストールワース),アダム・ドライヴァー(フリップ・ジマーマン),ローラ・ハリアー(パトリス・デュマス),トファー・グレイス(デビッド・デューク),コーリー・ホーキンズ(クワメ・トゥーレ),ライアン・エッゴールド(ウォルター・ブリーチウェイ),ヤスペル・ペーコネン(フェリックス),アシュリー・アトキンソン(コニー),ポール・ウォルター・ハウザー(アイヴァンホー).2_11

1970年代前半,コロラド州コロラドスプリングス警察署初の黒人警官となったロンは,潜入捜査担当を命じられる.黒人大学生組織が開催したブラックパンサー党の演説会に潜入したロンは,主催者のローラと知り合う.

他方,ロンは新聞広告に掲載されていた過激な白人至上主義団体KKK<クー・クラックス・クラン>のメンバー募集に電話をかけ黒人差別をアピール,幹部から採用面接に来る様誘われる.ロンは同僚のユダヤ人刑事・フリップを説き伏せ,フリップが面接を受けまんまと会員になることに成功する.3_9

かくてロンは電話で,フリップは参加して,黒人とユダヤ人排撃のKKKの内部捜査を進めることになる.KKK内部の過激派フェリックス夫妻はローラ等黒人活動家への爆弾テロを計画,一方ロンはコロラドにやって来るKKKの幹部デュークの警護担当を命じられるが….

コメディと称しているが,スパイク・リー監督らしい尖った作品.終盤のスリリングな展開は結構面白いし,ロンとローラの今後が予断を許さないものであることを暗示するラストシーンも印象的.エピローグもアメリカの現状を反映したイタい映像で締めくくられ,スパイク・リー監督の現代を見る眼差しを感じる.5_6

ジョン・デヴィッド・ワシントンの父デンゼル・ワシントンは26年前,この監督で「マルコムX」を撮ったが,本作冒頭のブラックパンサー党・ストークリー・カーマイケルのアジテーションに,「マルコムX」のそれを思い出した.

本作は設定が奇想天外でそれ自体がコメディと思えるが,後味はいささか苦い映画,見て損はなし.

★★★☆(★5個が満点).

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