2022/06/24

独断的映画感想文:マルモイ ことばあつめ

日記:2022年6月某日
映画「マルモイ ことばあつめ」を見る.1_20220625173601
2019年.監督・脚本:オム・ユナ.
出演:ユ・ヘジン(キム・パンス),ユン・ゲサン(リュ・ジョンファン),キム・ホンパ(チョ先生).3_20220625173701
1941年京城,映画館の呼び込みキム・パンスは,仲間が館内でスリを働いたかどでクビになる.中学生の息子ドクジンと6歳の娘スンヒを育てるやもめのパンスは,息子の学費を工面するため,街角でリュ・ジョンファンの鞄を奪い逃走する.ところが帰宅するとリュ・ジョンファンが待っていた.リュ・ジョンファンはドクジンの通う中学の理事長の息子,逃げる時パンスが落とした学費の督促状から足がついたのだ.2_20220625173601
リュ・ジョンファンは朝鮮語学会の代表,鞄の中身は大事な資料だった.キム・パンスは刑務所で同房だったチョ先生のとりなしで,朝鮮語学会の雑用係となる.朝鮮語学会は朝鮮語大辞典の編纂中,現在は各地の方言を集め標準語を確定する作業中だが,朝鮮語の使用禁止,創氏改名の強制が行われる中,辞書編纂自体が朝鮮総督府の弾圧にさらされていた.4_20220625173701
お調子者で字も読めないパンスだったが,辞書編集者たちの必死の取り組みに,自らも協力するようになる.一方ドクジンはそれがばれたらパンスは刑務所へ,ドクジンは徴兵され,幼いスンヒはどうなるのかと心配が尽きない….5_20220625173701
朝鮮語大辞典編纂を巡る物語.この映画の魅力は,第一には信念あるインテリだが世の中にはやや疎いリュ・ジョンファン,教養はなく喧嘩っ早いが機知に富み実行力のあるキム・パンス他,多士済々の登場人物にある.物語もユーモアに富み,テンポよく困難な時代の彼らの活躍を描いていく.6_20220625173601
弾圧は厳しく,映画の中盤では秘密の編集所が当局に摘発され,10年かけて集めた資料がすべて焼却されるという事態になるが,彼らはなお挫けない.大きな犠牲の後,1947年に至って朝鮮語大辞典は完成する.その辞典を覗きこむ今は教師となったドクジンと中学生となったスンヒの光景で映画は終わる.見ごたえある映画.
★★★☆(★5個が満点).
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2022/06/15

独断的映画感想文:サンドラの小さな家

日記:2022年6月某日
映画「サンドラの小さな家」を見る.1_20220619145701
2020年.監督:フィリダ・ロイド.
出演:クレア・ダン(サンドラ),ハリエット・ウォルター(ペギー),イアン・ロイド・アンダーソン(ゲイリー),ルビー・ローズ・オハラ(エマ),モリー・マッキャン(モリー).
サンドラの夫ゲイリーはDV男,逃げ出そうとしていたサンドラに決定的な暴行を加える.サンドラは娘エマとモリーを連れて市の保護を受け,娘を保育所に預けて複数のバイト仕事を掛け持ちで懸命に働く.2_20220619145701
住居は公営住宅の順番待ちが長く,市の借り上げホテル,しかしホテルはサンドラを客扱いせず,ロビーに入れずエレベーターにも乗せて貰えない.疲れ切ったサンドラに,長年掃除婦として世話をしてきた老医師ペギーが手を差し伸べる.サンドラが見つけた「35000ユーロで自力で建てる家のプラン」を実現するため,自分の裏庭を提供すると云うのだ.3_20220619145701
様々な人のつながりが生まれ,週末を利用した自宅の建設が進み始める.一方,娘モリーはゲイリーを嫌い週1回の父親訪問を泣いて嫌がる.モリーはサンドラが暴行された現場を見ていたのだ.これに対しゲイリーは,サンドラが娘の面会の義務を履行していないとして,サンドラから親権をはく奪するための訴えを起こす….4_20220619145701
典型的な筋書きとは言え,懸命に働くサンドラの周囲に徐々に出来上がっていく人の輪に心が温まる.舞台はアイルランドらしいが,口は悪いが人懐こいボランティアの面々が,それぞれに印象的だ.原案・脚本はサンドラを演じたクレア・ダン.物語は決して単純なハッピーエンドではないが,サンドラと娘たちの未来が開かれていくのを観客も確認できるだろう.一見の価値あり.
★★★☆(★5個が満点).
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2022/06/11

