2018/06/23

独断的映画感想文:ダンケルク

日記:2018年6月某日
映画「ダンケルク」見る.1
2017年.監督:クリストファー・ノーラン.音楽:ハンス・ジマー.
出演:フィオン・ホワイトヘッド(トミー),トム・グリン=カーニー(ピーター),ジャック・ロウデン(コリンズ),ハリー・スタイルズ(アレックス),アナイリン・バーナード(ギブソン),ジェームズ・ダーシー(ウィナント大佐),バリー・キオガン(ジョージ),ケネス・ブラナー(ボルトン中佐),キリアン・マーフィ(謎の英国兵),マーク・ライランス(ミスター・ドーソン),トム・ハーディ(ファリアー).2
映画の冒頭,ドイツ軍の降伏勧告ビラが舞う市街を駆け抜ける英軍兵士トミー.僚友はことごとく撃たれ,銃も鉄兜も失って命からがら友軍の拠点に転げ込む.その先はダンケルクの海岸,救出を待つ兵士の長い長い列が砂浜を覆い尽くす.
イギリスでは海軍の徴集に応じ,ドーソンの艇を含む多数の民間小型船舶が,ダンケルクに向け救出のため出港する.4
英空軍のスピットファイア3機編隊は作戦のため大陸に向け飛行中,独空軍メッサーシュミットと交戦,更に撤収作戦中の英艦船を襲う独爆撃機を撃墜する.5
この3つのエピソードがトミーの件が1週間,ドーソン艇の件は1日間,空軍の件は1時間の時間軸で同時進行するが,クライマックスで全てのエピソードは収斂する….
史実に基づいたダンケルク撤退作戦を描いた映画だが,上記のように3つの異なる時間軸を編集した描写である.更に登場するのは撤収する側の英軍兵士と艦船・航空機であり,独軍兵士は一切描かれない(描写されるのは独軍航空機と魚雷の航跡,飛来する銃弾のみ).この映画は,英軍のダンケルク撤収作戦の成功を描いた,一種の戦争叙事詩というべきであろう.6
映画としての緊張感は高い.トミー達がようやく英駆逐艦に収容され,看護婦に迎えられ紅茶とジャムパンを振る舞われた次の瞬間,Uボートの魚雷に撃沈される船内のシーン.敗残兵として辛くも生還し,英市民の罵倒を覚悟していたトミー等が,市民の暖かい歓待を受けるシーン.いずれも印象的だ.
同じ監督の「インターステラー」で素晴らしかったハンス・ジマーの音楽がやはり素敵.
戦史ものとして期待すると肩すかしだが,見応えある映画.
★★★☆(★5個が満点)
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2018/06/19

独断的映画感想文:罪の手ざわり

日記:2018年6月某日
映画「罪の手ざわり」を見る.1
2013年.監督:ジャ・ジャンクー.
出演:チャオ・タオ(シャオユー(小玉)),チアン・ウー(ダーハイ(大海)),ワン・バオチャン(チョウ(周)),ルオ・ランシャン(シャオホイ(小輝)),チャン・ジャーイー(ヨウリャン(佑良)),リー・モン(リェンロン(蓮蓉)).
映画の冒頭,山道をバイクで走行中3人組の追いはぎに襲われたチョウ,懐から銃を取り出し,あっという間に全員を射殺する.平然と山道を進むチョウ,ダーハイとすれ違う.4
ダーハイが働いてきた山西省の村の炭鉱はいつの間にか同級生の金持ちの所有となり,利益は村長一派と資本家のもの.抗議したダーハイは金持ちの側近に袋だたきにされる.ダーハイは猟銃を持ち出す….
チョウは正月に重慶の自宅に帰るが,銃を使った強盗で稼ぎ送金していたことは妻に判ってしまう.地元に留まるよう懇願する妻を置いて,チョウは白昼の強盗を犯し,長距離バスで逃亡する.6
そのバスに同乗していたヨウリャンは着いた湖北省の町で愛人シャオユーと会う.報われない愛人生活を続けてきたシャオユーは風俗サウナの受付.サウナに来た客から金づくで性サービスを強要されるが….
ヨウリャンの経営する広東省のクリーニング工場で働いていたシャオホイはナイトクラブに商売替え.そこの「ダンサー」リェンロンに心惹かれるが恋に破れ,更に稼いだ金は残らず母親に引き出され絶望する….3
現代中国の拝金主義とその犠牲となる庶民の絶望を描く,4つのエピソードによるオムニバス映画.
淡々とした描写ながら緊張感高く,各エピソードを演じる俳優も素晴らしい.最初のダーハイの物語に登場する京劇と,エピローグに登場する京劇がそれぞれ暗示的な台詞を繰り返すシーン,各エピソードの登場人物が重なっていくこと等,如何にも映画的な演出も面白い.5
★★★☆(★5個が満点)
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2018/06/12

