2026/07/30

独断的映画感想文:今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は

日記:2026年7月某日
映画「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」を見る.1_20260731174401
2025年.日本.監督・脚本:大九明子.
出演:萩原利久(小西徹),河合優実(桜田花),伊東蒼(さっちゃん),黒崎煌代(山根),安齋肇(マスター),浅香航大(さっちゃんの父),松本穂香(夏歩),古田新太(佐々木).2_20260731174401
徹は祖母の死後半年ほど大学を休学していた.久しぶりに登校し,唯一の親友山根と再会する.また,大学正門前のカフェの看板犬さくらとも再会する.一方,同じ講義に出ている桜田花に興味を持つ.夜には同じく休んでいたバイト先の銭湯「七福温泉」に行き,主人やバイト仲間のさっちゃんと再会する.3_20260731174301
桜田花とはとあるきっかけから知り合うようになり,彼女がさくらのいるカフェでバイトしていることも知る.友人のいない者同士のおずおずした付き合いが始まり,偶然にもいろいろ共通点を持つことを知る二人.その日は構内にある関西大学初の女子学生・北村兼子氏の展示を見たり,夕方また偶然にも再会して阪急電車に乗って水族館に行ったり,その後ボーリングをしたりしているうちに朝となる.二人は老マスターのいる古い喫茶店で朝食を取る.一方ある夜,徹はバイト仲間のさっちゃんに付き合い始めている人がいることを悟られてしまうが,その翌日からさっちゃんはバイトに来なくなった.更に朝いつもの喫茶店で会い,午後の再会を約束していた桜田花も,その日から忽然と姿を消す….5_20260731174301
大学の2回生というから19歳か20歳の男女の不器用な交友の進展を,既に25~6歳の萩原利久と河合優実が,見ていて痛さを感じるほどうまく演じている.更にこの映画は後半で,さっちゃん,桜田花,徹のそれぞれが5分から8分ほどの長い長い独白をするシーンがあり,その各シーンもまことに感銘的.本作はこの3人の俳優を見る映画と言って過言ではない.4_20260731174401
舞台となる関西大学も懐かしく,また桜田花とさっちゃんの関西弁も(伊藤蒼は大阪出身だから当たり前として)ツボにはまった巧みさで,これも印象的だった.脇を固める黒崎煌代,古田新太や安齋肇もいずれも素敵だ.6_20260731174301
本作を回転していくネタの一つはセレンディピティ(素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見したりすること)だが,恋愛が始まるときのドキドキする前半のそれと,後半のそれとの異なった味わいも面白かった.スピッツの「初恋クレージー」をはじめとする音楽の扱いも好ましい.見応え・手ごたえ充分の映画.
★★★★(★5個が満点).

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2026/06/30

独断的映画感想文:ルノワール

日記:2026年6月30日
映画「ルノワール」を見る.1_20260703141601
2025年.日本=フランス=シンガポール=フィリピン.監督・脚本:早川千絵.
出演:鈴木唯(沖田フキ),石田ひかり(沖田詩子),中島歩(御前崎透),河合優実(北久里子),坂東龍汰(濱野薫),リリー・フランキー(沖田圭司).2_20260703141601
映画の冒頭,世界中の子供が泣いている映像が次々に現れるビデオを見ているフキ.見終わるとそのビデオを紙袋に入れて,マンションのゴミ捨て場に置きに行く.その時黒いシャツを着た男に声を掛けられるが,躱して部屋に逃げ帰る.ところがその夜,フキは部屋で黒いシャツの男に襲われ,殺されてしまう.それを知らせるニュース映像,葬式の両親の沈痛な面持ち.と思ったら教室で作文を読んでいる小5のフキ,「夢で良かったです.終わり」と読み終えて若干得意げな顔をする….4_20260703141601
フキは勝気でしっかりした女の子,作文も得意だが内容は若干夢見がちである.今は自身の超能力の開発に夢中だ.父親は会社員だが末期がんで入退院を繰り返している.母親も会社員で部下も持っているが,最近部下にパワハラを申し立てられ,研修を受けさせられている.家でひとり留守番をすることの多いフキ,病院に行って父親と遊んだり,英会話で一緒の子の家に行ったり,マンションで出会った北久理子の家に行って彼女を催眠術にかけたり(彼女は最近夫を亡くした.その夫は世界中の子供が泣いている映像が次々に現れるビデオを見ていた,と久理子は言う),家に来た伝言ダイヤルのチラシの指示に従って自称大学生と電話で会話を交わしたりする.5_20260703141601
でも世界はフキの目にどう映っているのだろう.父親は怪しげな気功療法のサークルに大枚を払って参加している.母親は研修先の講師に恋心を抱いて,その知り合いがやっているという怪しげな健康食品を大量買いする.英会話の子の家の父親は浮気をしているようだ.「大学生」はフキを誘い出して自宅に連れ込んだりする.それらの大人の事情や葛藤を,フキは透明な目で観察し,また夢に見たりする.そういうフキの目を通したフキと周辺の人々のひと夏の物語.3_20260703141601
主演の鈴木唯のきっぱりした演技が印象的だ.両親を演じる石田ひかり,リリー・フランキーもリアルな芝居.時々さしはさまれるフキの夢(妄想?)と思しき画像にも翻弄されながら(時々どのシーンが夢なのか現実なのか判らなくなる時もあり),日めくりのようにフキの日々を追っていく展開に引き込まれてゆく.フキが思春期ではなくその手前の少女だというところが,この映画のポイントであり,映画が深刻にならない境界線なのだろう.最後まで面白く見た.
★★★★(★5個が満点).