独断的映画感想文:すばらしき世界

日記:2022年6月某日
映画「すばらしき世界」を見る.0_20220616142801
2021年.原作:佐木隆三「身分長」.監督・脚本:西川美和.
出演:役所広司(三上正夫),仲野太賀(津乃田龍太郎),橋爪功(庄司勉),梶芽衣子(庄司敦子),六角精児(松本良介),北村有起哉(井口久俊),長澤まさみ(吉沢遥),安田成美(西尾久美子),白竜(下稲葉明雅),キムラ緑子(下稲葉マス子).4_20220616142801
殺人罪で13年の刑期を終え旭川刑務所を出た三上正夫.東京の保護司・庄司のもとで堅気への一歩を踏み出す.福岡で私生児として生まれた三上は施設育ち,14歳で暴力団の舎弟となり少年院入りとなる.以降10犯を重ね,最後の犯罪は妻が経営するスナックに日本刀を持って乗り込んできた対立暴力団の若者を,その日本刀で返り討ちにした殺人罪によるものだった.5_20220616142801
三上は行方不明の実母を探したいと,TV局に自分の「身分帳(刑務所が作成した個人台帳)」の写しを履歴書代わりに渡していた.プロデューサーの吉沢は,制作会社の津乃田に三上の密着取材を依頼,津乃田は三上が殺人犯と聞いて躊躇するが,三上は人懐こく人付き合いの良い男だった.体調も悪く庄司の勧めで生活保護を受けることになった三上,その担当の井口や庄司夫妻,同郷と知れて親しくなったスーパー店長の松本らと交流しながら生活再建を目指す.3_20220616142801
しかし自分なりの正義感を持ち,堅気でない相手には暴力の行使をためらわない三上.運転免許の取得や就職がうまくいかず苛立った三上は周りとも衝突,兄弟分の暴力団組長・下稲葉の誘いで福岡に里帰りするが….
実在の人物に取材した佐木隆三の小説「身分長」を原作とする映画.2_20220616142801
三上は自身の気概と暴力を頼りに誇りを持って生きてきた男だ.そう生きてきた男にとって堅気社会の壁は高い.怒りの爆発を必死に抑え我慢して生きていく三上,彼を支える周囲の人の真情も,なかなか三上の本質を変えるには至らない.しかしある事件が三上を変えたのではなかったか,自身も弱い人間の一人なのだと思い至ったのではなかったのか.そう思えた映画のラストシーン,カメラが見上げた青空をバックに,ようやく映画のタイトル「すばらしき世界」が映し出される.まことに印象的な幕切れ.1_20220616142901
主演の役所広司・仲野太賀始め共演陣も演技が素晴らしく,高い緊張感で物語が進行する.特に身を挺して堅気に戻るよう説得する下稲葉の妻を演じたキムラ緑子の,「そやけど空が広いち言いますよ」というセリフなど,印象的なシーンが随所にある.一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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2022/06/03