独断的映画感想文:万引き家族

日記:2018年6月某日
映画「万引き家族」を見る.1
2018年.監督:是枝裕和.音楽:細野晴臣.
出演:リリー・フランキー(柴田治),安藤サクラ(柴田信代),松岡茉優(柴田亜紀),池松壮亮(4番さん),城桧吏(柴田祥太),佐々木みゆ(ゆり),緒形直人(柴田譲),森口瑤子(柴田葉子),山田裕貴(北条保),片山萌美(北条希),柄本明(川戸頼次),高良健吾(前園巧),池脇千鶴(宮部希衣),樹木希林(柴田初枝).2
映画の冒頭,柴田治と祥太がスーパーマーケット内を歩きながら万引きをする.目的の品をゲットし,地元の商店街に戻ってコロッケを購入する2人.
ところがその帰り道,虐待されマンションのベランダに放置されたゆりを見つけ,連れ帰ることにする.家に帰ると「家族」は夕飯の最中だ.3
初枝の家に住む信代・治の夫婦,孫の亜紀・祥太はいずれも血のつながりのない他人同士.生活は初枝の僅かな年金と信代・治のパートの給料,後は万引きでまかなっている.そこにゆりも加え,6人となる「家族」の物語.
信代はクリーニング工場のバイト,治は建築現場の補助作業員で働き,亜紀はファッションヘルスでバイトをしている.祥太(10歳前後?)は学校に通わず自宅で自学自習し,出かけては万引きをする.ゆり(5歳前後?)は祥太について万引きを習得しつつ,次第に「家族」に心を開いていく….
映画はこの「家族」の日常を淡々と描写しつつ,如何にこの「家族」が形成されていったかを次第に明らかにしていく.成員のそれぞれは深い傷を抱え,この「家族」に転がり込んできた.その結果形成された「家族」は,強い絆を持つに至る.その絆が表現される海水浴のシーンは,その前段のゆりの水着の万引きシーンと併せ,何と明るく楽しいことだろう.4
しかしこの後,家族の絆は破綻していくことになる.エピローグでの治と祥太の別離のシーンには,涙を禁じ得ない.万引きという手段で支えられた「家族」は,祥太の成長と正義感の目覚めと共に,瓦解せざるを得なかったのか.
自分が印象的だったのは,幾つかの「涙」の場面.
信代とゆりが初めて一緒に入浴し,信代の腕の傷跡をゆりがさわる.アイロンで火傷したのだと信代が言い,ゆりは自分もそうだと腕の火傷跡を示す.その後縁側でゆりを抱いて花火を見上げる信代,ゆりが信代の頬をさする.信代が涙を流しているのだ.
あるいは亜紀が自分の顧客「4番さん」とトークプレイをするシーン.取り止めもない話を一方的に亜紀がするが,「4番さん」は無言のまま.プレイ時間が終了して亜紀の膝枕から起き上がる「4番さん」,亜紀の膝に涙が残る.5
そして信代が刑事の取り調べを受けるシーン.子供達は信代を母と呼んでいたのかと問われ,信代ははぐらかす様に手で顔をこすり続ける.しかしやがて,隠しようもなく滂沱と流れる涙.
それぞれ「家族」・「絆」という命題に対する,監督のメッセージが示されているようだ.
映画は緊張感高くしかし楽しく進行する.俳優の活躍は(子役含めて)期待通り.リリー・フランキーは明るく気弱な小悪党を,安藤サクラは現代の日本の母性を体現したような演技.
樹木希林の演技は,社会に対してはしたたかに生きつつ「家族」に対しては何処までも優しい,昭和的な母性を見る様だ.6_2
細野晴臣の音楽も印象的.
パルムドールに相応しい,見応えのある映画.監督・キャスト・スタッフの出会いと,この映画に結実した力量が素晴らしい.
★★★★☆(★5個が満点)
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2018/06/09

