独断的映画感想文:川っぺりムコリッタ
日記:2024年12月某日
映画「川っぺりムコリッタ」を見る.
2021年.監督・脚本・原作:荻上直子.
出演:松山ケンイチ(山田たけし),ムロツヨシ(島田幸三),満島ひかり(南詩織),吉岡秀隆(溝口健一),江口のりこ(中島),柄本佑(堤下靖男),田中美佐子(大橋),笹野高史(運転手),緒形直人(沢田),知久寿焼,薬師丸ひろ子.
刑務所から出て富山の海辺の町で塩辛工場に就職した山田.社長の沢田はまっすぐな熱血漢,紹介された川っぺりの古いアパート・ムコリッタに落ち着く.入浴していると,隣室の島田が「給湯器が壊れたので風呂を貸してほしい」と言って来るが,断って追い返す.休日に金に余裕のない山田が自室で転がっていると,アパートの空き地で野菜を作っている島田が野菜を差し入れしてくれた.ようやく給料が出て飯を炊き食事をしていると,島田が風呂を貸せと入ってくる.止める間もなく入浴した島田は上がってくると,茶わんと箸を出してそのまま山田の飯を食べ始める.それから彼らはたびたび山田の飯と味噌汁と塩辛,島田の野菜と漬物という食事を共に摂るようになる….
山田が幼い時両親は離婚,高校生の時に母親は山田を捨てて男と逃げた.山田は食うためにバイトをした結果刑務所に入ることになった.役所から父の死の知らせが届く.父は孤独死で発見され,役所が火葬してくれた.山田は迷った挙句遺骨を引き取るが,遺骨とどう向き合ったものか心は定まらない.アパートには他に,毎日喪服を着て売れない墓石のセールスに歩き回っている溝口親子がおり,また山田は花の手入れをしている老婦人と言葉を交わすが,その人はもう何年も前に亡くなった岡本さんだという.次第にムコリッタの人々と交流できるようになった山田は,両親に捨てられ前科者になった自分を,見つめ直すようになっていく.
少し調子のおかしな住人たちに彩られた青年の再生の物語.おだやかな画面,降雨や夕焼,虫の声やヤギの鳴き声までが物語を進めていく様で心が癒される.アップの画面を少しずつ角度を変えながら回していくカメラも魅力的.終盤の松山ケンイチと満島ひかりとの長回しのシーンには泣かされる.
俳優は癖の強い腕利きの役者が揃っていて,見応えあり.薬師丸ひろ子がどこに出ているのかが話題になったが,彼女は「いのちの電話」の担当者で科白のみの出演だった.他に川っぺりに住むホームレスのギター弾きとして「たま」の知久寿焼が出ている.彼は顔は出すが科白はない.蛇足:ムコリッタ(牟呼栗多)とは、仏教における時間の単位のひとつで、1日(24時間)の1/30,48分を意味する言葉.
★★★☆(★5個が満点)
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