独断的映画感想文:鳩の撃退法

日記:2022年6月某日
映画「鳩の撃退法」を見る.
2021年.監督:タカハタ秀太.1_20220612150701
出演:藤原竜也(津田伸一),土屋太鳳(鳥飼なほみ),風間俊介(幸地秀吉),西野七瀬(沼本),豊川悦司(倉田健次郎),佐津川愛美(幸地奈々美),桜井ユキ(加賀まりこ),岩松了(川島社長),村上淳(山下),坂井真紀(加奈子),濱田岳(堀之内),ミッキー・カーチス(房州老人),リリー・フランキー(まえだ).3_20220612150701
高円寺のバーで働く元作家の津田,津田から新作として原稿を受け取った編集者・鳥飼は,5万円と引き換えに原稿を預かる.その内容は次のようなものだった.2_20220612150701
主人公は元作家の津田,今は富山でデリヘル嬢の送迎運転手として暮らしている.ある日津田はなじみの深夜喫茶で,顔見知りの男・秀吉に声をかける.水商売をしている秀吉は,夜中に帰宅して妻子を起こさないためここで読書し時間をつぶしている.秀吉と別れた津田は,デリヘル嬢の加賀まりこから恋人の春山を駅に送るよう頼まれるが,春山は駅で待っていた別の車に乗り込む.翌日秀吉は従業員から3万円前借したいと頼まれ了承するが,その後自宅で妻から妊娠したという報告を聞き,その日はバーを休むと連絡を入れる.しばらくして津田は懇意にしていた古本屋の主人・房州が亡くなった知らせを受けるが,房州が津田宛に残したバッグには3003万円の現金が入っていた.一方,秀吉は津田と深夜喫茶で別れた日から,家族ともども行方不明になっていた.数日後津田はデリヘルの社長から呼び出され,津田が床屋・まえだで使った1万円札が偽札で,警察と「本通り裏」と呼ばれるヤクザのボスが,偽札を使った人物を追究していることを聞く….4_20220612150701
鳥飼が読む津田の原稿はフィクションなのか現実なのか.かって津田の傑作小説を扱った鳥飼は,それが事実そのままであったことからトラブルに巻き込まれた経験を持つ.秀吉と妻子は何故・どこへ消えたのか.偽札は何故津田が持つに至ったのか,そのケリはどうつけられるのか.映画の後半,輻輳する謎は次々に伏線を回収して明らかになっていくが,その決着がどうなるか,スリリングな展開はなかなか面白い.5_20220612150701
俳優では藤原竜也を始め,豊川悦司,浜野謙太,岩松了ほかベテラン俳優がふんだんにキャスティングされ,それぞれが味のある演技.エンタテインメントとして見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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2022/05/12

独断的映画感想文:海辺の家族たち

日記:2022年5月某日
映画「海辺の家族たち」を見る.1_20220519182501
2016年.監督:ロベール・ゲディギャン.
出演 アリアンヌ・アスカリッド(アンジェル),ジャン=ピエール・ダルッサン(ジョゼフ),ジェラール・メイラン(アルマン),ジャック・ブーデ(マルタン),アナイス・ドゥムースティエ(ヴェランジェール),ロバンソン・ステヴナン(バンジャマン),ヤン・トリゴー(イヴァン),ジュヌヴィエーヴ・ムニク(スザンヌ),フレッド・ユリス(モーリス),ディオク・コマ(士官).3_20220519182501
パリで活躍する女優アンジェルが,20年ぶりに故郷・マルセイユに近い漁村に帰ってくる.村で長らくレストランを営んでいた父が倒れたのだ.父の後をついでレストランを経営する長兄アルマン,失業中で若い婚約者ヴェランジェールと共に帰ってきている次兄ジョセフと,実家で久しぶりに語り合う.以前マルセイユでアンジェルの舞台を見て以来そのファンとなり,今では週末に劇を上演しているという漁師バンジャマンもやってくる.5_20220519182501
この漁村が別荘地としてひらけ始めたころ,父は庶民的なレストランを開業しそれをずっと守ってきた.近況を交換しこの後実家をどうするか,3人は話し始めるが解決すべき問題は多い.往時に比べすっかりさびれたこの村,年老いた父の世代.隣人のマルタン夫妻は家賃の支払にも窮し,息子がそれを援助しようと申し出るのを心苦しく思っている.アンジェルはかって仕事中に父に預けた一人娘が事故で亡くなり,そのことで夫とも別れたという過去があった.一人一人の辛い過去が明らかになる一方,バンジャマンは憧れのアンジェルに猛烈なアタックを開始するが….2_20220519182501
この後の人生をどうするのかがなかなか見えてこないのに,若いヴェランジェールやバンジャマンに対しては歳を感じざるを得ない兄妹たち.ところがある事件が起きて3人の気持ちが少しずつ切りかわっていく.他の状況は何も変わらないのに,3人は前向きに人生に向かい合うことになる.6_20220519182501
静かな漁村を背景に進むこの人生模様が,フランス映画らしくて素敵.監督と主演の2人がマルセイユ出身ということも,映画の雰囲気を良くしているようだ.海辺の様々な情景,古びているが優美な別荘の家々,谷にかかる高い石橋を夜昼渡っていく列車.これらを映すカメラも美しい.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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2022/05/10