独断的映画感想文:ファントム・スレッド

日記:2018年6月某日
映画「ファントム・スレッド」を見る.1
2017年.監督:ポール・トーマス・アンダーソン.
出演:ダニエル・デイ=ルイス(レイノルズ・ウッドコック),レスリー・マンヴィル(シリル・ウッドコック),ヴィッキー・クリープス(アルマ・エルソン),カミーラ・ラザフォード(ジョアンナ),ジーナ・マッキー(ヘンリエッタ),ブライアン・グリーソン(ロバート・ハーディ),ハリエット・サンソム・ハリス(バーバラ).2
ウッドコックはロンドンの高級仕立て服ハウスのオーナー,姉シリルをマネージャー役として,完全主義の仕事が社交界からも高く評価されている.
仕事のストレスに疲れ一人車で別荘に向かったウッドコックは,途上のレストランで若く美しいウエイトレスのアルマと出会う.一目でアルマが気に入ったウッドコックは彼女を自邸に迎え入れ,その美貌とウッドコックの服飾モデルへの要求にぴったりの肢体は,ウッドコックの創作欲を刺激する.3
やがて二人は愛し合うと同時に,ウッドコックの服飾への思いも共有するようになるが,一方でウッドコックなりのやり方で運営されてきた暮らしは,アルマによってかき乱される.他方,シリルにより完璧に庇護されているウッドコックに対し,自身がウッドコックを庇護するべきだと考えたアルマは,ある日思い切った行動に出る….
1950年代ロンドンの服飾ハウスや,郊外の別荘を舞台に繰り広げられる映像美がまず魅力的.4
演じる主演3名の演技も誠に見応えあり.特に別荘の食堂で,アルマが倒錯的な愛のかたちを提示し,ウッドコックがそれを受け入れていく長いシーン,ヴィッキー・クリープスとダニエル・デイ=ルイスの緊張感に満ちた演技が素晴らしい.初々しいアルマが女の凄みを示していく過程もスリリングだ.
同じ監督・主演の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」でも担当した,ジョニー・グリーンウッドの音楽が,今回も印象的.映画的魅力に満ちた作品.
★★★★(★5個が満点)
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2018/06/01

独断的映画感想文:モリのいる場所

日記:2018年5月某日
映画「モリのいる場所」を見る.1
2017年.監督:沖田修一.
出演:山崎努(熊谷守一),樹木希林(熊谷秀子),加瀬亮(藤田武),吉村界人(鹿島公平),光石研(朝比奈),青木崇高(岩谷),吹越満(水島),池谷のぶえ(美恵ちゃん),きたろう(荒木),林与一(昭和天皇),三上博史(知らない男).
映画冒頭は,熊谷守一の作品を眺めている昭和天皇のアップ.「この絵は何歳の子供が書いたのか」とのご下問あり侍従が困惑している.2
映画は自宅の庭から外には一歩も出ずに30年間を暮らしているモリこと熊谷守一と,その妻秀子の飄々とした生活を描く.庭の草花,虫,蛙,トカゲ,自らが掘った池の魚たちを観察し共に生きそして共に昼寝するモリ.一方夜になると秀子に「学校の時間ですよ」とアトリエに追いやられ,創作に向き合う羽目になる.
モリの家には来客が多く,書の依頼者や写真家・藤田も出入りする.自宅の表札はモリが自作するためしょっちゅう盗まれる.世の中の時間とは無縁のモリの家のようだが,日照を大幅に遮るかたちで隣接地にマンションが建ちつつある….3
青春映画というカテゴリーがあるとすれば,この様な映画は白秋映画か玄冬映画と言うべきなのだろうか.
山崎努と樹木希林は文学座の先輩・後輩ではあるが,共演はこれが初めてだそうな.
この二人の息のあった演技がとにかく見もの.食事中やにわにモリがウィンナソーセージを食べる前にペンチで潰す,その瞬間布巾をさっと掲げて飛び散る油を防ぐ秀子.あるいは文化勲章内定を告げてきた電話に出た秀子が,来客が増えるのは嫌だというモリの対応に即座に「要らないと言ってます」と告げて切ってしまうシーン.両者の間がまさに絶妙である.5
共演も達者揃いで安心して映画を見ることが出来る.
こういう老境なら是非なって見たいと思わせる,ほんわか映画.終盤で,新設なった隣地のマンションの屋上に上がった藤田が俯瞰するモリの家と庭,以外と狭い庭(敷地は80坪程度らしい)の片隅に潜むモリを縁側から秀子が呼んでいる.何となく胸を突かれるラストシーン.4
★★★★(★5個が満点)
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2018/05/23