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2026/06/13

独断的映画感想文:夏の砂の上

日記:2026年6月某日
映画「夏の砂の上」を見る.1_20260619152801
日本.2025年.監督・脚本:玉田真也.
出演:オダギリジョー(小浦治),高石あかり(優子),松たか子(小浦恵子),森山直太朗(陣野),高橋文哉(立山),篠原ゆき子(陣野の妻),満島ひかり(阿佐子),光石研(持田).3_20260619152801
猛暑続きで断水にまで至っている夏の長崎,小浦治のもとに妹・阿佐子が17歳の娘・優子を連れてやってくる.博多で男が出した金でスナックを開くため,しばらく優子を預かってくれというのだ.治があっけにとられるうちに強引に優子を置いて去ってゆく阿佐子,突然治と優子との二人の生活が始まる.2_20260619152801
治はかって幼い息子を事故で亡くし,以来無気力な日々を送っている.不況で勤めていた造船所は倒産した.妻・恵子は治を見限り,治の若い同僚・陣野と暮らしている.治は溶接工にこだわっているが,治の年齢では容易に仕事を見つけることはできない.優子は高校へは行かずスーパーでアルバイトを始めるが,そこの先輩アルバイト・立山が声をかけてくる….
時代の波に翻弄され周囲の人たちに置いてきぼりを喰っている治と,親に放任され人にも仕事にも関心を持たない優子との,ひと夏の物語.じりじり照り付ける太陽,転職後の過労で命を落とすかっての同僚,若い陣野は他県の造船所に職が決まり恵子は彼についてゆくという.その中で治と優子は徐々に心を通い合わせてゆく….4_20260619152801
松たか子,満島ひかり,光石研が出ているがいずれも脇役(それぞれ存在感はあるけれど).この映画はオダギリジョーと高石あかりの映画だ.特に高石あかりが面白い.無表情だった優子が一転,顔をくしゃくしゃにして治と笑い興じる土砂降りのシーンが印象的.5_20260619152801
物語は特にハッピーエンドという訳ではない.治は離婚届に判を押し恵子は去り,優子は突然帰ってきて今度はカナダに行くと言う阿佐子に連れられ無表情のまま去ってゆく.しかし優子と治は何かが変わった様だ.別れ際に優子にもらった帽子を頭に載せ,灼熱の坂道をぶらぶら歩いてゆく治のラストシーンが心に残る.映画らしい映画.
★★★☆(★5個が満点).