独断的映画感想文:ジョジョ・ラビット

日記:2022年5月某日
映画「ジョジョ・ラビット」を見る.1_20220520205501
2019年.監督:タイカ・ワイティティ.
出演:ローマン・グリフィン・デイヴィス(ジョジョ),トーマシン・マッケンジー(エルサ),タイカ・ワイティティ(アドルフ),サム・ロックウェル(クレンツェンドルフ大尉),スカーレット・ヨハンソン(ロージー).2_20220520205501
ジョジョは10歳の少年.父はイタリアで軍隊勤務,姉は亡くなり母ロージーとの二人暮らし.時は第2次大戦末期のドイツ,ジョジョは自分で靴ひもも結べないが,あこがれのヒトラーユーゲントの合宿に参加することになる.想像の中の親友「アドルフ・ヒトラー」の激励を受け張り切るジョジョ,しかし上級生にウサギを殺せと命じられて出来ず,「アドルフ・ヒトラー」の叱咤で手榴弾の投擲に挑むが失敗し,顔と脚に大けがをする.ヒトラーユーゲントには参加できず,街でビラ張りなどの雑用をすることになる.3_20220520205501
そんなある日,ジョジョは自宅の姉の部屋から物音のするのに気付き,壁裏のスペースにユダヤ人の少女が隠れているのを発見する.ユダヤ人には角があると教えられていたジョジョは吃驚するが,少女エルサはこのことを口外したらロージーとジョジョもただでは済まないと脅し,ジョジョもユダヤ人観察のため現状維持に同意する.一方ジョジョは街でロージーが反ナチのビラをひそかに配っているのを目撃する.ロージーの留守中にゲシュタポが訪れ,家探しを開始するが….4_20220520205501
愛国少年ジョジョが,ユダヤ人少女と出会い語らう中で成長していく方向は,いつかヒトラーユーゲントとは異なる方向に行ってしまう.そのことを通じて戦争とナチズムの愚かしさをあぶりだしていく物語.コメディタッチで描かれるが,戦争の現実描写には容赦はない.5_20220520205501
ラストシーンで米軍が雪崩れ込みナチスが崩壊していく中,手に手を取って駆けていくジョジョとエルサの姿の後味が良い.劇中で流れる音楽も軽快.見て損はなし.6_20220520205501
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2022/05/05

独断的映画感想文:ファーザー

日記:2022年5月某日
映画「ファーザー」を見る.
2020年.監督:フロリアン・ゼレール.出演:アンソニー・ホプキンス(アンソニー),オリヴィア・コールマン(アン),マーク・ゲイティス(男),ルーファス・シーウェル(ポール),イモージェン・プーツ(ローラ),オリヴィア・ウィリアムズ(女).1_20220511160401
アンソニーは引退した老人,広々としたロンドンの自分のフラットに住み趣味の音楽を聴く,悠々自適のの暮らしだ.介護に来た女性と衝突し彼女は辞めてしまって,今は長女のアンが世話に通って来る.アンは次の介護人ローラを採用しようとするが,自分は誰の世話も必要ないと主張するアンソニー.一方アンは近々再婚してパリに住むようになると言い出す.2_20220511160401
ところがある朝,アンに似てはいるが別の女性が自分がアンだと言ってアンソニーの世話に来る.フラットの様子もいつもと微妙に違うようだ.居間にはポールという男がいて愛想よく話しかけてくるが,アンソニーが自分のフラットで何をしているのだと聞くと,ここは僕のフラットですと答える.3_20220511160401
別の日にはいつものアンが戻ってくるが,以前いたポールとは別の男がポールと名乗って,フラットに同居している.新しい介護人のローラが働き始めるが,彼女は次女のルーシーに似ている.しかしそう言えばルーシーとは長い間会っていなかった….5_20220511160401
まるでホラー映画かミステリーのような展開で進行する映画,アンソニー・ホプキンスの饒舌なセリフが状況の違和感を増幅し,緊張感を高めていく.もともとは舞台劇だった作品を脚本を作ったフロリアン・ゼレールが監督して映画化した.物語の展開につれ,変遷していく周囲の状況は,認知症であるアンソニーの目から見た受けいれ難い変化であることが判ってくるが,それでは実際には何が起こっているかは,最後の最後まで判然としない.ラストシーンで子どもに帰って行くアンソニーの姿には,暗然とした悲しみを禁じ得なかった.4_20220511160401
アンソニーが鑑賞している歌曲,特に「真珠取り」の哀愁を帯びたアリアが美しく,耳について離れない.見事な映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2022/04/23

