独断的映画感想文:アンダーカレント
日記:2025年7月某日
映画「アンダーカレント」を見る.
2023,日本.監督:今泉力哉.脚本:澤井香織,今泉力哉.音楽:細野晴臣.
出演:真木よう子(関口かなえ),井浦新(堀隆之),リリー・フランキー(山崎道夫),永山瑛太(関口悟),江口のりこ(菅野よう子),中村久美(木島敏江),康すおん(田島三郎),内田理央(藤川美奈).
家業の月之湯を亡父から引き継いだかなえ,ところが夫・悟は1カ月前に組合の慰安旅行先で失踪してしまった.組合を通じて従業員を募集し,パートの木島と営業を再開したかなえ,ある朝堀と云う男が応募してやってくる.その日から堀は住み込みで働き始め,常連客も徐々に戻ってきた.暫くして堀はアパートに移り通いで働くことになった.常連の田島老人とも将棋を打つ中になったが,堀は無口で自分のこともほとんど話さない.
かなえはある日スーパーで赤ん坊を連れた旧友・菅野と出会う.悟とも知り合いの菅野に,かなえは悟の失踪を打ち明け,菅野は知人の探偵・山崎を紹介してくれた.山崎はちょっと変わった胡散臭い風体,しかし悟のことをかなえから聞き取り,調査に取り掛かることになる.ところが最初の調査報告で,悟の両親は2年前まで健在だったことが分かった.悟からは自身が交通遺児で施設で育ったと聞いていて,母を早くに亡くした自分と心が通うところもあると思っていたかなえは呆然とする.ある日,月之湯の常連客・藤川美奈の8歳の娘が帰宅せず,ランドセルが路上で発見されるという事件が起こる.かなえはそれを聞いて気を失ってしまう….
かなえは子どものころさなえという自分によく似た少女と親友だった.しかしさなえはある日事件に巻き込まれ近くの池で死んでしまう.かなえは以来,自分が首を絞められ水の中に沈んでいく夢を見るようになったのだった.かなえの心に残ったのはどういう傷なのか.悟は何故かなえに嘘をついていたのか.悟は何故失踪したのか.堀はどういう人物なのか.映画は終盤に向けその謎を明らかにしてゆく.
コミックが原作の映画,登場人物は何となく物語の展開に都合のいい人物が多い.それを腕利きのベテラン俳優たちが何とかリアルな存在に感じさせるように奮闘している印象があって,面白い.真木よう子が,強気の様で繊細,てきぱきしているようで童女のような感じの主人公をうまく演じて見応えあり.田島を演じた康すおんも面白かった.嘘をつく悟,自身に封じられた記憶のあったかなえ,自分を語らない堀,この3人がどうなるのか.映画のあと味は悪くない.
★★★☆(★5個が満点).
蛇足:この映画のポスターは,ジャズピアノの名人ビル・エヴァンスと同じくギターの名演奏家ジム・ホールの1962年のコラボレーションアルバム「アンダーカレント」のジャケット写真(右の写真)に,ヒントを得たものと思われる.ともに良いセンス.
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