独断的映画感想文:セインツ -約束の果て-

日記:2018年5月某日
映画「セインツ -約束の果て-」を見る.1
2013年.監督:デヴィッド・ロウリー.
出演:ケイシー・アフレック(ボブ・マルドゥーン),ルーニー・マーラ(ルース・ガスリー),ベン・フォスター(パトリック),ネイト・パーカー(スウィーティー),ラミ・マレック(ウィル),キース・キャラダイン(スケリット).2
ボブとルースは強盗が稼業.共にスケリットに育てられ,その息子フレディと犯行を繰り返しているが,二人は夫婦同然でルースは妊娠している.
ところが最後の犯行と臨んだ仕事で3人は保安官に追い詰められ,フレディは射殺され,ルースの銃弾は包囲陣のパトリックの肩を打ち抜く.3
ボブはルースの銃撃を自分の犯行として投降,ルースは無罪となりボブは刑務所へ.ルースはシルヴィアを産み,今は正業に就いているスケリットの援助でシルヴィアを育てている.
ボブはルースとシルヴィアを恋い慕い,遂に脱獄しルースの街に向かうが,一方パトリックはルースに思いを寄せていた….4
テキサスの自然を舞台とした純愛映画と言って良い.俳優も好演し,特に主役3人とキース・キャラダインの出来が良い.
終盤,ボブがルースのもとに迫り,一方ボブに稼いだ金を独り占めにされた仲間が派遣した殺し屋達もボブを追い,パトリックもルースの家を訪れるシルヴィア4歳の誕生日の夜がスリリング.5
但し,ボブとルースがどれほどの犯罪者なのかは殆ど説明がなく,強盗常習者で脱獄犯のボブがとても良い人に(どちらかと言えば被害者に)見えてしまう点は,若干問題あり.
カメラは美しく,バックに流れるカントリー&ウエスタンを中心とする音楽も心地よい.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:新宿スワンII

日記:2018年5月某日
映画「新宿スワンII」を見る.Ii1
2017年.監督:園子温.
出演:綾野剛(白鳥龍彦),浅野忠信(滝マサキ),伊勢谷友介(真虎),深水元基(関玄介),金子ノブアキ(葉山豊),村上淳(時正),久保田悠来(洋介),上地雄輔(森長千里),広瀬アリス(小沢マユミ),高橋メアリージュン(アリサ),桐山漣(鼠賀信之助),中野裕太(ハネマン),中野英雄(田坂晃),笹野高史(砂子),要潤(梶田),山田優(涼子),豊原功補(山城神),吉田鋼太郎(天野修善),椎名桔平(住友宏樹).Ii3
新宿歌舞伎町のスカウトグループ,バーストに所属する白鳥龍彦.前作で渋谷のグループ・ハーレムと統合したバーストは横浜進出を目指し,関と白鳥に横浜殴り込みを命じる.
関は横浜を仕切るウィザードを率いる滝との因縁の決着のために,白鳥は第1作で親友だった洋介の消息を求めて,横浜に向かう.折りしも横浜に大規模キャバレー開設を目指す全日本酒販連合会がキャバ嬢の大量スカウトを要望,ウィザードとバーストの熾烈な争いは,それぞれの上部団体のやくざを巻き込んで始まる….Ii2
人気コミックの実写化第2弾.
この映画の魅力はコミックキャラの白鳥龍彦をきっちりと演じる綾野剛の魅力と,園子温監督のカメラワーク・テンポの良さにある.また脇を固める俳優陣も,コミックらしい濃いキャラクターを過不足無く演じて見応えあり.Ii5
ヒロインは広瀬アリスだが,こちらは前回の沢尻エリカに比べると今一歩.特にダンスで審査員を魅了するシーンでは,体がふっくらしすぎて説得力に欠ける.そんなこんなで★★★(★5個が満点)
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2018/05/17

独断的映画感想文:モアナと伝説の海

日記:2018年5月某日
映画「モアナと伝説の海」を見る.0
2016年.監督:ジョン・マスカー/ロン・クレメンツ.
音楽:マーク・マンシーナ.声の出演:アウリイ・クラヴァーリョ(モアナ),ドウェイン・ジョンソン(マウイ),レイチェル・ハウス(タラおばあちゃん).2
南海の楽園,モツゥヌイ島.16歳の少女モアナは島長の娘,いつか島を治めることになる.
あるとき島では魚が捕れず,農作物が枯れ死する現象が起き始める.おばあちゃんに依れば,これは昔半神・半人のマウイが,女神テ・フィティの“心”を盗んだために生まれたという暗黒の襲来によるものだった.
島では珊瑚礁の外に出ることは固く禁じられていたが,海と特別の繋がりを持つモアナは,かって大海を押し渡った先祖の船に乗り,マウイを見つけ出して女神に“心”を返させるための,冒険の旅に出る….4
ディズニーのアニメーションミュージカル.ポリネシアの伝説に基づく物語らしいが,登場人物や楽曲は如何にもアメリカ風,この辺は好みに依るところだろう.5
一方映像の美しさやキャラクターの動き等は,ディズニーアニメならではの力があり,魅了された.特に,海や波の水の描き方は誠に素晴らしく,今まで見たことのない魅力がある.この点だけでも見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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2018/05/14