独断的映画感想文:ハリエット

日記:2022年4月某日
映画「ハリエット」を見る.1_20220508161901
2019年.監督:ケイシー・レモンズ.
出演:シンシア・エリヴォ(ハリエット・タブマン/ミンティ),レスリー・オドム・Jr(ウィリアム・スティル),ジョー・アルウィン(ギデオン・ブローダス),ジャネール・モネイ(マリー・ブキャナン),クラーク・ピータース(ベン・ロス),ヴァネッサ・ベル・キャロウェイ(リット・ロス),ヴォンディ・カーティス=ホール(グリーン牧師).2_20220508161901
1849年メリーランド州のフローダス家の奴隷ミンティの夫は自由民.二人は自分たちの将来の子どもを自由民とするため,フローダス家の祖父が発行した書類をもとに,子どもの自由民としての承認を求めるが,主人はその書類を破り捨て,子どもが生まれたらそれは自分の奴隷だと宣言する.その後主人は急死,息子ギデオンは借金返済のためミンティを南部に売却しようと考える.
絶望したミンティは奴隷商人の来訪を察知し脱走を決意,追手の迫る中独りで100㎞以上を走破しペンシルベニア州境を突破,フィラデルフィアの反奴隷制協会にたどり着き保護される.ここで奴隷制度廃止運動家ウィリアム・スティルと出会ったミンティはハリエット・タブマンと名前を変え仕事を得て自立する.3_20220508161901
その後奴隷制度廃止運動家たちの秘密組織“地下鉄道”の一員となったハリエットは、夫に会うべくメリーランド州に舞い戻る.しかし夫はハリエットが死んだと聞かされて再婚していた.ハリエットは兄弟・母親らを連れて再度州境を超える.ハリエットは“黒人たちのモーセ”と呼ばれる存在となるが,奴隷の逃亡で零落したギデオン・フローダスは復讐の鬼となり,州を越えて逃亡奴隷を逮捕できる逃亡奴隷法の助けを借りてハリエットを追及する….5_20220508161901
事実に基づく物語.心身ともにたくましいハリエットを演じるシンシア・エリヴォの演技が見ごたえあり.ブロードウェイのスターでもある彼女は,この映画でも自身の通信手段として黒人霊歌を歌うシーンを自ら歌唱するが,その圧倒的な歌声は感銘的だ.
“地下鉄道”の活動で70名以上の奴隷を解放したハリエットは,南北戦争にも参加,黒人兵の軍を指揮して,逃亡してきた数百名の奴隷の保護に成功する.そのシーンも印象的だ.監督をはじめ製作陣は3名の女性が指揮していたというこの映画,一見の価値あり.4_20220508162001
★★★★(★5個が満点)
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2022/04/10

独断的映画感想文:ジャッジ 裁かれる判事

日記:2022年4月某日
映画「ジャッジ 裁かれる判事」を見る.1_20220411180201
2014年.監督:デヴィッド・ドブキン.
出演:ロバート・ダウニー・Jr(ハンク・パーマー),ロバート・デュヴァル(ジョセフ・パーマー),ヴェラ・ファーミガ(サマンサ・パウエル),ヴィンセント・ドノフリオ(グレン・パーマー),ジェレミー・ストロング(デイル・パーマー),ダックス・シェパード(C・P・ケネディ),ビリー・ボブ・ソーントン(ドワイト・ディッカム).3_20220411180201
ハンクはシカゴで活躍する腕利きの弁護士,金さえ積めば悪辣な依頼人のためでも働く.仕事に没頭するハンクにうんざりした妻は浮気,ハンクは愛娘ローレンの養育権を得て離婚しようと考えている.
そんなある日実家から母が急死したとの知らせが入り,ハンクは捨てたも同然の故郷インディアナへ帰省する.父ジョゼフは地元で40年以上判事を務めている人物,葬儀の日も裁判を終えて通夜に参加した.兄グレンと知的障がい者の弟デイルとともに母の葬儀に参加するが,居心地は悪い.5_20220411180201
葬儀の翌日,父の車に衝突した跡を発見したハンク,ジョゼフは自分ではないと言い張り,父と衝突したハンクはシカゴに帰ろうとする.ところが機内にグレンから,ジョゼフがひき逃げの疑いで取り調べを受けているとの連絡が入る.グレンは急遽実家へ引き返すが,ジョゼフはハンクに自分の弁護は依頼しないと告げる….
この映画には重層的な謎が幾つもある.ハンクはなぜ父から疎んじられているのか.何故ハンクは故郷を捨てたのか.高校時代名ピッチャーだったグレンはなぜ野球に挫折したのか.父が轢いたとされる被害者マークと父との因縁は何か.父が被害者を轢いた記憶がないのは何故か.
暴君的な家長であり子どもには厳しかった父は,しかし誠実な判事であり決して嘘は言わない人物である.このような物語の根幹をなす謎の他にも,この映画にはハンクが酒場で出会った元カノの娘の父親は誰かという謎などがあり,物語の進展に引き込まれる.また法廷シーンのやり取りのスリリングな展開も魅力的.2_20220411180201
俳優ではロバート・ダウニー・Jr,ロバート・デュヴァルがいずれも見応え十分.検事役で登場したビリー・ボブ・ソーントンは久しぶりだったが,相変わらず魅力的.4_20220411180201
ところで映画の中盤で,ジョゼフとハンクが話をしていて,最も尊敬する弁護士は誰かという話題になる.ハンクが自分の師匠だと云うのに対し,ジョゼフは若い時に出会った高潔な弁護士:ヘンリー・ショウを最も尊敬すると云う.自分はハンクがヘンリーの愛称だということを知らなかったが,このことは後での伏線の一つだった.多少ネタバレだが触れて置く.
蛇足:先週見た映画もこの映画も,主人公と親との確執の原因は,交通事故だった.こういう偶然は時々起きるが,吃驚した.
★★★★(★5個が満点)
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2022/04/05

