2024/12/09

独断的映画感想文:川っぺりムコリッタ

日記:2024年12月某日
映画「川っぺりムコリッタ」を見る.1_20241210153901
2021年.監督・脚本・原作:荻上直子.
出演:松山ケンイチ(山田たけし),ムロツヨシ(島田幸三),満島ひかり(南詩織),吉岡秀隆(溝口健一),江口のりこ(中島),柄本佑(堤下靖男),田中美佐子(大橋),笹野高史(運転手),緒形直人(沢田),知久寿焼,薬師丸ひろ子.2_20241210153801
刑務所から出て富山の海辺の町で塩辛工場に就職した山田.社長の沢田はまっすぐな熱血漢,紹介された川っぺりの古いアパート・ムコリッタに落ち着く.入浴していると,隣室の島田が「給湯器が壊れたので風呂を貸してほしい」と言って来るが,断って追い返す.休日に金に余裕のない山田が自室で転がっていると,アパートの空き地で野菜を作っている島田が野菜を差し入れしてくれた.ようやく給料が出て飯を炊き食事をしていると,島田が風呂を貸せと入ってくる.止める間もなく入浴した島田は上がってくると,茶わんと箸を出してそのまま山田の飯を食べ始める.それから彼らはたびたび山田の飯と味噌汁と塩辛,島田の野菜と漬物という食事を共に摂るようになる….3_20241210153801
山田が幼い時両親は離婚,高校生の時に母親は山田を捨てて男と逃げた.山田は食うためにバイトをした結果刑務所に入ることになった.役所から父の死の知らせが届く.父は孤独死で発見され,役所が火葬してくれた.山田は迷った挙句遺骨を引き取るが,遺骨とどう向き合ったものか心は定まらない.アパートには他に,毎日喪服を着て売れない墓石のセールスに歩き回っている溝口親子がおり,また山田は花の手入れをしている老婦人と言葉を交わすが,その人はもう何年も前に亡くなった岡本さんだという.次第にムコリッタの人々と交流できるようになった山田は,両親に捨てられ前科者になった自分を,見つめ直すようになっていく.4_20241210153801
少し調子のおかしな住人たちに彩られた青年の再生の物語.おだやかな画面,降雨や夕焼,虫の声やヤギの鳴き声までが物語を進めていく様で心が癒される.アップの画面を少しずつ角度を変えながら回していくカメラも魅力的.終盤の松山ケンイチと満島ひかりとの長回しのシーンには泣かされる.5_20241210153801
俳優は癖の強い腕利きの役者が揃っていて,見応えあり.薬師丸ひろ子がどこに出ているのかが話題になったが,彼女は「いのちの電話」の担当者で科白のみの出演だった.他に川っぺりに住むホームレスのギター弾きとして「たま」の知久寿焼が出ている.彼は顔は出すが科白はない.蛇足:ムコリッタ(牟呼栗多)とは、仏教における時間の単位のひとつで、1日(24時間)の1/30,48分を意味する言葉.
★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2024/12/02