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2026/06/03

独断的映画感想文:アイム・スティル・ヒア

日記:2026年6月某日
映画「アイム・スティル・ヒア」を見る.1_20260611184801
2024年.監督:ウォルター・サレス.
出演:フェルナンダ・トーレス(エウニセ・パイヴァ),フェルナンダ・モンテネグロ(エウニセ・パイヴァ(老年期)),セルトン・メロ(ルーベンス・パイヴァ),ギリェルミ・シルヴェイラ(マルセロ・パイヴァ),アントニオ・サボイア(マルセロ・パイヴァ(成人期)),ヴァレンティナ・エルサージ(ヴェローカ・パイヴァ),マリア・マノエラ(ヴェローカ・パイヴァ(中年期)),ルイーザ・コゾヴスキ(エリアナ・パイヴァ),マルジョリー・エスチアーノ(エリアナ・パイヴァ(中年期)),バルバラ・ルス(ナル・パイヴァ),ガブリエラ・カルネイロ・ダ・クーニャ(ナル・パイヴァ(中年期)),コーラ・モーラ(バビウ・パイヴァ),オリヴィア・トーレス(バビウ・パイヴァ(成人期)).3_20260611184801
ルーベンス・パイヴァはブラジルの元国会議員,1964年のクーデター時に国会議員を罷免されて以降は,土木建築家として5人の子どもと妻エウニセとともに穏やかに暮らしている.左派によるスイス大使誘拐事件に対し軍事政権は急進化し,友人2名はロンドンに亡命,ルーベンスは長女ヴェラを留学名義で彼らに同行させる.
この年の1月,ルーベンスの自宅を軍の要員が訪れ,供述を求めて彼を連れ去る.そのままルーベンスの行方は分からなくなる.エウニセは夫の人身保護を申請するが,ある夜エウニセと15歳の次女エリアナが軍の要員に連行される.そのままエウニセは12日間,エリアナは24時間拘束され尋問を受けた.釈放後エウニセはルーベンスの消息を求め奔走するが,軍当局は公式の確認を拒否し続けた….4_20260611184801
1971年リオデジャネイロで発生した事実に基づく映画,原作は長男マルセロ・パイヴァの回想録.事件後,自宅を売り払ってサンパウロに移り,5人の子どもを育てながら大学に戻って弁護士となり,ルーベンスの行方を追究し続けるエウニセの不屈の戦いを描く.2_20260611184801
エウニセが,一人一人の子どもたちと向き合い,それぞれを愛情深く育てながら,時には叱咤し時にはともに涙を流すその描写が,まことに感銘的だ.ロンドンでルーベンスの死亡説が報道され,それを手紙でヴェラが知らせてくる.子供たちの前でその手紙を読みながら,その部分だけ飛ばして読むエウニセとそれに気づいたエリアナのシーンが印象に残る.25年後,軍政終了後10年以上たって国家はルーベンスの死亡を正式に認めた(ただし遺骸は行方不明のまま).また関与した5名の要員も特定されたが,彼らは訴追されなかった.5_20260611184801
この映画はブラジルで熱狂的な支持を得,また2024年のアカデミー賞国際長編映画賞を獲得した.エウニセを演じたフェルナンダ・トーレスの存在感と緊張に満ちた演技が素晴らしい.映画は2014年,既に認知症の進んだエウニセを家族が囲み,誕生日を祝うシーンで終了する.TVでルーベンスの事件の回顧が放送され,一瞬目を見張って画面を注目する老いたエウニセは,フェルナンダ・トーレスの実母でこのとき94歳の大女優:フェルナンダ・モンテネグロが演じている.蛇足ながら,この監督の映画は20年以上前に見た「モーターサイクル・ダイアリーズ」以来だ.監督の健在と活躍に拍手!
★★★★☆(★5個が満点)

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2026/06/02

独断的映画感想文:アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師

日記:2026年6月某日
映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」を見る.1_20260605145701
2024年.監督:上田慎一郎.
出演:内野聖陽(熊沢二郎),岡田将生(氷室マコト),川栄李奈(望月さくら),森川葵(白石美来),後藤剛範(村井竜也),上川周作(丸健太郎),鈴木聖奈(五十嵐薫),真矢ミキ(五十嵐ルリ子),皆川猿時(八木晋平),神野三鈴(酒井恵美子),吹越満(安西元義),小澤征悦(橘大和).2_20260605145701
映画の冒頭,脱税容疑の橘のパーティーに乗り込み対決する税務署員のさくらと熊沢,しかしその面前でわざと転んだ橘は,暴行で二人を訴えると宣言,上司の安西の指示で熊沢は橘に謝罪をすることになり,屈辱的な仕打ちを受ける.5_20260605145701
一方刑務所を出所した詐欺師マコトは早速詐欺の仕事に精を出し,中古車の架空販売で熊沢をひっかけ,80万円を騙し取る.熊沢の親友の刑事・八木の尽力でマコトを押さえた熊沢,しかしマコトは意外な申し出をする.自分とチームを組んで橘から大金を詐取できたら,自分を見逃してくれというのだ.熊沢は悩んだ末,マコトと協力して橘と対決することにするが….4_20260605145701
熊沢にはかって,同期だった税務署員が橘を告発したものの,罠にはめられ汚名を着せられ馘になり,自殺したという苦い過去があった.実直な税務署員である熊沢はマコトとその仲間とチームを組み,橘をひっかけるための準備に没頭する.準備段階は無事通過し,いよいよ不動産詐欺の本番当日を迎えるが,安西が熊沢の不審な動きを橘に通報したことで計画はバレバレになり,橘の部下・神野が通報してマコトらは急行した警察に全員逮捕される….3_20260605145701
さてこの状況からどうエンディングに持っていくかだが,映画はその大逆転を見事にやってのける.その点でエンタテインメントとしてはきっちり合格点.内野聖陽,小澤征悦の好演が期待通りだが,皆川猿時,神野三鈴らのわき役陣も良い味で素敵だった.結局,こういう映画ではプロローグであろうがエピローグであろうが,油断してはいけないと云うことを,改めて学習した次第,面白かった.
★★★★(★5個が満点).