独断的映画感想文:ある天文学者の恋文

日記:2022年4月某日
映画「ある天文学者の恋文」を見る.1_20220412161601
2016年.監督:ジュゼッペ・トルナトーレ.音楽:エンニオ・モリコーネ.
出演:ジェレミー・アイアンズ(エドワード・フィーラム教授),オルガ・キュリレンコ(エイミー・ライアン),ショーナ・マクドナルド(ヴィクトリア),パオロ・カラブレージ(オッタヴィオ),アンナ・サヴァ(アンジェラ),イリーナ・カラ(エイミーの母親).5_20220412161601
天文学の学生エイミーは同部門の教授で妻子あるエドと熱愛中.エイミーは母親と折り合いが悪く,映画のスタントや塑像のヌードモデルをして暮らし,エドからはカミカゼと呼ばれている.ロンドンのホテルで会った後,エドからは通信や映像は届くが会うことはできない.それでもエドの助言通り勉強して無事進級の口頭試験に合格する.ところが出席した大学の講義中,講師がエドは数日前に亡くなったと言い,皆に黙とうを呼びかける.混乱したエイミーはエドに連絡を取ろうとするが繋がらない.4_20220412161601
エイミーは報道でエドの死を受け入れるが,一方エドからのメールと手紙は引き続き届く.エイミーはエドの自宅のあるエジンバラを訪れ,伝言のままに弁護士事務所を訪問,エドの旧友の弁護士からエドの贈り物と手紙を渡される.ロンドンに戻ったエイミーは手紙に同封された別荘の鍵を持って,かって二人で行ったイタリア・オルタ湖のボルゴヴェントーソ島に行く.別荘では暖炉に火がたかれ,エイミーへの贈り物が待っていた….3_20220412161601
死んだ恋人からメッセージが届くというミステリアスな内容と,エイミーの家族との確執やエドの死の克服という展開が印象的な映画.島でエドのメッセージを受け取ったエイミー,エドは自身の死に際してエイミーの母親との確執への助言を行う.激高したエイミーは衝動的にエドの映像記録を暖炉に投じ,エドのメールに通信の終了を指示するサインを返信してしまう.その後ぷっつりとエドからの通信は途絶えた.
画像の復元も通信の再開にも失敗したエイミーは,憔悴して再びエジンバラを訪れる.ここでエドの娘ヴィクトリアと会うことから新しい展開が開けるという物語.主演のジェレミー・アイアンズとオルガ・キュリレンコが魅力的,物語のテンポも良い.2_20220412161601
エイミーの論文スケジュールに合わせて届くエドの助言の的確さは驚異的だが,一回だけ順番を間違えてメールが届く場面があり,立ち直りかけていたエイミーがそれを笑って受け入れるというエピソードも面白かった.落ち着いた色調の映像も美しく,特にボルゴヴェントーソ島のたたずまいは魅力的.エンニオ・モリコーネ(制作時88歳)の音楽も控えめながら美しい.
★★★★(★5個が満点)
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