独断的映画感想文:ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ

日記:2024年12月某日
映画「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」を見る.Vs1
2022年.監督:リー・ダニエルズ.
出演:アンドラ・デイ(ビリー・ホリデイ),トレヴァンテ・ローズ(ジミー・フレッチャー),ギャレット・ヘドランド(ハリー・J・アンスリンガー),ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ(ロズリン),ローレンス・ワシントン(ミス・フレディ),ロブ・モーガン(ルイス・マッケイ),ナターシャ・リオン(タルーラ・バンクヘッド),トーン・ベル(ジョン・レヴィ),エリック・ラレイ・ハーヴェイ(ジェームズ・モンロー),タイラー・ジェームズ・ウィリアムズ(レスター・ヤング).Vs5
1947年から亡くなる1959年までのビリー・ホリデイを描く.これ以前に彼女は「奇妙な果実」を歌い人気を博していた.公民権運動への影響を恐れた政府は,ビリーの麻薬癖に目を付け,麻薬取締局長官アンスリンガーは黒人捜査官ジミー・フレッチャーを採用してビリーを逮捕するチャンスをうかがう.1947年彼女は麻薬所持で逮捕され,懲役1年の刑を受ける.出所後ビリーはカーネギーホールでのコンサートを成功させたが,ニューヨークでの労働許可証を没収され,ニューヨーク以外で働かざるを得なかった.Vs4
前夫モンローと別れ彼女はジョン.レヴィにマネージメントを任せるが,彼はビリーの稼ぎをほとんど吸い上げ彼女を暴力で制圧した.アンスリンガーの指示でジョン・レヴィはビリーの部屋着に麻薬を仕込み,そこに捜査官が突入してビリーは逮捕されるが,裁判では証拠不十分で無罪となる.ビリーはその後バンドと共にツアーに出るが,ジミー・フレッチャーはアンスリンガーの指示でそのツァーの後をずっとつけていった.元来ビリーに好意を抱いていたジミーは(ビリーの最初の服役時に,自分が彼女の有罪に関与したことを謝罪していた),そのツァー中に彼女と恋仲になる….Vs2
描かれるビリーの苛烈な人生が心に残る.アンスリンガーは終生彼女を付け狙い,彼女の死の床に乗り込むことまでするが,一方彼女の男たちも彼女を支配し搾取する.ジミーとの関係は唯一対等な男女の恋愛として描かれるが,そのジミーと別れビリーは以前のマネージャー:ルイス・マッケイとよりを戻す.ビリーはジミーに,支配し君臨する男でないと不安だと語るのだ.その中で強い信頼感のもとに共演していた,サックス奏者:レスター・ヤングとの友情は印象的だ.彼はビリーが亡くなる4カ月前に亡くなっている.Vs3
主演のアンドラ・デイはR&Bシンガー,初めての演技経験らしいが素晴らしい存在感,歌もまことに見事で聴きごたえたっぷり.映画は正統派伝記映画ではなく脚色された物語となっているようだが,ビリー・ホリデイの生涯の苦闘は感銘的だった.蛇足:題名は原題通りだが,もうちょっと何とかならなかったのだろうか.長すぎるしイマイチぴんと来ない.
★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2024/11/25

独断的映画感想文:パリタクシー

日記:2024年11月某日
映画「パリタクシー」を見る.1_20241126215201
2022年.監督:クリスチャン・カリオン.出演:リーヌ・ルノー(マドレーヌ),ダニー・ブーン(シャルル),アリス・イザーズ(マドレーヌ(若き日)),ジェレミー・ラエルテ(レイモンド・アグノー),ジュリー・デラルム(カリーヌ).
タクシー運転手のシャルル,毎日走り回って家族を支えているが休日は週1日.免許の点数はあと2点しか残っていない.おまけに何か経済的な問題を抱えている様だ.今日もイライラと街を流していると,ある住宅からの迎車要請が入る.行ってみると小さな荷物を持った老婦人マドレーヌが待っていた.2_20241126215201
美しい目と銀髪のマドレーヌはもう92歳,今日は長年住んだ家を出て施設に入所するのだという.気さくに語りかけてくるマドレーヌに次第に応答していくシャルル.マドレーヌは回り道をして彼女が生まれた場所に行ってくれと言う.その建物の壁を見上げるマドレーヌ,そこはレジスタンスがナチスに銃殺された場所である旨のプレートが埋めてあり,彼女の父の名と命日が記されていた.やがて彼女は車に戻り,その後の彼女の人生を語りだす.父の死後すぐやって来たアメリカ軍,彼女はアメリカ軍兵士のマットと恋に落ち,マットの帰国後最愛の息子マチューを生んだ.マットからは一度手紙が来たが,彼は結婚し2児の父となっていた.3_20241126215201
マドレーヌはシャルルの妻のことも聞く.シャルルの妻カリーヌは高校の同級生で美人,皆が彼女を狙っていたがシャルルは父から借りたカメラでカリーヌのポートレートを撮り彼女の心を得ることに成功,以来ずっと人生のパートナーだ.やがてタクシーは劇場の前を通り,二人は監獄や裁判所の見えるセーヌの橋の上でひと休みする.5_20241126215201
マドレーヌは母と共に劇場でお針子として働きレイという溶接工の男と結婚するが,レイはマチューを邪魔者扱いし,マドレーヌに暴力をふるう毎日だった.レイがマチューに手を出した晩,彼女は反撃しレイに重傷を負わせる.マドレーヌは逮捕され,懲役25年の重刑を受けた.模範囚の彼女は13年後釈放されるが,その直後マチューは従軍カメラマンとして赴任したベトナムで命を落とす….
マドレーヌの語る衝撃の人生,その間にも彼女はシャルルにさまざまに話しかけ質問し,シャルルは久し振りに頬を緩ませ,声を出して笑うようになる.とげとげしかったシャルルの心が丸くなっていくのが,眼に見える様だ.マドレーヌは交通検問に引っかかって免停の危機に直面したシャルルを,機転を効かせて救ってくれたりもするのだ.「ひとつの怒りでひとつ歳をとり,ひとつの笑いでひとつ若返るのよ」とマドレーヌは言う.彼女の青い瞳が美しい.そう言えばカリーヌも美しい青い瞳をしていて,シャルルはそれに魅せられたのだった.6_20241126215201
思い出をめぐる彼らの旅はすっかり遅くなり,遅くなりついでにシャルルはマドレーヌをディナーに招待する.やがて介護施設に到着,シャルルはまた逢いに来るからと言ってマドレーヌと別れる.シャルルは帰宅し,この一日でマドレーヌがどんなに自分にとって大切な人になったかをカリーヌに話すのだった.物語は思いがけない結末を迎えるが,ラストシーンには涙を禁じ得ない.地味な映画だが,物語がどんどん展開しつつ維持される素敵な緊張感と,マドレーヌの語り口が魅力的で,一気に最後まで見た.映画らしい映画,見て損はなし.
★★★★☆(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2024/11/06