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2026/05/01

独断的映画感想文:お坊さまと鉄砲

日記:2026年5月某日
映画「お坊さまと鉄砲」を見る.1_20260504142301
2023年.ブータン=アメリカ=フランス=台湾.監督・脚本:パオ・チョニン・ドルジ.
出演:僧侶タシ(タンディン・ワンチュク),ラマ(ケルサン・チョジェ),ベンジ(タンディン・ソナム),ロン(ハリー・アインホーン),選挙委員ツェリン(ペマ・ザンモ・シェルパ).2_20260504142301
2006年ブータンのウラ村,折しもブータン初の総選挙を控え,その模擬選挙の準備で村は大騒ぎ.国王陛下ワンチュク4世が,立憲民主制への移行と自身の退位を発表したのだ.選挙管理委員のツェリンは投票率の向上を目指し,必死の宣伝活動に歩き回っている.一方そのニュースを聞いた村のラマは,「物事を正すため」若い僧侶タシに満月の日までに2丁の銃を準備するように言いつける.タシはびっくり,しかしラマの命令は絶対だ.村中を探して銃の持ち主を探す.
その頃アメリカの銃収集家ロンはウラ村に古い銃があると聞き,ガイドのベンジーと共にウラ村にやってくる.銃の持ち主ペンジョーに会うと,銃は果たして南北戦争時代の逸品だった.ロンが7万ドル出すと云うとペンジョーは仰天,もっと安く買ってくれと懇願する.話は結局3万ドルでまとまり,金を用意して翌日取引することになり,二人は一旦帰る.入れ替わりにペンジョーを尋ねあてたタシ,ラマが銃を求めていると聞くと,ペンジョーはその場でラマに銃を供物として捧げると申し出た.模擬選挙の行方はどうなるのか.ラマが銃を求める理由は何か?銃は誰のものになるのか?….3_20260504142301
村は初めての選挙をめぐって騒然としている.小学生のユペルは父が新興実業家を公然と支持したので,保守派の支持者を親に持つ子どもたちからいじめられ,おまけに多忙な父が消しゴムを買い忘れたため先生に叱られるなど,苦難の日々を送っている.ツェリンの助手を務めるユペルの母は,そんなユペルを心配し選挙は本当にみんなの幸せにつながるものなのかと,ツェリンに訴える.4_20260504142301
ブータンの山深い村の朴訥な人々を巻き込んだ大騒動の顛末.国王の意を汲みブータンの近代化民主化に取り組む人々,「物事を正すため」に渾身の祈りをささげるラマ,この映画の登場人物には悪い人は(ほとんど)出てこない.5_20260504142301
また,ところどころに差し込まれる風刺精神も面白い.例えば,選挙管理委員は選挙は意見を戦わせる場だと云い,模擬選挙では赤か青かの対決を演出するが,開票して見れば第3の色である黄色が圧倒的多数だった.黄色は国王陛下の色なのだ.映画最後の着地点もほのぼのとしたハッピーエンドで癒される.見て損はないブータンの物語.
★★★★(★5個が満点)