独断的映画感想文:マルクス・エンゲルス

日記:2018年5月某日
映画「マルクス・エンゲルス」を見る.1_2
2017年.監督:ラウル・ペック.
出演:アウグスト・ディール(カール・マルクス),シュテファン・コナルスケ(フリードリヒ・エンゲルス),ヴィッキー・クリープス(イェニー),オリヴィエ・グルメ(ジョセフ・プルードン).5
カール・マルクスは「ライン新聞」に寄稿する若き思想家,プロシア官憲によりライン新聞編集部が検挙された時に捕まるが,マルクスはむしろライン新聞の手ぬるい表現に辟易としていた.パリに拠点を移したマルクスは,妻イェニーと娘ジェニーとの生活を守りつつ,新聞に寄稿し論文を執筆する.
一方,イギリスの紡績会社社長の息子:フリードリッヒ・エンゲルスはブルジョワジーの搾取に批判的で,父の従業員だった恋人メアリー・バーンズの協力で,英国労働者階級の実態を論文化し発表する.
二人はパリの編集者ルーゲの書斎で出会い,意気投合する.やがて二人は英国で組織された「正義者同盟」に介入しそのメンバーとなるべく活動を進める….4
19世紀半ば産業革命の進むヨーロッパ,未だ20代の若きマルクスとエンゲルスの活動を,1848年の「共産党宣言」の発表まで描く.映画は若い彼等の生活や恋愛を交えて描き,エンタテインメントとして十分に魅力的.
物語のクライマックスは,マルクスとエンゲルスが正義者同盟の主流派となって「共産主義者同盟」と名称を変更していく1847年の大会のシーンだが,容赦ない批判の応酬・より過激な主張の勝利という過程には共感できず,苦いものを感じざるを得なかった.共産主義運動が内包したこの様な分派闘争の作風が,次の世紀=「戦争と革命」の世紀に如何に大きな影響を与えたか,と考えるためだ.3_2
偶然だが,鑑賞した岩波ホールでは「ゲッベルスと私」の予告編を上映した.そこに登場したナチスのゲッベルスのアジテーションは,この映画で正義者同盟からマルクスに除名されたヴァイトリングが行ったアジテーションとうりふたつだった.このことも映画の感想にほろ苦いものをつけ加えている.2_2
こんな感想は,自身が青年の時代であれば持たなかったに違いない.
エンドテーマは唐突にボブ・ディランのライク・ア・ローリング・ストーン,でも何となく合っている感じ.複雑な感情で映画館を後にした,いろいろと考えさせる映画.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ニシノユキヒコの恋と冒険

日記:2018年5月某日
映画「ニシノユキヒコの恋と冒険」を見る.1
2014年.監督:井口奈己.出演:竹野内豊(ニシノユキヒコ),尾野真千子(マナミ),成海璃子(昴),木村文乃(タマ),本田翼(カノコ),中村ゆりか(みなみ),田中要次(みなみの父),麻生久美子(夏美),阿川佐和子(ササキサユリ).3
映画の冒頭は,ニシノと夏美・みなみ親子が別れる喫茶店のテラスのシーン.その直後ニシノは交通事故で車に撥ねられる.
10年後,みなみのもとを訪れるニシノ(の幽霊),死んだので夏美の様子を見に来たのだと言うが,夏美は出奔してみなみも長年会っていない.7
夏美が来る筈だからとニシノ(の幽霊)に連れられニシノの葬儀に行くみなみは,そこでササキサユリというおばさんに会い,ニシノの女性遍歴を詳しく聞くことになる….
イケメンで仕事も出来,女性に優しくセックスも上上というニシノユキヒコ,もててもてて困る程なのに,結果的には相手に振られ続けている.それは何故なのか?2
現実味のないパステル調の映像と,長回しの多用(長回しでないシーンの方が珍しい程)にはいささか食傷するが,それはそれで映画のリズムになっている.
ニシノという人は女性の心理を,掌を指す様に読み取る力があるらしい.その為にひたすら女性に優しく出来る訳だが,しかし一方で,自分はその女性とどう生きていこうという姿勢は全くない.ニシノ自身は女性に自分を愛して欲しいのだが女性をきちんと愛している訳ではなく,女性の側は恋の対象以上にはニシノを見ない様だ.6
そういう構造が見えてくる映画.尾野真智子が好演,他の俳優達もそれぞれ好キャスティング.阿川佐和子の話術は見応えあり.
★★★(★5個が満点)
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