独断的映画感想文:水は海に向かって流れる

日記:2024年11月某日
映画「水は海に向かって流れる」を見る.1_20241107170301
2023年.監督:前田哲.
出演:広瀬すず(榊千紗),大西利空(熊沢直達),高良健吾(歌川茂道),戸塚純貴(泉谷颯),當真あみ(泉谷楓),勝村政信(榊謹悟),北村有起哉(熊沢達夫),坂井真紀(高島紗苗),生瀬勝久(成瀬賢三).
直達は高校の新入生,高校に近い叔父・茂道の家に厄介になることになる.移動当日駅に着くと土砂降り,その中を茂道に頼まれたと千紗が迎えに来る.茂道は実は親に内緒で脱サラして漫画家になり,シェアハウスに住んでいる.そこには他に女装の占い師・颯と放浪癖のある大学教授・成瀬が住んでいた.千紗はきわめてぶっきらぼうだが気が向くと料理を作ってくれる,成瀬の友人の娘である.直達は翌日早速登校するが,途中で子猫を拾い,それが縁でクラスで一番の美少女楓と知り合うが,楓は颯の妹だった.4_20241107170301
千紗と同居するうち直達は淡い憧れを抱くようになるが,実は千紗の母と直達の父はW不倫で10年前に駆け落ちした仲だった.千紗は直達を迎えに行ったとき渡された直達の家族写真からそのことを知り,そのことを成瀬に話すが,その話を直達と楓は立ち聞きしてしまった….5_20241107170301
直達の父は今は戻ってきて元のさやに納まっているが,千紗の母はそれ以来行方不明である.以来千紗は恋愛なんかしないと思い決めて生きてきた.一方直達は父の不倫は子どもの時のことで覚えていないが,男女のことには鈍感な方である.一方楓は直達に恋心を抱いて何かとアタックしてくる,という何というか微妙・アンバランス・イレギュラーな三角関係の物語.3_20241107170301
原作は漫画であるが,いかにも漫画らしい設定と展開の映画である.人物の造形もかなり漫画チックだし描かれる世界はごくごく狭い範囲で,そう言う物語を映画は妙に丁寧に描いているので,やや間延びした感じ.広瀬すずちゃんファンなら一見の価値あり,そうでなければそれなりに.2_20241107170301
★★★(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2024/10/28