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2026/04/16

独断的映画感想文:花まんま

日記:2026年4月某日
映画「花まんま」を見る.
2025年.監督:前田哲.1_20260417175401
出演:鈴木亮平(加藤俊樹),有村架純(加藤フミ子),鈴鹿央士(中沢太郎),ファーストサマーウイカ(三好駒子),安藤玉恵(加藤ゆうこ),オール阪神(三好貞夫),オール巨人(山田社長),田村塁希(俊樹幼少期),小野美音(ふみこ幼少期),六角精児(繁田宏一),キムラ緑子(繁田房枝),酒向芳(繁田仁).2_20260417175401
東大阪に住む俊樹とフミ子の兄妹,両親はすでにない.父は二人が幼い頃事故で亡くなり,母は二人を育て身体を壊し,フミ子が中学生の時に亡くなった.俊樹は両親の言いつけ通りフミ子を育て上げ,いま社会人となったフミ子は結婚も決まった.相手・太郎はカラスと会話できるという大学の研究者,いたって温厚な好青年だ.着々と進む結婚準備,フミ子の引っ越し準備も同時に進んでいる.ところがフミ子には大きな秘密があった.フミ子には繁田喜代美という亡くなった女性の記憶があり,彦根に住む喜代美の父,姉,兄との交流が続いていたのだ….3_20260417175401
6才の時フミ子に繁田喜代美の記憶が蘇った.フミ子は兄に懇願してその彦根の家に連れて行ってもらう.繁田の父・仁は7年前の喜代美の死以来,食事を摂れず苦しんでいたが,フミ子はその父に花びらで弁当をかたちづくった「花まんま」を送る.喜代美がよく作っていたという花まんまを見て,仁はフミ子が喜代美の生まれ変わりであることを確信し,食事を摂れるようになる.しかし俊樹はそれ以上のフミ子と繁田家との交流を禁じて,彦根を後にした.だがそれから22年,結婚の直前になって,フミ子が兄に隠して繁田仁と文通し,また繁田家をしばしば訪れていたことが明らかになる….4_20260417175401
死者の生まれ変わりというエピソードを絡めた,親と子・兄と妹の愛情の物語.兄妹の真情が語られるシーンや,繁田の父とフミ子のシーン,終盤の結婚式のシーンではいやというほど泣かされる.一方大阪が舞台だけあって,関西風のギャグや冗談がテンポよく飛び交い,また太郎がカラスと話して俊樹の危急を助けるというとぼけた活躍もあり,大いに笑わせられる.時々夢に共に出て来て,俊樹を激励したり,時には事情説明(?)したりする両親の幽霊も傑作.演技陣はオール巨人・阪神の師匠たちも含め文句ない活躍,特に田村塁希・小野美音子の両子役は素晴らしかった.映画の最後の着地点もまことに納得のゆく適切なもので,一見の価値ある映画.5_20260417175401
★★★★(★5個が満点).

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2026/04/15

独断的映画感想文:遠来 トモベのコトバ

日記:2026年4月某日
新宿K's cinemaへ.映画「遠来 トモベのコトバ」を見る.1_20260416210101
2026年.日本.監督:伊勢真一.
出演:友部正人,小野由美子.2_20260416210101
ジョン・レノンが亡くなった頃,友部正人はニューヨークにいた豊田勇造からハガキをもらった.そのハガキがきっかけになって,友部正人は「遠来」という唄を作った.友部自身も,子供が成人したことをきっかけに,妻とともにニューヨークに移り住んだ.ドキュメント映画の監督・伊勢真一は,その友部をニューヨークに訪ねて,その暮らしと友部の唄を撮影した.もう10年ほど前の話だ.この5~6年の世界の変化を見ながら,撮影した映像を今映画にしようと決め(その気持ちは何となく判る),この1年ほどで編集したのがこの映画だと,監督は言う.3_20260416210101
だからこの映画に出ているのは60代半ばの友部正人だ.ギターを抱えて街を歩き,セントラルパークを散歩し,そこで唄う.ワシントン・スクエア・パークに行き,西岡恭三や高田渡らの骨が埋めてあると云う(本当かしら)大きな木の下で唄う.ニューヨーク・シティ・マラソンに参加し走る.その活動に,唄う唄に,友部のいままでのフォーク歌手としての人生が刻み込まれている.5_20260416210101
友部の年を重ねたその声は,唄は勿論詩を朗読するときも魅力的だ.同じ歳の人間として,その魅力には抗し難い.友部が溶け込んでいるニューヨークの街も素敵だ.映画で聞ける曲は,「遠来」,「6月の雨の夜、チルチルミチルは」,「夜は言葉」,「日本に地震があったのに」,「朝の電話」,「一本道」.4_20260416210101
最後の曲は友部の代表曲だが,阿佐ヶ谷を舞台にしたこのフォークの名曲を自分も忘れることはできない.友部正人と自分の,この40年ほどを考えるよすがとなりうる映画.映像も美しく,音響の質も上々.見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点).