独断的映画感想文:怪物

日記:2024年10月某日
映画「怪物」を見る.1_20241029222301
2023年.監督:是枝裕和.音楽:坂本龍一.
出演:安藤サクラ(麦野早織),永山瑛太(保利),黒川想矢(麦野湊),柊木陽太(星川依里),高畑充希(鈴村広奈),角田晃広(正田文昭),中村獅童(星川清高),田中裕子(伏見真木子).3_20241029222201
父を亡くし母子家庭で暮らす早織と湊.最近,湊の様子がおかしい.怪我をして帰ってきたり,部屋の中で荒れたりする.湊は担任の保利先生が暴力をふるい暴言を吐くと云う.早織は学校に行って校長に事情を聴くが,すぐに幹部教員と保利が現れ,形ばかりの謝罪を繰り返す.具体的なことを尋ねても紋切り型の謝罪以外は一切答えない教員たち.幾度か学校を訪ねるうちに保利先生と教員たちに怒りと疑念を感じる早織,ついに学校で集会があり保利は保護者たちの面前で謝罪をする事態となる.2_20241029222201
ここで画面は変わり,映画は再び保利の視点から事態を記述する.新任教師として赴任し児童と学校に馴染もうとする保利,保利は星川依里がいじめられていることに気付く.その現場の近くには常に湊がいる様だ.その湊が教室で暴れていた場に来合わせた保利は,止めようとして湊に接触,湊は鼻血を出す.湊は依里をいじめているのではないか,保利は湊を追及しようとする….6_20241029222201
湊,依里,保利をはじめとするクラスの面々,校長をはじめとする教員たち,学校を追及し続ける早織,いったい誰が「怪物」なのか,湊はいじめっ子なのか.後半,映画は湊と依里の視点から三たび事件の経過を追う.その真相はどうか.4_20241029222201
次第に埋まっていくジグソーパズルの全体像.ある嵐の夜真相を悟った保利は湊の自宅を訪ねるが,湊も依里も姿を消していた.早織と共に二人の行方を追う保利,嵐は激しさを増し道路は山崩れで遮断される中,二人は何を見たか….5_20241029222301
息苦しい閉塞感のある私たちの社会,その大人たちの言動を反映する子供たち.その社会を構成する一人一人の怪物化が私たち自身の首を絞めていく.最後に,何ものにも束縛されず緑野を駆けていく少年たちと,それに重なる坂本龍一のピアノ.このラストシーンには涙を禁じ得ない.
★★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2024/10/18

独断的映画感想文:ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー

日記:2024年10月某日
映画「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」を見る.21
2023年.監督・脚本:阪元裕吾.アクション監督:園村健介.
出演:高石あかり(杉本ちさと),伊澤彩織(深川まひろ),丞威(ゆうり),濱田龍臣(まこと).
うだつの上がらない殺し屋アルバイター:ゆうりとまことの神村兄弟,2人は正規の殺し屋を倒せば,空いた枠に繰り上がれるという噂を頼りに,ちさととまひろを狙うことにする.22
一方,抜群の腕を持つ正規の殺し屋にもかかわらず,相変わらず社会不適合のポンコツ二人組ちさととまひろ.ほったらかしていたジムの請求書が莫大な額になって期日ぎりぎりに銀行に行くが,間が悪くそこに銀行強盗が押し入る.15時までに支払おうとやむなく強盗を退治してしまう二人,しかし組織は勝手に仕事をしたとして二人を謹慎処分とする.仕方なくアルバイトで日銭を稼ぐ二人,そこに神村兄弟の襲撃が迫る….23
第2作も,乾いた殺しのシーンと激しいアクションが,コメディー部分と併せて快調なテンポとリズムで展開する.終盤の神村兄弟とちさと・まひろの死闘とが見ごたえあり.その後死力を尽くし傷つき合った4人がしばし交歓するシーンも印象的.見て損はなし.24
★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2024/10/17

独断的映画感想文:SHE SAID/シー・セッド その名を暴け

日記:2024年10月某日
映画「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」を見る.She-said-1
2022年.監督:マリア・シュラーダー.
出演:キャリー・マリガン(Megan Twohey),ゾーイ・カザン(Jodi Kantor),パトリシア・クラークソン(Rebecca Corbett),アンドレ・ブラウアー(Dean Baquet),ジェニファー・イーリー(Laura Madden),サマンサ・モートン(Zelda Perkins).She-said-2
ニューヨーク・タイムズの2名の女性記者が,映画プロデューサー:ハーヴェイ・ワインスタインの数十年にわたる性暴力犯罪を追究し,遂に記事を公開するに至る物語.トランプ大統領候補のセクハラ事件を告発した記者ミーガンは,直接脅迫電話を受ける事態となるなか,産休に入る.一方ジョディはワインスタインのセクハラ情報を入手するが,被害者たちの口は堅かった.She-said-4
産休から復帰したミーガンと共に,ワインスタイン事件の取材を続ける二人,さまざまな関係者にあたり話し合いを続けるが,その壁をなかなか突き崩せない.被害者の多くはワインスタインの犯罪を会社に訴えるが,ミラマックス社は社の資金から膨大な示談金を払い続け,引き換えに証拠書類の引き渡しと秘密保持契約の締結を求めた.被害者側の弁護士も金銭的に有利な示談を勧め,結果として被害者は口を封じられてしまう,その構造が次第に明らかになって行く….She-said-3
ハードで気の抜けない取材を続けていく一方で,ジョディもミーガンも子育て中だ.家庭でも夫と育児家事を分担しつつ,夜中にかかる電話にも対応し続ける二人の戦いが印象的.途中からはワインスタインの弁護士,ワインスタイン自身がニューヨーク・タイムズ社に乗り込み激しく抗議するが,取材チームの上司らも含めた結束が見事,逆にその弁護士やミラマックス社の社員たちにも取材を重ねて,情報を取っていく.映画は一定のリズムで記者たちの取材の積み重ねを記述し,次第に緊張感が高まっていく経過を描く.俳優陣も,等身大の記者たちが全力を挙げて取材に奔走する様を演じ,共感できる.告発者の一人として,アシュレイ・ジャッドが本人役で出演しているのも感銘的だ.見ごたえある映画,お勧めです.She-said-5
★★★★☆(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2024/10/16

独断的映画感想文:ベイビーわるきゅーれ

日記:2024年10月某日
映画「ベイビーわるきゅーれ」を見る.1_20241022163901
2021年.監督:阪元裕吾.アクション監督:園村健介.
出演:髙石あかり(杉本ちさと),伊澤彩織(深川まひろ),三元雅芸(渡部),秋谷百音(浜岡ひまり),うえきやサトシ(浜岡かずき),福島雪菜(姫子),本宮泰風(浜岡一平),水石亜飛夢(田坂さん),飛永翼(須佐野).4_20241022163901
人気アクションシリーズの第1作.女高生の二人組ちさととまひろは腕の良い殺し屋.しかし日常生活的にはポンコツの二人,高校卒業を機に組織からはバイト等で社会に馴染んで生きていく様に指示される.仕方なくメイド喫茶にバイトで入る二人,しかしまひろは客あしらいが全くできず採用されない.ちさとが勤めたある日,ヤクザの浜岡の親子が客で来る.当初はビジネスの参考として様子を見ていた二人,しかししまいに切れて居合わせた女子バイトをみな拉致して売り飛ばすと言い出す.ちさとが応戦して二人を射殺するがクビになり,更に浜岡の娘ひまりが二人に宣戦布告の電話をかけてくる….3_20241022163901
殺しとなれば間違いなく仕事をこなすのに,バイトひとつ満足にできない二人組の青春を描くコメディ.マネージャーの須佐野さんや,死体処理係の田坂さん等腕利きスタッフも登場して,楽しい殺し屋生活が繰り広げられる.乾いた殺しとコメディのテンポが良く快調なリズムの1時間半,アクションは本格派でこれも楽しい.2_20241022163901
★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2024/10/08