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2026/04/02

独断的映画感想文:海潮音

日記:2026年4月某日
映画「海潮音」を見る.19801
1980年.日本.監督・脚本:橋浦方人.
出演:池部良(宇島理一郎),荻野目慶子(宇島伊代),山口果林(女),泉谷しげる(菊永征夫),浦辺粂子(宇島図世),上月左知子(吉井収子),近藤宏(吉井淳治),野上祐二(五島隆史),烏丸せつこ(吉井さちこ).
荒波の打ち寄せる能登半島の海辺の村.旧家の主:理一郎は,ある朝波打ち際に倒れている若い女を助ける.自宅にあげて介抱するが,回復した女は過去の記憶を失っていた.
理一郎は母:図世,15歳の娘:伊代との3人暮らし,毎日運転手と家政婦の吉井夫妻が,通いでやってくる.女は当面宇島家に逗留することになった.伊代の母は彼女が4歳の時に身体をこわし亡くなった.母の弟で東京から戻ってきた征夫が,伊代の良い話し相手だ.伊代は高校を出たら征夫の様に東京に行ってもう戻ってこないと打ち明けるが,征夫は理一郎も若いころ同じように言ってこの村を出ていったのだと云う.19802
伊代は女に少女らしい心遣いを見せるが,やがて女をめぐって理一郎と征夫は言い争うようになる.ある嵐の夜,理一郎は女と深い仲になった.征夫は独り再び東京に旅立つ.男たちの確執と事態の進展に激しく動揺した伊代は,父の書斎のライフルを持ち出す….
思春期の少女の不安定な心身の動きを,荻野目慶子が躊躇いなく演じ切って存在感あり.ラストシーンで,荒波寄せる突堤を夕陽を浴びて疾走する伊予の姿は,まことに印象的だ.池部良はじめ他の演技陣はやや大人しめ,泉谷しげると烏丸せつこは元気が良かった.19803
★★★☆(★5個が満点).

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2026/03/08

独断的映画感想文:十一人の賊軍

日記:2026年3月某日
映画「十一人の賊軍」を見る.1_20260331185901
2024年.日本.監督:白石和彌.
出演:山田孝之(政),仲野太賀(鷲尾兵士郎),尾上右近(赤丹),鞘師里保(なつ),佐久本宝(ノロ),千原せいじ(引導),岡山天音(おろしや),松浦祐也(三途),一ノ瀬颯(二枚目),小柳亮太(辻斬),本山力(爺っつぁん),野村周平(入江数馬),長井恵里(さだ),木竜麻生(溝口加奈),西田尚美(溝口みね),玉木宏(山縣狂介),阿部サダヲ(溝口内匠).2_20260331190001
1868年戊辰戦争の渦中にいる新発田藩,本心は官軍に寝返りたい.官軍は国境に迫っており,一方新発田藩の出陣を求めて奥羽列藩同盟の軍が城下に入っている.列藩同盟の軍をやり過ごし官軍を迎え入れたいが,そのためには官軍を国境で足止めしなければ,城下がそのまま戦場になり大変なことになる.一計を案じた家老・溝口内匠は,数名の藩士を決死隊とし,その下に死刑囚の囚人たちを「成功したら無罪放免」の約束でつけて,国境の砦に送り込む.奥羽列藩同盟が城下から出ていくまでの間,官軍を足止めするのがその任務だ.3_20260331185901
こういう設定で,官軍に対する非正規部隊の奇想天外な戦いが描かれる.主要な人物以外はその罪状や生い立ちが説明されることはほとんどなく,また画面は暴力的でグロテスク,プロットにもご都合主義やスキが目立つが,俳優たちのエネルギーに満ちた熱演で引き込まれていく.山田孝之,仲野太賀,尾上右近が好演,本山力の殺陣が見事だった.でも155分の長尺はいくらなんでも長すぎる.5_20260331190001
★★★(★5個が満点).
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