独断的映画感想文:ドキュメンタリーオブベイビーわるきゅーれ

日記:2024年10月某日
映画「ドキュメンタリーオブベイビーわるきゅーれ」を見る.1_20241016141401
2024年.監督・構成・撮影・編集:高橋明大.構成:赤坂浩亮.出演:髙石あかり,伊澤彩織,池松壮亮,前田敦子,大谷主水.2_20241016141401
アクションシーンのメイキング中心にプロデューサー,監督,アクション監督,主演3名のインタビューを交えた映像.独特のテンポがあって,アクションシーンは同じアクションを完成するまで幾度も繰り返すその経過を撮っているが,全く飽きることはなく,むしろ繰り返すたびに緊張感と迫力が増していくのがスリリングだ.3_20241016141401
主演や監督の,一シーンに対しどういう完成度を求めているかの議論が白熱し,それを実現していく過程が繰り返されるリハーサルの中で組みあがっていく,その俳優と監督たちの苦闘が胸に迫る.現場のすべての人々の集中力と熱い思いが画面からほとばしり,感動した.後半の激しいリハーサルと本番の畳みかけ,ラストシーンの解放感,95分間息もつかせない迫力だ.見応え十分.
★★★★☆(★5個が満点)4_20241016141401
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2024/09/26

独断的映画感想文:すずめの戸締まり

日記:2024年9月某日
映画「すずめの戸締まり」を見る.1_20240929215601
2022年.監督・脚本・原作:新海誠.
出演(声):原菜乃華(岩戸鈴芽),松村北斗(SixTONES)(宗像草太),深津絵里(岩戸環),松本白鸚(宗像羊朗),染谷将太(岡部稔),伊藤沙莉(二ノ宮ルミ),神木隆之介(芹澤朋也).2_20240929215601
宮崎の女子高生岩戸鈴芽はある朝の登校途中,すれちがった青年から「この辺に廃墟はあるか」と聞かれたことが気になり,引き返して昔温泉街だった廃墟に行ってみる.そこで不思議な扉を見つけた鈴芽,扉の向こうには美しい花野が見えるが,身体は扉を通過するだけ.付近に落ちていた神像のような石を拾うと,その瞬間石は猫に変身して姿を消した.5_20240929215601
高校に戻ると廃墟からは不思議な渦が立ち昇っているのが見える.彼女にしか見えないその現象に驚いた鈴芽が再度廃墟に行くと,先ほどの青年・草太が扉からあふれ出る渦を押さえ扉を閉めようと奮闘していた.協力して扉を何とか戸締りした二人,怪我をした草太の手当てのため鈴芽の家に行くと姿を消した猫・ダイジンが現れ,草太は鈴芽が幼いとき使っていた脚が1本欠けた木の椅子に姿を変えられてしまう.二人の猫を追う旅が始まる….3_20240929215601
最初の30分足らずでこのような無茶苦茶な設定と展開となり始まる長編アニメ.草太は日本各地にある「扉」から渦が抜けだして災いが起きないように戸締りをして回っている,「閉じ師」を家業としている青年.ダイジンを追って愛媛,神戸と行くたびに扉から渦があふれ出し,二人は奮闘して何とか扉を戸締りし続けるが,東京の渦との戦いが二人の運命をかけた戦いとなる.4_20240929215601
鈴芽は母子家庭で育ち,大震災で母は行方不明となり以降叔母の環に宮崎で育てられた.しかし幼い頃廃墟となった自宅近くの扉を抜けて花野にさ迷い出,失くした自分の椅子を誰かから受け取った記憶がある.その扉をもう一度見つけ,自分の運命を切り開こうとする鈴芽の最後の旅.6_20240929215601
アニメらしい無茶苦茶な設定とあれよあれよの展開,ついていくのは大変だが,物語の怒涛の進展につい引きずられて見てしまった.渦の本態も,何故花野から渦のようなものが溢れだしてくるのかも,猫の位置づけも,全てわからないままだが,鈴芽の真情と恋心に全て吹き飛ばされてしまうという映画.アニメの美しさは折紙つき.
★★★☆(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0)

より以前の記事一覧